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エッセイ

山での生活

山での生活 -序章-

幼少期の子供の三原則
ただひたすら食べて、寝て、遊ぶこと

小学校低学年の頃
都会を離れ、自然を舞台に
一度は親子で生活体験をしてみたい
と、そう思っていた折

相模湖の小高い山の斜面に
格好の住まいを見つけた

6、4.5、6畳の3DK
風呂、駐車場、畑つきで
家賃は月三万二千円だった

目前は湖、どこまでも果てしなく続く空
さえぎるものがなく澄み渡った空、
透明な空気、きれいな水・・・

仕事の都合上、夫を都会に残し
母、子3人の単身赴任だった

母、子3人丘に立ち、バンザイと叫んだ
澄み渡った空、透明な空気、きれいな水
欲しかったすべてを手に入れた

が、しかし

まさか、欲しくなかったものまで
手に入れることになろうとは・・・

いじめ

転校先で間もなく
和歌の様子に変化があった

うつむきかげんに「ただいま・・・」と
「何かあるのでは?」と気になり始めた

しかし、自分なりに感情を処理して帰宅
プライドの高い子だったので
あえて「どうしたの?」と
尋ねることはしなかった

目の奥をのぞき込み
キラキラしていれば大丈夫
それがバロメーターだった

ある日、なかなか帰ってこなかった
私は学校へ

誰もいない校庭に
指をくわえしゃがみ込んでいた

私に気づくと
「お母さん、わたし今朝、爪切ったよね!」

見れば肉が見えるほど短く切られた爪
指をくわえている理由(わけ)ダ

「みんなでわたしを押さえて爪を切ったの」

「強かったね」
私を見上げ「ウン」とうなづいた
尋ねることは何もなかった

「きれいねえ・・・」
並んで空を見上げた

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涙が青い空にすっかり吸い込まれるのを見届け
「空がこんなにきれいなのに
人をいじめたりする子がいるんだねぇ」

和歌、この先、つらいことや苦しいことがあるかも知れない
そんな時、今日お母さんと見たあのきれいな空を
思い出してください(その日の一行日記より)
その場の、和歌の気持ちを救うことが先決だった

HINTS!

いじめは問題にすれば問題となり
問題にしなければ問題とならない


共感してあげるだけで楽になる

不登校

翌朝、「もう学校に行かない」と和歌
「まあ、うれしい。じゃあ、お母さんと一緒に遊びましょ!
和歌はなんと良い子でしょう」

おにぎりを持ってセリ摘みに
春の日差しは暖かく
春の田んぼは贅沢三昧
メダカにタニシにタンポポに・・・

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教室で勉強してる場合じゃない

バケツいっぱいのセリ
きれいに洗って、根っこを取って
食べるための作業もまた楽し!

朝から晩まで
おいしく楽しい不登校日だった

2日目もまた
「今日もお母さんと一緒に遊びましょ!」

カラスに餌やり、蟹取り、お花摘み・・・
春の山は遊びに事欠かず

3日目の朝
「和歌、お母さん学校に
今日も休むと連絡したよ!」

熱を測ると
遊び疲れたのだろう
本当に37度あった

「まあ、大変!肺炎になっちゃうわ」
さも、もっともらしく布団を敷き
「さあ、一緒に休みましょ!」

布団の上で並んでゴロ寝
折り紙、お絵かき、本を読んであげたり・・・

その時ちょうど
新聞に大きな見出し
"中学生いじめを苦に自殺"

解りやすく噛んで砕いて読み上げた
3日間の不登校の集大成!

自殺――
和歌にとって大変な出来事だった
しばらくの間、黙って記事を見つめていた

翌朝
「毎日お母さんと遊んであげるわけにはいかないの
私、もう学校に行くね」と
あっけなく登校した

不登校は、困るどころか
私たち親子にとっては
おいしく楽しいことだらけ

休まれて困るのは
先生といじめる子供たち
いじめたくとも本人不在

おまけに先生や親に知れたらどうしよう・・・

和歌はいじめられるほどに
ますます強くなった

いじめにあった時
何やらブツブツつぶやきながら
メチャクチャにピアノを弾きまくった

いじめられるほどに
創作意欲はふるい立つ

歌うこと、弾くこと
すべてストレス発散
何をされても、何をしても
楽しめる和歌だった

自然が奏でるオーケストラをバックに
山びこはアンコール

嵐の晩、バラバラと落ちる栗の音
ひよどりはフルートさながら笛を吹く

丘の斜面を渡る風は
オーボエのなる丘

小さなシンガーソングライター
江崎和歌の弾き語りは
辺りの山々に木霊した


いじめっ子は
その日、その場で音楽葬

鍵盤をたたく腕力
ペダルを踏んづける鍛え上げた足腰
いじめっ子は、もうとっくにネコと一緒に
踏んじゃったぁ~、死んじゃったぁ~、だった

学校という教育現場で
タダで人生勉強
おまけにピアノも上達し
いじめてくれてありがとう、だった

いじめる方は
ますます人相は悪相に?

極めつけは、腕っぷしの強い2歳上の兄
登下校のたびに待ち伏せ
「よくも俺の妹に!」

不登校になりそうなのは
いじめっ子たちだった

先生や親に言いつければ足がつく
いつの間にやらいじめは下火に
これには先生も助かった

HINTS!

いじめはしっかりと受け止めれば
むしろ肥やしになる


モチーフ豊かな生活

得意科目は国語、音楽、図工
無口な和歌は
詩や文章、絵にして表現することが得意だった

生活様式はシンプル
芸術的環境はゴージャス
辺り一面モチーフだらけ

図工の時間

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取りつかれたように描きつづけ
画用紙いっぱい真っ黒
山ほどのオタマジャクシ発見
沼のスケッチだった
こんがらがったひとかたまりの毛糸玉
クモの巣発見
足長蜘蛛の軍団のスケッチだった

画用紙いっぱいブルー
切れ切れの黒いシルエット
上空を目指し飛んでゆく
スピード感あるカラスのスケッチ
「上空をスケッチする子は初めてだ」と先生

国語の時間

たった5行の詩が
地元新聞に掲載される

お父さんとお母さんは
本当は仲良しなんだ
兄弟でもないのに
親子でもないのに
どうして?


和歌は嘘つき?
願望なのか、期待なのか

山に越すことをはじめ
価値観の相違をめぐって
まるで部屋に放し飼いの
2羽のニワトリ

寄れば触れば
ヤンヤと喧嘩

が、しかし
夜になればつがいのニワトリ
1つの布団に仲良く並んで・・・

仲良く見えただけ?

そう感じさせたのは
部屋に流れている音楽だった

流れている曲は
ブラームスの子守歌
喧嘩の時はボリュームアップ

本当は仲が良いやら悪いやら
何が何だか解らない

HINTS!

子育てに音楽を取り入れよう
子供にとっては楽しい一時
喧嘩をしても大丈夫


山での生活 -終章-

「山での生活は2年間だよ」
お父さんとの約束の期間は
またたく間に過ぎた

いじめもあるにはあったが
ようやく解決を見る頃
元の学校に戻ることになった

山の子供たちと
もう2度と会えなくなると思うと
急に悲しくなったのだろうか

木のてっぺんに登り
いつまでも学校のほうを見ていた

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辺りはもうすっかり夕暮れ
それでも下りてこようとはしなかった
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