<和歌とキャンプ>

<和歌とキャンプ>
小学校5・6年生

1つ、2つ、3つ・・・9つ、10
小学校5・6年は自立の年齢
”つ”が取れる頃

夏休みはロングキャンプ
ほどよい親子の距離間
親子で離れる練習

学校集団から離れ
自然の中で本当の自分を振り返るチャンス

学校では人と競争
キャンプでは自分に挑戦
机上の知識を体験学習する場

キャンプ場は家庭での生活習慣の総ざらい
自分のことは自分でする

キャンプ場の一日は
朝日とともに始まり
夕日とともに終わる
作業や仕事が遊びだった

自分のやるべきことをやったら
思いきり遊ぶ
誰だい、宿題と一緒だなんて言ってる子は?

洗濯機もなければ炊飯器もない
掃除機もなく、あったとしても
電気がないから使えない

3時間歩かなければ
自動販売機もない
お金があっても使えない
お金は何の価値もない

何が一番大切で
何が必要で何が必要でないかがよく解かる

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一番大切なものは
火と月明かりと星明り
懐中電灯
そして健康

流した汗の分だけ喜びがあり
踏みしめた足跡の分だけ自信になる

10泊11日徒歩旅行 小5 上級キャンプ
「和歌とリヤカー」

元気と勇気をリュックに詰め
レッツゴー
2本の足でしっかり立って歩くんだ

炎天下、猛暑の中、どしゃぶりの雨の日も、風の日も
歩く、歩く、ただひたすら歩く
行けども、行けども、同じ景色
いつになったら景色が変わるのだろう

目に入るのは前方を歩く子の
リュックと帽子
なぜ歩くのか、足を止め考える暇もない

聞こえてくるあの歌
―――君の行く道は 果てしなく遠い
だのに なぜ 歯を喰いしばり
君は行くのか そんなにしてまで

運搬の手段は、2本の足と1台のリヤカー
寝るときは、テントか寝袋
野宿だった

荷物を山積みにしたリヤカーを
和歌は先頭を切って
全力でグングン引いた

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全身汗だく 拭いても 拭いても
したたり落ちる汗
首に巻いたタオルはぐっしょり
絞れば、ジャー!
暑さで汗がかわけば塩になる
顔がザラザラ
なめればしょっぱい

鉄工夫は
塩をなめなめ鉄を打つ
和歌は顔の塩をなめなめ
リヤカーを引く

オッ! 2本足の見かけぬ馬
すれ違った荷を引く馬車馬が
振り返ったほど
人であることを忘れさせるほど
4本足の馬車馬並みだった

引くほどに加速度は増し
大地をけって突き進む
2本足の競走馬

土ぼこりが舞い上がる
「和歌! 待ってー」に
どうにも止まらない、だった

上り坂はさすがにきつく
苦しければ苦しいほど
満面に笑みすら浮かべ
疲れた仲間を
グイグイと引っ張った

仲間にとっては
心に咲いた
デッカイひまわり

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道中の楽しみは2つ
ひんやりとした沢の水と
休憩地点の川遊び

素手で魚をつかむ
水は光り 魚はすべる
青空を枕にごろりと昼寝
充電は、短時間でOK

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次の地点を目指し
レッツGO!
回復力抜群
「快食、快眠、快便」だった

日を重ねるほどに
疲労をみせる仲間とは
対照的

和歌は
日を重ねるほどに
元気になった

――快食――
食料隊長 江崎和歌
献立は闇ナベ
薄暗がりで何でもかんでも
ぶち込んでグツグツと
しゃもじですくいあげお椀にもれば
何と、でっかいタワシが1つ

――快眠――
どしゃぶりの日は
テントの中の寝袋で
テントは雨がたまって垂れ下がる
下から持ち上げ水はけ作業
それをしないと
雨の重みでテントは崩れる

和歌は3人並んだ真ん中で
垂れ下がったテントのすき間
2cmの空間でスヤスヤと
両脇の仲間は
「アッ! 和歌が窒息する」と
寝るに寝られず
変わりばんこに水はけ作業を!

ア!和歌が消えた
目的地点に到達しないときは
ヘッドランプの灯りを頼りに
一列に並んで
夜間歩行

闇の中を歩くのは
危険と隣り合わせ
林道の脇はがけっぷち
自分の命は自分が守る
闇の中を 物も言わずに
ただただ ひたすらに歩き通す

突然 睡魔におそわれた
山中八甲田山
「ア! 和歌が寝ながら歩いてる」
ヘッドランプは
歩くたびにゆらゆらと揺れ
まるで催眠術

と、今度は
「ア! 和歌が消えた」
突然のことだった

全員で「エ! まさか!」
まるで神隠し

リーダーは号令をかけ点呼
確かにひとり足りない
江崎和歌がいなかった

全員で もと来た道を引き返そうと
「遠くで誰かの声がする…」
「もしかして和歌じゃない?」
耳を澄ませば
紛れもなく和歌の声

接近するほどに鮮明に
「和歌ちゃんはここよー、ここよー」と聞こえてきた
「良かった、生きていた。しかも元気だ」とリーダー

全員 いっせいに駆け出した
「和歌ちゃんはここだよ!」と
今度は足元でハッキリと聞こえてきた

懐中電灯で照らせば
なんと、マンホールの穴
寝ながら歩いたので
マンホールに落ちちゃった

仲間を見上げニッコリ
深さ2m近くの穴だった

運良くリュックから先に落ち
リュックがクッションとなり
その上に落ちた

リーダーは手を貸し
穴から引き上げた
不思議なことに
ケガひとつしていなかった

普通なら
泣くどころか声も出ず

和歌は
きっと迎えに来てくれるはずだと冷静に対処
「和歌ちゃんはここよー」と
大声を出し続けた

勇気と元気をリュックにつめ
今再びレッツGOだった

私はなぜ穴に落ちたか
キャンプに来たから
家で勉強だけをしていれば
穴には落ちなかった
でも、きっともっと深い落とし穴が…

小6 上級ファンタジー
キャンプ

山中たったひとりで
24時間過ごす
力だめしのキャンプ

持ち物は
寝袋、食料、懐中電灯

闇が迫ってくるほどに
大人ですら泣きたくなる

怖くなって
キャンプ場に戻ってくる子
大声で泣き出す子
人知れずそっと涙を流す子…

たいていは
怖くて不気味で
寝ずに朝を迎えるが

和歌は大の字になってぐうぐうと
暗くなるほど元気になって
24時間、丸一日を
思いっきり楽しんだ

昼は木の実を拾ってブローチ作り
ツタを切ってカゴ作り

ごろりと横になり
空を見れば
青空が広がって
山なのに海みたい

夕日に映し出され
浮かび上がるシルエットは影絵
揺れる樹木は歩く人影

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移りゆく空の色
青空は朱に染まり
さあ、幻燈会のはじまりだ

夢のファンタジー
眠くなるまで眺めよう

夕闇が迫ってくるにつれ
目と耳を澄ませば
見えないものが見え
聞こえないものが聞こえてくる

自然の命、心の声に耳を澄まそう
静まり返るほどに
山ほどの命の声が
見え、聞こえてくる

まずは懐中電灯の灯りに誘われ
たくさんの小さな虫が
遊びに来た

枯葉をガサゴソかきわける
けものの足音
タヌキかな? キツネかな? イタチかな?

こうなったら
オバケだって幽霊だって
わたしにとってはお客様

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バサバサと闇夜に羽ばたく鳥の音
寂しくなったらオカリナを吹き
さあ、山の仲間たち
わたしの歌をお聞き!

すると エ! まさか!
続いて虫がいっせいに鳴きだした
コロコロ リーリー
ギー チョンチョン

おまけに山のけものが
ケンケン コンコン
木の葉がワサワサ揺れだして
川が流れ歌いだし

山ほどのけものが
飛び出し、踊りだし
草、花、木が大揺れに揺れだして
さあ合唱祭だ!
山のお祭りだ!

山ウサギがピョンピョン
ア!蛇が立って踊ってる
今度は何が出てくるかな?

和歌は自然と仲良し
何も怖くもないし
寂しくもない

さあ、安心してお眠りなさい――と
こうこうと照らす月と星の心
母さんの子守唄が聞こえてきた

山に抱かれ
ゆったりと
夜空を見上げ

たったひとりで寝る
バラバラと星の降る音を聞きながら

一生のうちのたった一晩で
二周りも三周りも大きくなって
一生の勇気を保障

山あいから朝日が昇りはじめ
ヤッター!と叫ぶと

最後のファンタジー
一粒の朝つゆが
涙のようにキラリと光って落ちた

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するとファンタジーは
一瞬でかき消えた

人に言っても
誰も信じてはくれないだろう
おとぎ話の世界のようなことが
本当にあったんだよ

だからこそ、わたしは
自然の心 生命の歌を歌って
きっといつの日か
わたしの心の中に
あの日の仲間を呼び出そう、思い出そう

そしてみんなにも
見せてあげよう、聞かせてあげよう

シンガーソングライター 江崎和歌

HINTS!

シンガーソングライター江崎和歌を
育てたのは私ではない
自然と動物と時の流れと音楽だった

こんなテストがあったらいいなあ
6年 江崎和歌

何分で木に登れ
深い穴が掘れるか
何kgの荷物をかついで
何m走ることができるか

何分以内に火がおこせて テントが張れ
川でどれだけの魚を素手でつかめるか

山の中で何日くらい
自給自足できるか

これができる人は
一流大学に合格する

和歌とキャンプファイヤー

幼少期から何度キャンプファイヤーを体験したことだろう

火はただひたすら熱く
近よることもままならず

赤い光を放ち
不思議な音を立てて

すべてを焼き焦がし
すべてを灰にしてしまう

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昔話や神話のなかでは
火を味方につける者は
強い力の持ち主

和歌は炎に照らされた分だけ強くなった