<どうやら好きな人が出来たらしい>

<どうやら好きな人が出来たらしい>
帰宅もめっきり遅くなり、
抜き足、差し足、忍び足。
丸で泥棒。

突如向学心に燃え、
ぶ厚い辞書と数冊の本。
ずっしりしたバックとギターをかつき、
足取り軽く
体育系出身ミュージシャン。

ダイエットは更に加熱化。
政治問題にも関心を持ち始め、
何を出しても、イラン!イラン!

どうやらお相手は、
知的な方らしい。

浮き足立つとは、まさにこのこと。
見慣れた部屋のはずなのに、
霧の中を徨う少女。
ゴミ箱につまずく、ゴミ
ゴミをけ散らす。

テーブルの角にぶつかる
スリッパの左右が違う
くつ下の左右が違う

あ!定期。
あ!サイフ。
あ!自転車のキー
忘れ物は、いつものこと。

夢想にふけること、しきり。
ウフフフフ・・・・・薄笑い。

けげんそうな犬や猫を相手に
目をつぶり
両手を広げ
「さあ、ここにおいで・・・
何、はずかしがっているの?」

優しくささやく声は、
猫もたじろぐ猫なで声。
その気になって
そっと寄りそい、ヒザの上に。
と、突如
「おまえを呼んでるんじゃない!
邪魔!アッチへ行け!」
とけ散らす。

朝と晩が大違い
ジェットコースターに乗った気分。

そんなある日、
驚いたのなんのって、
アイシャドーでふちどり
いつになくきれいに。
主人「和歌も化粧をすれば・・・」
和歌「今日は忘年会だからネ!」

12時もまわった頃
けたたましいTELのベル。
「和歌さんがぐったりと虫の息」

白雪姫と7人の小人さながら
四隅をかつがれ
柩はやっと自宅にたどり着き
しめやかにベットに。

アイシャドーはとれ、
たっぷりミルクを飲んだ
泥酔したタヌキの赤ちゃん。

なんとまあ、可愛いこと。
久々に、脇に添い寝。
アーヨシヨシ!
トントン!

と、その時だ。
私の顔面めがけ
プワーと吐物が降って来た。

忘年会はバイキング。
食べ放題、飲み放題。
この際だ
食えるだけ食って
飲めるだけ飲んじまえ!

ここに在っても
またとしも合理的。
ダイエットと節約を兼ねた
和歌だった。

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