<ある夏の日の出来事その2>

<ある夏の日の出来事その2>
むなしさだけが、響き渡る。

丁度その頃、

早朝の海いっぱいに響き渡った
海岸線沿いを裸足で走る
女達の黄色い掛け声
「ハイ! ハイ! ハーイ!」。

焼けつく砂浜
照りつける太陽
昼日中、炎天下。

しかも
素足で走り続ける
日焼けしきった
黒の軍団。

ザブン ザザーン
高波にさらわれては
かき消され、
波打ち際に残された
無数の足跡。

「和歌、今ドーコ?」
「和歌は、ここだよ!」
ザブン  ドドドドド ーン!

波打ち際に
くっきりと残された
25 cm 、ひときわ大きな足跡。

探し求めていた足取り。
江崎和歌は、こんな所にいた。

こんな所で、何をしているんだろう?
一体、何故に?

昼日中、
来る日も来る日も
海いっぱいに響き渡った
「ハイ! ハイ! ハーイ!」。

真昼の熱気は、どこへやら・・・・・
一気に静まり返った夜の海。
うって変った乙女達。

砂浜に、
静かにひざまづき、
ゆっくりと重なり合う乙女の影

月明かりに 照らされ、
闇に浮び上る
仏像さながら。

波のリズムに合せるかのように、
高く 低く、
強く 弱く、
波間に優しく揺れる
観音像。

tsuki.gif

日中は体力づくり、
トレーニング。

疲れ切った体。

互いに癒し、癒し合う。
夜は癒しのひと時。

ツボ押しマッサージ。

波をバックコーラスに、
響き渡る命の讃歌

指圧の心 母心
押せば命の 泉わく

乙女のソプラノが響き渡る。
ソプラノの合い間をぬって、
和歌のアルトが・・・・・

うつむき加減に、
和歌はつぶやく。

私はアルト
お金が アルト ないとは大違い
癒しの心 母心
押せば命の  泉 と 金 がわく

ここ押せ ニャンニャン
招き猫

ここ掘れ ワンワン
ツボ探し

探し当て、
押しつづければ、
ゆくゆくは、大判小判が
ザーク ザーク ザックザク

こりをほぐせば
血行も良くなり
金回りも良くなる

どうやら
ツボ押しマッサージ
資格取得の家出だった。

元水泳部、江崎和歌。
猛暑をものともせず、
正に水を得た魚。

走る・泳ぐ・潜る
海辺のデラックスな企画
ビッグ・サマープレゼント。

金のかからない
またとないチャンス!

ここに在っても、またしも
合理的な和歌だった。

― 研修第一期終了 ―

「ただいま―、ネコちゃん。
まあ、お久し振り。」

そっと寄り添うネコを
やにわに抱き上げ
「まあ、この子ったら、こってるワ!」
ぐちゃぐちゃに
もみほぐしては
「はい、次の方。」

「まあ、この子 ネコ背だワ!」
あおむけに、
両手足を引っぱっては、
ギュ―ッ!

次々に抱き上げては、
なでて、
さすって、
押して、
引っぱって、
ぐちゃぐちゃにもみほぐす。

逃げまどうネコ達は
ひとかたまりに
こんがらかった
毛糸玉。

こりがほぐれるどころか、
こりにこった8匹のネコは、
「もう、こりごりだ ニャア~!」

― つづく ―