思春期 小学校5・6年生
この頃何かが変なんだ
やることなすこと変なんだ
和歌 一体全体ドーシタノ?
我が家はワクワク動物ランド
犬が2匹、猫が10匹
とても優れた動物である夫を先頭に
それに続くは長男・軍太
計12匹
そこに不思議な生物がもう1匹登場
計13匹
人と動物の中間体
人でもなければ動物でもない
その生物は思春期の和歌だった
2匹の犬と10匹の猫は
ニャン 友 ワンダフル
和歌の恋の練習相手
ボーイッシュな和歌
犬を相手に
服従する練習
来い! 伏せ! 待て!
犬に教わることは多かった
大型犬相手に
見つめ合う練習
大きな図体に
落ち窪んだ小さな目
「ねぇ 私を見つめて」
感極まった大型犬
突然のしかかり 押し倒し
ぺロリと顔をなめチュッ!
猫を相手に
共感、可愛くなる練習
「ねぇ 和歌!」に
「まぁ~ にゃ~にぃ~」
一日が動物に始まって動物で終わる
各々が、てんでバラバラ
とにかく騒々しい
そんな雑然とした部屋の片隅に
わずかばかりのきれいな場所を見つけ
不思議な植物が1本咲いていた
それが和歌
探ろうとすれば
脇を通りかかっただけで
パタリとフタを閉じる
食虫植物でもある
いったん閉じたフタは
気が向くまでは閉じきったまま
1日口を開かないこともザラ
口を開けば
「おこづかい下さい!」だった
学校から戻れば個室にたてこもり
個室は避難所、秘密基地
家族が寝静まった頃
リビングに現れ
テーブルの上をガサゴソと
真夜中の生態はヤドカリ
触れないでくれ
1人にしてくれ
でも1人は寂しい
聞こえてくる思春期のつぶやき
殻の中に閉じこもり 引きこもり
HINTS!
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そんな時
ママは心のドアを全開放
「さあ、出てらっしゃい、いいものが
あるわよ!」
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狭い三畳間はゴミだらけ
泥沼に生息するビーバー
歌手になる日を、将来のスターを
夢見るバク
ボーっと1人で考えごと
長電話、メール、お金の無駄使い
人は死ぬのになぜ勉強を?
悩みは尽きない
個室はカウンセリングルーム
一台の電話が何よりのカウンセラー
HINTS!
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電話代の無駄使い
責める前に冷蔵庫でも開けてみよう
案外、無駄使いはどっちかな?
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ダイエット、ダイエット
肥るも痩せるもさじ加減
自由自在のゴム風船
鏡の前に立つこと日に数十回
その度に「鏡よ鏡よ鏡さん
世界中で一番美しい人は誰?
それは江崎の和歌さんです!」と
お経のように唱えること日に数十回
ヘルスメーターに乗ること日に数十回
ヘルスメーターは消耗品
片足を乗せれば
まあ大変と風呂場へ
風呂場は個室
貸し切りサウナ
家族が風呂に入れない
そっとのぞけば
春の生ぬるい田んぼに
目と鼻だけ出して
カエルのように浮かんでる
しんなりするほど写真に見入り
しっとりとした吐息が
湯気の中に立ちこめる
どうやら好きな子がいるらしい
好きな子1人いれば
ルンルン気分で登校
彼の胸めざし
ふくらむ思いの気球船
あいにく欠席
教室の前でしぼんじゃった
出しっぱなしのラブレターは
もらって驚くラブレター
誤字、脱字、金クギ流
これではまるで果たし状
気分の移り変わりは
朝と晩では大違い
グルグル廻るメリーゴーランド
浮き沈みはジェットコースター
ご機嫌よければクッキー作り
花形、星型、動物型
「失敗品は食べてよし」
ダイエット、作って眺めるだけのクッキーを
成功品まで次々に食べるのは兄・軍太
さあ、好きなだけお食べ
そしてどんどん豚におなり
「ねぇちょっとどいて
そこの豚
あんたがいると通れない 」
豚は到って
気立て良く
飼い慣らされた豚だった
毒づく時はドクダミかセンブリの花
静かで辛らつで激しい
それだけにダイナミックな自立を
予期してはいたものの… |