<エピローグ>
- 2007.08.09
- エッセイ
和歌姫さまの物語り
女の子は、一生に一度は、お姫さまになる
その昔、上落合に、
いとも貴なる姫が生まれた
その名を江崎和歌といい、
世に、またとない
ちょっとはずれた、可愛い姫だった
人は皆、落合小町と言うけれど、
ほんとうのところは、
落合のこまっちゃった・・・
姫はどんな王子さまよりネコが好き
やさしさのあまり
ネコがニャンと鳴くたびに
可哀想にと餌をやりつづけ
日に日にネコはふくらんで
風船ネコとなり、破裂した
姫は
こんな悲しいことは世にあるまいと
母君にとりすがり
泣いてわめいて悲しんだ
やさしい母君は、
この世には、
もっと苦しくつらいことがあるのです
それは、人を好きになる恋心というものです
そなたが飼っていたネコは
やがて、そなたと結ばれるはずの
王子さまだったと
それでも姫は
ネコを飼いつづけ、
そして餌をやりつづけ
あまたの風船ネコは、
色彩どりのシャボン玉、
大空に浮かんでは、消えて行った
やがて、
人を恋する心を抱きはじめ
二十歳成人式を迎えようとした頃
ライブの歌姫として育ちはじめた
母君に、
あまたの気づかいをさせつづけた姫は
ようやっと、母君を安心させようと
そして楽にさせようと、
が、しかし
あまりに突然の姫の成長に、
母君は安心し、ホットしたそのあまり
命まで失いそうになった
眠れる森の姫ならば
好きでもない王子に
プロポーズされれば
寝たふりをし、
本当に好きならば
死んだふりもするお姫さま
シンデレラの姫ならば
王子は大きな靴を抱きかかえ
昨日、ぼくと踊ってくれた
あの足の太い女の子はどこ?
親指姫の姫ならば
花らっきょうのようなお姫さま
殿は会いたさ見たさで皮をむく
姫は
「私って皮いい?」と
一言呟くとあとかたなく消え失せた
「私はなんとむごいことを!」
殿は悲嘆のあまり泣きくらした
タヌキ御殿の姫ならば
姫は出口を入り口と書き替えフタをした
ひとたび入ると出られない
袋小路のタヌキ茶屋
殿が泣いても姫は来ん来ん
虫めづる姫の姫ならば
虫も好かない嫌な姫
トカゲもヤモリもへのカッパ
「殿お手玉しましょ」と
毛虫を丸めて投げつけた
その上、マフラーのプレゼント、
喜び勇んで首に巻くと、
赤い舌をチロチロさせ、
殿の首をしめつけた
人魚姫の姫ならば
岩に腰かけ髪をすく
ジュゴンのようなお姫さま
殿は可愛がり、頭の先からシッポの先までなでまわす
後は野となれ山となれ
かぐや姫の姫ならば
タケノコの中から産まれた
イモ姉ちゃんのようなお姫さま
生まれのいやしい姫君は
座れば手が出る足が出る
笑えば歯が出る
しゃべれば我がでる!
幸せの王子は姫がおどろかないように
そっと手をそえ、
「ほくはあなたを愛してます」
ウンでもスンでもない姫を前に
「あなたはなんと無口な方でしょう」
と、小さく呟いた
「私がしゃべろうがしゃべるまいが私の勝手ジャン
私はあんたとは、口ききたくないだけジャン!」
王子は、一晩にして不幸な王子となった
歌姫は
世界中のどんな姫より
シャイな姫
本当は白雪姫よりやさしく、
乙姫さまのようにやさしい
胸にかかげた玉手箱の中には、
やさしい言葉がいっぱい詰まっていた
その思いは、作詞となって作曲となって、
人生という舞台をしょって、
明るく強く逞しく、
四季、春、夏、秋、冬があるように、
人生の、喜怒哀楽を歌うように生きてゆく
ペリカン便
和歌出生秘話。
ママ私どこから来たの?
ママ私ドーシテ生まれたの?
東京女子医科大学上空を、
赤ちゃんをくわえたコウノ鳥が、
大きくゆるく旋回していた。
それは丁度、排卵誘発剤なるものが
でまわりはじめた頃だった。
和歌「ママ、私どこから来たの?
ドーシテ生まれたの?」
ママ「お空から。」
和歌「ドーシテお空から?」
ママ「東京女子医大の病院のお空を、
コウノ鳥が赤ちゃんをくわえて廻っていたの
その赤ちゃんが、あなただったの・・。」
和歌「お空から赤ちゃん落としたら
赤ちやん死んじゃう…。」
ママ「その赤ちゃんがあんまり重たかったので、
コウノ鳥がつかれて、病院の屋根にとまって
休んでいる所を、パパが、
「ア!あんな所に赤ちゃんがいる!」
とパパが長い長いハシゴをかけて、
赤ちゃんをこわきに抱きかかえて下りて来て、
「ハイ!ママ!赤ちやん!」
とママにペリカンみたいな顔をして渡して
くれたの。それがあなただったの。」
和歌「フーン。」
子育ては、今がチャンス
子育ては、お金があるよりない方が良い。
青い空と緑の木々があれば良い。
子供が求めているのは、明るく楽しく面白いお母さん。
もしそうじゃなかったら、居ない方が良いのかも・・・
幼少期から寡黙児だった和歌、
それまでにため込んだ音を一気に吐き出した。
それがライブ。
シャイな、静かな子が、人前で歌をうたう。
HINTS!
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