<心の医療ミス>

<心の医療ミス>

とかく医療ミスが問題とされている昨今、
技術やメスさばきだけが問題視されがちであるが心の医療ミス、
精神科医におけるミスこそ時に取り返しがつかない見落としてはならない重大なミスが発生する場合もある。
ガン末期患者に在って、医師は家族を看るとは言われるが、
精神科医こそ、家族を看る鋭い洞察力とメスさばきが要求されるのではなかろうか?

一番要求されることは、
患者にとってやさしさを前提に患者を取り囲む家族状況を正確に把握することこそ、
治療していく上で重要ではなかろうか?

家族の心の声に耳を澄ます、聡明な感性を反射させ、患者と向き合う姿勢、患者1人1人の心のカルテ、症例がまた症例を助ける、苦しい作業の積み重ね。
ひとたびこれを怠るもしくは判断を誤ると、思いがけない方向へと発展し、事件すら起こりかねない。
精神科医こそ自己の中により大きな浄化槽のタンクが必要とされるであろう。

あくまでも精神科医の度量が物を言うのではなかろうか?
置き換えれば、精神科医になるまでの自身の体験の巾ともいえよう。
とかく3分診療と言われる昨今、精神科医療に在ってはそれまで培った感性、やさしさを前提に研ぎ澄まされた直感力こそ要求されるであろう。
これを正に体験の巾と言うのだろう。

まちがっても、患者を見透かすはずの医師が瞬時にして患者及び家族に見透かされるような誤診があってはならない。
短時間の診療であっても、慎重にゆとりを持って患者及び家族に臨んでいただきたい。
ゆとりは時間的なものではなく、気持ちのゆとりを言うのであろう。
これを支えるのも体験の巾と言えよう。

通院中の一女性の相談依頼より感じたこと
H14.10.15 江崎喜久枝