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銀ヤンマピアノ教室
初めてピアノを習う
お友達がピアノを習い始めると
私も習いたい!となった
習いたい、「アラ!ソー」
止めたい、「アラ!ソー」
の主義だった
お友達と一緒がいい!と
遠かったが早速見学に
「はじめまして、お和歌ちゃま」
現れたのは、銀ラメセーターに
鎖つきの大きな銀ブチメガネの
おばちゃま先生
「お宅のお和歌ちゃまのおレッスンはお毎週お2回、
お毎日お2時間、お家でおレッスン、でないと困るザマス」
上から下まで品定め
「宅は年お2回お発表会があるんザマス
おドレスでなければイケナイザマス!」
「おレッスンは、おズボンはダメ!
おスカートでなければイケナイザマス
おピアノを弾く前は、お手々を洗って!」
色々に規制がうるさく
ダメダメオンパレード
自由奔放な和歌、どうも場違いな教室へ来たようだ
バカ丁寧な、耳なれない言葉、
これでは英語教室!
帰り道、トンボのメガネは銀色メガネ、と歌いながら
「お和歌ちゃまだって!あの先生、銀ヤンマみたい」
なるほど、そっくりだった
ピアノを習うこと自体には
あれほど乗り気だったのに
「お休みしたい」と
「アラ!ソー」だった
厳しいおレッスン、生徒のわきに仁王立ち
その迫力に、音符はかすんで、弾く手は止まる
すると即座にその手をピシャン!
ひとたび怒ると鬼ヤンマ
泣き出す子も、止めてしまう子も多かった
ところが和歌は
時々休み、ロクロク練習もせずに
「ピアノに行ってきまーす」と平気だった
和歌が良ければそれで良い
いずれ本人が決めること
ピアノの発表会もせまり
お月謝は前払い
その手前
銀ヤンマは練習不足にキリキリ
ある日電話が入った
「お宅のご家庭のお教育方針は?」
「食べて、寝て、遊ぶことです」
「ンマッ!それじゃあ、動物ザマス」
「お宅のお和歌ちゃまは、イケナイ子ザマス
お手手でなく、おアンヨを洗うんザマス
おピアノの発表会のおレッスンは
何もしてないザマス!
怒ったら、私を蹴るように
おアンヨでペダルを蹴ってにらむんザマス!
発表会のおアルバムを見せ
おドレスを!と言ったら
『へえ~、こんなの着るんだ、私イヤ!』
おアルバムをパタリと閉じ
私お家に帰る!って帰ってしまったんザマス
お宅のお和歌ちゃまはワガママザマス
しつけがなってないザマス
きつくしかってやってください」
おピアノの発表会当日
会場○○○スタジオ
○○○子教室 ジュニアピアノコンサート
この日の晴れ舞台のために
趣向を凝らした衣装
ピアノの発表会というよりも
ドレスの発表会
本末転倒、誰が何のためにする発表会?
「ドレスはイヤ!」
和歌の気持ちが解りかけた
和歌はシンプルなデザインの白いドレス
ドレスは白いがちょっと太めの黒雪姫
白雪姫の姫ならば
柩の中で死んだふり
ロクロク暗譜もしないで
寝たまんまマンガを読んでたお姫様
さて、いよいよ和歌の出番!
一体どうする気だろう?
ドタン場に強い和歌のこと
きっと何とかくぐり抜けるだろう
白いおドレスのお姫様は
スソを引きずり堂々の登場
舞台の中央でスソをつまんで持ち上げると
丁寧すぎるほどに深々とおじぎ
この自信とゆとりは一体どこから?
一方、銀ヤンマは不安でいっぱい
楽屋裏を行ったり来たり
和歌は落ち着き払ってピアノに向かうと
さあ、始めます。とばかり、
会場に向けてニッコリ会釈
両手を鍵盤の上に置くと
力強くリズミカルに弾きだした
なんと、弾けるところだけどんどん弾いて
弾けないところはどんどん飛ばし
聞く者にとっては
まるで超特急の窓から見る景色
何が何だか解らないうちに終わった
まるで、でたらめ
銀ヤンマはア然、しばしボー然
上手に飛ばして続けざまに弾いたので
そんなものだと気づかない人も多かった
拍手
最後に先生と並んで深々とおじぎ
その最中、会場の私に気づき
ペロッと舌を出し、ニタッ!
会場の誰からも見えたこの仕草
知らぬは先生ばかり
「なんてかわいいの!」と
場内は笑い声でざわめいた
さらに過酷な運命共同体
レッスン仲間はこの時とばかりに
「和歌ちゃーん!」だった
ふってわいたこのハプニング
銀ヤンマは訳が分からず
晴れ舞台はお和歌ちゃまのおかげで泥だらけ
赤面のいたり
秋の夕日に染まった
羽がボロボロ、宙をクルクル廻る赤トンボ
とまどいうろたえヨロヨロと
挨拶も早々にステージから楽屋へと
ガクガクしながら引き上げた
運動会のハードル競争を思い出す
ハードルを前に
跳び越すと思いきや
サッとくぐり抜け、ゴールイン!
またぐも方法、くぐるも方法
ピアノの発表会もまたしかり
人生の数々のハードルを
きっと上手にくぐり抜けて行ってくれるであろうことを
予感できるできごとだった
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