教育・子育て・思春期・反抗期・不登校・いじめ・自閉症などのカウンセリング活動を行っております

Powered by Movable Typ 3.33-ja
RSS/XML RSS/ATOM
ホーム > エッセイ

エッセイ

シンガーソングライター和歌

はじめに

このエッセイは、江崎和歌がシンガーソングライターになる日までの道のりであり、何分にもフィクション等もございます。
まずは、このことを本人江崎和歌に詫び、願わくば読者が励まされ、
シンガーソングライター江崎和歌として
ライブステージに立つその日を見るまで応援して下さいましたら、ありがとうございます。

江崎和歌 母 江崎喜久枝

1.gif
1.jpg
シンガーソングライター江崎和歌


受験生・思春期のお子さまに
お勧めします。


doc.jpg
東峯婦人クリニック誕生第一号
松峯寿美院長先生からのコメント

病院の廊下中に響き渡った
太くハスキーな産声
素朴さと力強さを併せ持った
実力派シンガーソングライター
江崎和歌さんは
当院誕生第一号
独特な産声が
今も耳に残っています


シンガーソングライター 江崎和歌

エピローグ

和歌姫さまの物語り
女の子は、一生に一度は、お姫さまになる

その昔、上落合に、
いとも貴なる姫が生まれた
その名を江崎和歌といい、
世に、またとない
ちょっとはずれた、可愛い姫だった
人は皆、落合小町と言うけれど、
ほんとうのところは、
落合のこまっちゃった・・・
姫はどんな王子さまよりネコが好き
やさしさのあまり
ネコがニャンと鳴くたびに
可哀想にと餌をやりつづけ
日に日にネコはふくらんで
風船ネコとなり、破裂した
姫は
こんな悲しいことは世にあるまいと
母君にとりすがり
泣いてわめいて悲しんだ
やさしい母君は、
この世には、
もっと苦しくつらいことがあるのです
それは、人を好きになる恋心というものです
そなたが飼っていたネコは
やがて、そなたと結ばれるはずの
王子さまだったと
それでも姫は
ネコを飼いつづけ、
そして餌をやりつづけ
あまたの風船ネコは、
色彩どりのシャボン玉、
大空に浮かんでは、消えて行った
やがて、
人を恋する心を抱きはじめ
二十歳成人式を迎えようとした頃
ライブの歌姫として育ちはじめた
母君に、
あまたの気づかいをさせつづけた姫は
ようやっと、母君を安心させようと
そして楽にさせようと、
が、しかし
あまりに突然の姫の成長に、
母君は安心し、ホットしたそのあまり
命まで失いそうになった
眠れる森の姫ならば

好きでもない王子に
プロポーズされれば
寝たふりをし、
本当に好きならば
死んだふりもするお姫さま
シンデレラの姫ならば
王子は大きな靴を抱きかかえ
昨日、ぼくと踊ってくれた
あの足の太い女の子はどこ?
親指姫の姫ならば
花らっきょうのようなお姫さま
殿は会いたさ見たさで皮をむく
姫は
「私って皮いい?」と
一言呟くとあとかたなく消え失せた
「私はなんとむごいことを!」
殿は悲嘆のあまり泣きくらした
タヌキ御殿の姫ならば
姫は出口を入り口と書き替えフタをした
ひとたび入ると出られない
袋小路のタヌキ茶屋
殿が泣いても姫は来ん来ん
虫めづる姫の姫ならば
虫も好かない嫌な姫
トカゲもヤモリもへのカッパ
「殿お手玉しましょ」と
毛虫を丸めて投げつけた
その上、マフラーのプレゼント、
喜び勇んで首に巻くと、
赤い舌をチロチロさせ、
殿の首をしめつけた
人魚姫の姫ならば
岩に腰かけ髪をすく
ジュゴンのようなお姫さま
殿は可愛がり、頭の先からシッポの先までなでまわす
後は野となれ山となれ
かぐや姫の姫ならば
タケノコの中から産まれた
イモ姉ちゃんのようなお姫さま
生まれのいやしい姫君は
座れば手が出る足が出る
笑えば歯が出る
しゃべれば我がでる!
幸せの王子は姫がおどろかないように
そっと手をそえ、
「ほくはあなたを愛してます」
ウンでもスンでもない姫を前に
「あなたはなんと無口な方でしょう」
と、小さく呟いた
「私がしゃべろうがしゃべるまいが私の勝手ジャン
私はあんたとは、口ききたくないだけジャン!」
王子は、一晩にして不幸な王子となった
歌姫は
世界中のどんな姫より
シャイな姫
本当は白雪姫よりやさしく、
乙姫さまのようにやさしい
胸にかかげた玉手箱の中には、
やさしい言葉がいっぱい詰まっていた
その思いは、作詞となって作曲となって、
人生という舞台をしょって、
明るく強く逞しく、
四季、春、夏、秋、冬があるように、
人生の、喜怒哀楽を歌うように生きてゆく


ペリカン便
和歌出生秘話。

ママ私どこから来たの?
ママ私ドーシテ生まれたの?

waka65.gif

東京女子医科大学上空を、
赤ちゃんをくわえたコウノ鳥が、
大きくゆるく旋回していた。
それは丁度、排卵誘発剤なるものが
でまわりはじめた頃だった。
和歌「ママ、私どこから来たの?
ドーシテ生まれたの?」
ママ「お空から。」
和歌「ドーシテお空から?」
ママ「東京女子医大の病院のお空を、
コウノ鳥が赤ちゃんをくわえて廻っていたの
その赤ちゃんが、あなただったの・・。」
和歌「お空から赤ちゃん落としたら
赤ちやん死んじゃう…。」
ママ「その赤ちゃんがあんまり重たかったので、
コウノ鳥がつかれて、病院の屋根にとまって
休んでいる所を、パパが、

「ア!あんな所に赤ちゃんがいる!」

とパパが長い長いハシゴをかけて、
赤ちゃんをこわきに抱きかかえて下りて来て、

「ハイ!ママ!赤ちやん!」

とママにペリカンみたいな顔をして渡して
くれたの。それがあなただったの。」
和歌「フーン。」

子育ては、今がチャンス

子育ては、お金があるよりない方が良い。
青い空と緑の木々があれば良い。
子供が求めているのは、明るく楽しく面白いお母さん。
もしそうじゃなかったら、居ない方が良いのかも・・・

幼少期から寡黙児だった和歌、
それまでにため込んだ音を一気に吐き出した。

それがライブ。

シャイな、静かな子が、人前で歌をうたう。

HINTS!
  • これだから子供って解らない!
  • 人生は短い。
    苦手?
    嫌いな事までやってるヒマがあるだろうか?

胎児期

光る個性 静
和歌 胎児期

音楽好きのママは、家中に有線を放きつめ、
朝から晩まで音楽を聴いていたながら族だった。
これがライブの原点となった。

和歌を育てたのは、私ではない。
時の流れと、自然と動物と、音楽である。

父母の良い所だけを引き出せる聴明な子を
育ててようじゃないか!

HINTS!

ゆとりとは?
ゆとりは、時間的なものではなく、
気持ちのゆとり。

我が子と思わないと楽になります。
我が子ではなく、私のお客様。

乳児期

オギャーは独立宣言
一和歌の呟き-

和歌乳児期、生後一カ月
ママがおでかけ、パパとお留守番の時は
腹が立つことばかり。
自分では何もできないし、しやべれない。
夏のオシッコは、ひんやりして気持ち良い。
でも冬のオシッコは、冷たくて寒い。
おまけに、パパは自分で産んだわけでもないのに、
私の脇を通りかかるたびに可愛い、可愛いと
日になんべんも体をさわっていく。
そして、泣くと膝の上にのせて、ガタガタと揺する。
だから、ママと呼んで泣きたいのに、
うっかり泣けない。

‥私、ストレスだらけ!

でも、ママはいつも私の自尊心を大切にしてくれ、
自立しようとする私の手助けを
いつも心がけてくれた。
いつでも自由に、今すぐにでも動き出せるようにと
冬でもふとんは軽く、
パスタオル一枚くらいで手足もだしてくれた。
そして、退屈しないようにと
部屋にはいつも音楽を流してくれ、
干渉しすぎず、パパみたいに見張ったりしないで
「いい子ね。」と、時々のぞき込んでは、
胸元を軽くポンポンとたたいて、
ママはここにいるよと安心させてくれた。
だから、私には自由が沢山あった。
ゆっくりと、自立の練習をすることができた。

一母の呟き-
長男軍太の時は、ガッパガッパと
オッパイをよく飲んだ。
すぐカラッボになり、
「ちぇっ!もうないのか。」
乳首をペェッと吐き出すとフギャーと泣いた。
女の子とはこんなにも静かなものなのだろうか。
チクチク飲んでは一日中トロトロと寝ている。
不思議なことに動けないはずが、
ふと見ると体の位置が少しずつ移動しはじめた。
ダルマさんが転んだの遊びを思い出す。
恥ずかしくてイヤなのだろうか?
オムツを替えようとすると、
本当は自分のことは自分でするとでも言いたげな
とても迷惑そうな顔をするようになった。
和歌はきっとプライドの強い
シャイな赤ちゃんなのだろう。
今日から、一人前の人間として、女の子として
私ははつきあうよう心がけよう。
プライドが傷つくと困るので、
まずは赤ちゃんと呼ぶのはやめよう。
和歌ちゃんと名前で呼ぼう。
和歌ちゃんは王子さまがお迎えに来るその頃、
和歌さんになる。

-小さなマリリン?-
生後3ヶ月も過ぎた頃、目元もパッチリとした、
はっきりとした顔立ちとなり、抱き上げあやすと、
表情豊かに、うっすらと笑うようになった。

・・・がしかし、目と目が合わず、とまどった。
生まれ持っての軽い斜視だった。

なんともなまめかしい。

このまま成長し、20才、番茶も出ばな、年頃になった時
「私が本当に好きな王子さまは誰でしょうねぇ
・・・ウフフフフ・・・」

せんだんは二葉よりかんばしいならぶ王子の

ハートをマリリンモンローみたいに
いっせいにとまどわせることになるでしょう。

思春期の何かを予知させる斜視だった。


バギーと和歌
1才頃 -乳児期-
-その頃和歌さんになる
バギーから縄抜けはいつものこと。
だからママは長いツナをつけ結んでおいた。

waka61.gif

用を足しもどるとバギーには居らず、
生まれたての子ネコちゃんがヘソの緒をつけたまま、
野原をハイハイしているではないか!
パパも長い長いヒモをつけて夜になれば戻ってくる。
エッチ!
スケッチ!

ワンタッチ!
王子さまにバトンタッチして、
早くママは楽になりたい!

HINTS!
  • 人の子も畑に植えた苗のように
    見ていない間に少しづつ成長していく。
  • がまん強い子を育てたければ親ががまんすれば良い。
  • 直感保育でいこう!
    ア!ミルク!
    ア!オシッコ!
    ア!ネンネ!
  • 泣き声でパニック。そんな時は外に出て青い空でもながめよう。
  • 愛を温度で伝えよう。
    たっぷり抱っことオンブでしかない。
  • 一日が、だいたい良ければ、それでいい。


赤ちゃんと環境
衣:着せるは易し、はぐは難し
食:しつけも味覚も酸味から
住:ストーブは置いてあるだけで暖かい
クーラーは置いてあるだけで涼しい
屋:冬の日ざしはほど良い暖房
外:木陰の下を流れる風は天然のクーラー


和歌発語
発語の頃が面白かった。

小さな詩人だった。
ながら族のママ、有線が大活躍。
一日中朝から晩まで有線は犬やネコと一緒に子守りまでした。
家という箱は、ジュークボックス。
二匹の犬も、八匹のネコも、音楽を聴きながら育った。

waka62.gif

たっぷりと情操教育を施された犬やネコ達は、
とてもおだやかで、自由気ままネコ派の和歌に
とってお友達でもあり、仲間であった。

ハイハイをする頃は、犬やネコと目線が同一。
どちらが動物?まるで区別がつかなかった。

とてもお行儀が良い、
二匹の犬は、待て!お座り!フセ!と
いろんな作法を和歌に教え込んだ。

幼児期以前の良い指導者だった。

流れる曲は、時には英会話になったり、フランス語にもなった。
レッスン・ワンと聞こえる度に、大きく伸びをし、
大きく二言、ワンワン!と叫んだ。

とても無口な子ではあったが、一言の呟きは、キラッと光る星。

ママの発想のヒントとなった。

ある時、ギョッ!としたことがあった。
バス停まで毎日毎日パパのお迎え。

バス停の前でバスが来る方向に抱き上げ、

「ほら・・・もうすぐパパ来るよ。ホラ、ホラ、パパ来るよ~。」
とくりかえす日々。
その日、その時だった。ハッキリとした口調で、

「クルクルパー」と言った。

クルクルパーは向こうから、大またぎでやって来て、なんにも疑うことなく、
「タダイマ、和歌ちゃん!」

waka63.gif

大きく抱き上げ、チュッチュクチュのチュ!

和歌は喜びケタケタと、私にはいつもの少し違った調子で、
まるであざわらうかのようにひときわカン高い声で、ケタケタと笑って聞こえた。

発語も、ママの模倣の時期だった。

ポッポ、ニャンニャン、ワンワン。
ネコをワンワン、犬をニャンニャンと教えてみたりした。

飼いネコも、白ネコを黒ちゃんと呼び、
黒ネコを白ちゃんと呼び、犬にネコという名前をつけ、
ネコに犬という名前をつけたりした。

主人は、こんがらかるからよしなさい!
思春期になってハチャメチャな子になる・・・と。

好きなら好きと云えない子。

好きなら嫌いと言い、嫌いなら好きと・・・

反語でしか表現できない子になるかしら?
全てがでたらめなママだった。

HINTS!
  • 乳児期
    ゆったりと語りかけ、
    チュッチュクチュのチュ!
    スキンシップをいっぱいしよう。

和歌と公園
-生後6ヶ月~1歳6ヶ月-

砂遊び→泥遊び→水遊び

お天気の良い日は、ほとんど公園
着くとすぐパンツ1枚、裸足と裸
ベンチにつないだ犬の方がよほどお行儀良し
ハイハイで公園中どこにでも這い回る
放し飼いの犬のようだった

ママが気を付けて見ているのは
「砂を食べたりしないか?」
それだけ
あとは知らんぷり・・・

  水たまりを発見すると、ハイハイで突進!

  片手で、ピシャン
はね返る水しぶき

泥水って、なんてキレイなんだろう

  両手で、ピシャンピシャン
面白いったらない
顔中泥だらけ

waka64.gif

はね返る泥水に、辺りのママは迷惑そう

  ママは、私を小脇にかかえ
水遊びできるキレイな場所に移し変えてくれる

そこは、赤ちゃんたちでいっぱい

   -水車・水風船・おままごと-

  みんな自分のお気に入りのオモチャを持ち込んで遊んでいる
でも、なぜか人のオモチャが素敵に見える
どうしても欲しくなる

  日頃、鍛え上げた腕っぷしを試すいいチャンス
・・・取りあげることに意味がある

オモチャのぴっぱりっこ
ケンカ発生

ハイハイで鍛えた腕力は強かった・・・
赤ちゃんの世界では先に泣いた方が負け!

オモチャを取られ、ママに加勢を求めて泣き出す子
その子のママは三白眼

メェッ!
これは和歌ちゃんのじゃないの!
ここにちゃんと、お名前が書いてあるでしょ!

  ・・・だって、私まだ字が読めないんだもん・・・

夏のひんやりした水遊びは最高だった
公園の水遊びで一日が始まり
寝る前のお風呂で一日が終わった

HINTS!

公園 
親はもちろん、
赤ちゃんにとっても情報交換の場

そしてなにより、我が子のことを知ることができる場

たくさんの赤ちゃんと遊ばせたとき
公園は親子の関係がよく見える場となる

日帰り旅行

『和歌のひとり言』
日帰り旅行 -山-


ママは赤ちゃんだからとか、まだ小さいからとか、
そんなことは全然関係なく、山でも川でも海へでも、
どこにでも連れてってくれた。

私はまだ自分で歩くこともできないし、
同じ場所にいることしかできない。
でも、なんでも大人と一緒に楽しむことができた。

私をバギーに乗せると、朝一番の電車の切符を買って、
できるだけ遠くへ連れてってくれた。

電車の窓から見える景色を見ているだけで退屈しなかった。
はじめ、ビルや町がすごいスピードで流れていく。

そのうちに、だんだん緑が多くなり、
目の前の景色が広がっていき、
ゆっくりと田んぼや川が見えてくる。一時間もすると、もう山につく。

山につくと、すぐ木の枝と枝の間に、
ベビージャンパーを吊るしてくれ、
そのヒモに私の身体を結びつけてくれた。

東京とあたりの景色が違うだけで、
ゆらゆらゆれる公園のブランコと同じだった。

手には、固めのおやつを持たせてくれ、
それをなめたり、食べたりしながら、
私は私で、あたりの景色を見たりしながら遊んでいた。

風に運ばれながら、どんどんいろんな形に変わっっていく雲、
青い空は、青い海。

waka58.gif

母鯨の腹の下を、たのしげにたわるれながら、
青海原をゆったりと泳いでいく子鯨雲は、まるでママと私みたい。

風に吹かれ、シャボン玉のように飛ぶタンポポの綿毛。

いろんな色のとてもきれいな鳥が、
すき通ったきれいな声を出しながら、
木の枝から枝へ音楽が流れているみたいに飛んでいく。

ブランコから下りて、さわったり、つかまえたりしたくなる。
早く、大きくなりたいなあ~。

なんて思っていたら、ちょうどママが戻ってきた。

ママはオヤツがなくなりかける頃、戻って来ては、
ママ 「ホラ、今度はこれ食べてごらん。」
と、また別のオヤツを手に持たせてくれると、
私を地面に下ろして、オムツを替えると、
すぐまたいなくなる。

私  「ママ、もう少し、ここにいて!」
と言いたいんだけど、

ママ 「もう少し待っててネ!いい子ネ。」
というと、大きなビニール袋を持って、サッといなくなってしまう。

ブランコの下を見たこともない長い長いものが
スーッと静かに通りすぎていく。
私が後ろ向きに振り返ると、

なんだか見かけたことがない子だな、と向こうも振り返る。
頭の先が丸くとんがって、そこから先は長い長いシッポ。

どこからどこまでがシッポなのだろうか。
考えているだけでヘビさんのように時間がスーッと過ぎてゆく。

どうやら青大将というものらしい。

waka59.gif

何となく、薄気味が悪く、恐くなって、
「ママはどこかな?」探してみたりした。

遠くの木陰から木陰へ、動く人影、
ママはママで、セリ摘みをしたり、ワラビやウド、ゼンマイ、
山菜を摘んだりして遊んでいた。

袋がいっぱいになると、時々もどって来ては、
めずらしものを見せてくれた。

「和歌ちゃん、ホラ、見てごらん。」
と、握っていた手のヒラをパッと広げると、

青い小さな生き物が、ママの手のヒラから田んぼに、
「ピョン!」

どうやらこれが、青ガエルというものらしい。

HINTS!

あなたはあなた、私は私で、
赤ちゃんのうちから工夫次第で
大人も赤ちゃんも一緒に楽しむことが
できるでしょう。


『和歌のひとり言』
日帰り旅行 -海-


海へ行く時は、朝早くか夕方涼しくなってから。
本物の花火を見たときは、暗闇でドカーン。

唯々恐いだけで泣いていた。

何もきれいだとは思わなかった。

波打ち際から、初めて見る海は感激した。

ザブーン、ドドーン、

よせては返す大波小波、音も形も、まるで白い花火のようだった。

ママは、波打ち際に深い穴を掘って、
天然のプールを作ってくれた。

公園のお砂と違って、なめるとザラザラとして、
しょっぱい砂と、しょっぱい水ははじめてだった。

waka60.gif

深い穴の中の砂を波がさらって、深くなったり、浅くなったり。
砂の穴から、カニが出たり入ったり。

小さな穴から小さなカニ、大きな穴から大きなカニ。

カニさんのパパとママ、
小さな赤ちゃんのカニさんは、まるで私みたい。

ママは、バケツの中にカニを次々につかまえては、ためていった。
それをプールの中に全部放すと、ハサミでコチョコチョ、
足の裏がくすぐったかった。

魚もつかまえてはプールに入れてくれた。
お腹がすくと、オニギリを食べたり、スイカを食べたり。
どんなにお行儀が悪くても、大丈夫だった。

よせては返す波が、サラサラと片づけてくれた。

お腹がいっぱいになって、
水平線のカモメもブイに止まって、休む頃、
ママは、水平線のずっと向こう、
真っ赤な夕日が、海の底に沈んでいくのをいつまでも見つめていた。

ずっと海の底深く沈んで、海の底が赤くなりはじめた頃、

ママは、
「和歌ちゃん、きれいだったでしょう。もう帰ろう。」
-と。

HINTS!

夏の日ざしは、赤ちゃんの肌には強すぎる。
早朝か夕方がよい。
飲むための真水と、洗うための真水と、
日影を用意すれば、
あとは何をしても大丈夫。

Age2

生後6ヶ月~小学校低学年「軽井沢」
和歌生後6ヶ月、バギーに乗れる頃~小学校低学年

長男軍太二才の手をひき、和歌を連れ立って、
自分の意志でキャンプに行き出す小学校低学年頃まで、
夏は避暑地軽井沢で母子三人で一夏を過ごした。

軽井沢と言えば、別荘地帯を代表
-がしかし、この母子の生活様式は、
別荘地に住みつくホームレスさながら、
身なりをはじめ、生活スタイル全般シンプル。

一時が万事やることなすこと変わっていた。

それを象徴するかのように、
別荘の入口には、母親の手書きの一枚の貼り紙。

そこに、大きく書いてあったのは、

働かざるもの食うべからず

だった。

軽井沢の自然の中の不自然な生活、
母親は二人の子どもに、これでもかこれでもかと、
不便な生活を強いるのだった。

あたりの住民の目は、上流階層一帯の
風紀を乱す、この家族に、いっせいに注がれた。

この家族の一挙一動を
窓からつぶさに追っていたのは、
隣家の色白のボッチャマ君。

そのものめずらしさに、一日中窓ワクから動こうとはせず、不健康そのもの。
避暑に来たことすら、忘れるほどだった。


まずは、ボロボロのバギー、穴のあいた帽子、
母親のセンス?か、
穴には道端に咲く花が二本差し込んであった。

waka52.gif

一日のほとんどを、上半身裸と裸足で過ごし、
町へお出かけ?

たまさか、ワンピース姿だった時、
「まあ、フリルのついた花柄のワンピースを着た、可愛いボクちゃん。」
誰もが女の子とは思わなかった。

バギーを押すのは、
やはり、裸足と裸の二才年上の男の子だった。

見さかえなく、右や左にとカジをとり、
石ころだらけの坂道でパッと手を放す。


バギーは猛スピードで、ガタンゴトンと走り出す。
女の子は怖がるどころか、
ヒャーヒャーと奇声を発し、
兄は怖がらせることを、妹は怖がることを喜んだ。


ある時、大きな石にぶつかって、バギーはまるごとひっくり返し。
女の子は、泣くどころか、
逆さまになったまま、起こしてもらうのを待っていた。

-が母親は、わたしはわたし、子どもは子ども、
我感知せず、
生死の有無は、声さえ聞こえていれば、生きている!
だった。

こうした具合だったので、
この家族の光景には驚かされることばかり、
白い別荘が立ち並ぶ静かな別荘地帯を騒然とさせ、
あたりの住民は気が休まることがなかった。

ある時、隣家のボッチャマ君の母親が、
青い顔をして飛び込んで来た。

「おたくのボッチャンが、サオの先にヘビがクルクルと巻きついた
タケザオをかついで、走り廻っている。

宅の息子が怖がって、一歩も外へ出られなくなった。」-と。

また、ある時は、
「お宅のネコが、家に入り込んで、
お膳の上の魚をくわえて盗んだ!」と。

waka53.gif

また、ある時、
「よほどお腹がすいているんでしょう、
お宅のイヌがうちの畑のなすをくわえてもっていった。」

イヌが畑を掘っただけのこと。
と、ここまでは、
あら、そうですか、すみませんでした、-だったが、

畑に台所の生ゴミを肥料として埋め込んだためだったのだろう。
「お宅のハエが、うちに飛んでくる。」と。

これは、さすがに言い返した。
「うちのハエだという証拠がどこにあります?」
ハエに言い聞かせる訳には、いかなかった。

要するに、価値観の相違だった。
きれいか?きたないか?白か?黒か?

色白のボッチャマ君をはじめ、
隣家が白なら、あちらにとっては、
こちらは裸足と裸、盗った、盗んだ、逃げた犯人同様、
全て、黒だったのだろう。

モグラも出没する山の中、
たまさか、地面から顔を出せば、
それをのぞき込む、鼻グロイタチ同然、
二匹ならず二人の男の子と女の子に、
モグラもビックリ、元来た穴を引き返したとさー。

それほどに色の黒い男の子と女の子、
追いかけまわす白黒ブチの二匹のネコ、
その後を追い、ワンワン吠えたて走り廻るカラスのように黒い犬!

全てが黒を基調とした軍団、
この家族の結束は強く、団結は固かった。
それを物語るのが、早朝のラジオ体操。

戦後、貧しかった時代、
ラジオを囲んで町内会の朝の集い、
ラジオの曲に合わせ心一つに、ラジオ体操。

貧しい時代の一日の元気を約束。

その時の光景そのまんま、
トランジスタラジオを囲んで、母親の号令一下、
曲に合わせ、ラジオ体操がはじまる。

「ハイ、両手を上げて大きく深呼吸、
きれいな空気と、汚い空気を入れ替えよう。

ハイ、思いっきり東京の空気を吐き出して、
軽井沢のきれいな空気を胸いっぱい吸い込もう。」-と。

体操の合間合間に聞こえてくるかけ声と曲は、
まだしんと静まり返った早朝の別荘地帯にひびき渡り、
まだまだ眠い宵っぱり族に、いやおうなしに朝が来た。

軽井沢の空気で満腹になると、
朝食はいたってシンプル。

waka54.gif

一つの皿の中には、朝、盗れたてのキュウリやトマト、
さらにはパンがあるだけ。

母親は、一言「さあ、お食べ。」
言うが早いか、子ども達は一気に丸かじり。
その速さたるや、自動草刈り機のようだった。

犬の残飯のオジヤの方が、
まだ丁寧でもあり、うまそうだった。

この家族が夏訪れるたびに、子どもの年令も上昇、
それにつれ、行動範囲も広がり、
辺りの住民の好奇心も、
一夏ごとに高まっていくのだった。

それもそのはず、やる事成す事変わっていた。

朝食をすますと、各々の家族は、
思い思いに別荘を後に、
白いテニスシューズをはいて、町のテニスコートへと、
もしくは、遊び着に着かえて、町へショッピング。

-がしかし、この母子は、長グツをはいて、
とんぼ網をかついで、バケツを持って、
田んぼや、川の方へと下りていく。

そして、夕暮れともなると、
食べられる野草や、魚やら、バケツいっぱいにして、
もどってくるのだった。

挙句に、手も顔も足も、ドロドロの泥だらけ。

夕食の天プラの材料だった。

辺りが暗くなりはじめ、
趣向をこらしたシャンデリアが競い合うようにキラメキはじめる頃、
各々の家族の姿は別荘の中へと消え、
そして、静かな夜を迎える-が、
この家族の動きは、反対だった。

暗くなりはじめると、別荘からゴソゴソと外にはい出して、まだ手元が明るいうちにと、
空き地にテントを張りはじめ、
コンロを持ち出し、焚き火をしたり、
あわただしげに夕食の準備にとりかかるのだった。

各々役割分担があり、
枯木を拾うのが、女の子の仕事だった。

殆どの家族は食料を求め、町まで車で移動、
-が、この家族は、自給自足。

防空壕がないだけで、
戦時中の疎開先の風景を見るようだった。

畑をフル回転させ、足りない物があると、
辺りがすっかり暗くなって人の動く気配が見えなくなったのを見届けると
母親の、「取ってらっしゃい!」の一言で、
ゴソゴソと人の畑の中にもぐり込み、
手さぐりでジャガイモを掘りおこし、
胸いっぱいに抱きかかえ、「ハイ、お母さん。」と差し出す。

この仕事は男の子の仕事、

まさに、畑に出没する鼻グロイタチそのものだった。

自然がありながら、自然を活用しきれず、
地元民は、車でスーパーに野菜を買い出しに行くという。

植えるには植えるが、くされ放題、
野菜が野菜の肥料になって終わった。

それだけに、とがめる人はだれもなく、むしろ「助かる」だった。

焚火を囲んで、家族団らんの一時、
食後、母親は一つのジャガイモをめぐって、道徳教育。

まずは、
1 いかに私達が良いことをしたのか、に
はじまって、
2 物を大切にすることとは?
3 命の大切さを母子で学ぶ学習の場。

教科書は、一つのジャガイモだった。

挙句はナゾナゾ遊び。


「スーパーから、トマトをとることを
万引きというが、畑からとることを何という?」

子ども達「ドロボーだ!」


「そんな人聞きの悪いこと言うもんじゃありません。
それは、間引き、っていうの。」

その日のメニューはカレーだった。

川で魚がとれた日や、野草を摘んだ日は天プラに。

これは、豪華な食事だった。

都会から持参したのは、米、油、調味料、
カレー粉とインスタントラーメンと小麦粉くらいだった。

たまに買い出しに行く時は、
パンと、ドッグフードとキャットフード。

焚火を囲んで、犬もネコも、皆、並んで一緒に食べた。

犬、ネコのドッグフード、キャットフードの方が、
むしろ、よほどおいしそう、

くいしんぼうの男の子は、うらやましそうだった。

食事が終了すると後片づけ、
それがまた、楽しみな作業だった。

二人の子どもは、懐中電灯を手に、
バケツの中に食器を入れて、
川まで下りて、洗いに行く。

それが済むとバケツを持って、
川の水を汲みに行ったり来たり、
その水は、最後の火の後始末と、
明日の朝食の準備のための水だった。

隣家のボッチャマ君の目には、
チルドレン刑務所か、チビッコ消防隊の訓練風景のようなその光景は、
どう映って見えただろう?

目前には別荘、
中には水道もあれば、リビングもあり、キッチンもあり、
明るすぎるほどの明かりがある。

二人の子どもは、何一つとして疑問を持たない。

いったい何ゆえに!

そのことが、疑問だった。

夜になると、虫が入らないようにと、
窓という窓を閉め切って、
隣家のボッチャマ宅は、
冷たい光を放つシャンデリアの下で、家族の団らん。

閉め切ったアルミサッシの換気扇からは、
ケチャップとバターのにおい。

背景が違うだけで、
流れてくる空気は、都会のまんまだった。

さて、一日で一番楽しみな時間、
三角テントは、狭いながらも楽しい我が家。

フトンを敷きつめ、テントの入口を全解放。

テントの中央に吊るしたランプの明かりにひかれ、
飛び込んでくるいろんな虫を待ち受ける。

軽井沢も、夏休みも終わりに近づくと、
都会よりワンシーズン早く初秋。
テントの外では、虫の音も聞こえはじめ、
虫のオーケストラをバックに、
さあ、どんな虫が飛び込んでくるかな?

waka55.gif

バタバタ、大きな羽音、
「今晩は!」
20センチ近くの殿さまバッタは醍醐味があった。

遊びを発見すると、
二人で相談、即二人で行動、必ず実行した。

ある時、庭先に穴を掘りはじめ、
時折手を休めては、何やらヒソヒソささやいては、

手をたたいて笑っている。

「オヤ、何だろう、宅のボッチャンの落とし穴?」
隣家のボッチャマ君の母親はいぶかし気。

カーテン越しに行ったり来たり。
作業は、夕方近くまでかかって、
出来上がったのは、四角い大きな穴、
“プール”だった。

ビニールを敷きつめ、家から長いホースで水をひき、
泥水の混じったプールのできあがり。

丸裸になって、首までつかり、満足そうだった。

母親のさし入れたスイカとオニギリ、
労働した後の食事は、うまかった。

母の訓戒通り、
働かざるもの食うべからずだった。

この光景もまた、隣家のボッチャマ君の目には、
どう映って見えたのだろう?

この翌日、ボッチャマ君は、
浮き輪と水着を入れたカバンを持って、

母親の運転する白い車で得意気に、
軽井沢のホテルのプールへとシッポをふりふり。

-にもかかわらず夕暮れ近く、泣き泣き青白い顔をしてもどって来た。

自然が大好き!キャンプが大好き!家族、
-と、ここまでは良かった-が

今度は、母親の、それに輪をかけたとっぴな提案!
「フロ場をつくろう。」と。

waka57.gif

レンガを組んで、その上にドラム缶をのせ、
水を張って、下からマキをくべて、火を焚いた。

頭上は満天の星空、
自家製露天風呂だった。
この光景は、ボッチャマ君の目には、どのように?

暗闇で赤くメラメラと燃える炎、
炎に赤く照らし出された母親の顔は、
次々にマキをくべる、地獄の門番。

出たり入ったり、はしゃぎ廻り、
キャーキャーとひびき渡る奇声は、
キーキーと泣き騒ぐ悲鳴、
ここでボッチャマ君の目は釘づけとなった。

『釜ゆでの刑』

こんな恐ろしい光景見たことない!!だった。

フロ上がりの後の楽しみは、
一夏いっぱい続く、軽井沢の一大イベント、

あちらこちらの別荘で、競い合うようにあげる、
打ちあげ花火。

家族そろって、タダ見の見物。
その日の、子ども達への母の訓戒は、
オサツに火をつけて燃やすのと同じことだと。

母親が、この生活を持続することが出来たのには、
一つのヒミツがあった。

一度寝た子は、二度と起きなかった。
二人の子どもが寝静まったのを見届けると、
テントからこっそりと抜け出し、
別荘の中へと入って、
音楽を聴きながら、
冷蔵庫の中のウニやイクラ、お刺身を解凍、

冷蔵庫の中のビールやワインを取り出し、
犬とネコを相手に晩酌。

一日の内ではじめて、ゆったりとした私の時間だった。

いつ気づくかな?と思いながら・・・
ある年の夏、男の子が、
畑のゴミの中に、
エビやカニのカラがあることを不審に思いはじめ、
妹に耳うちした、

「もしかして、俺等が寝てから食っている。」
気づきはじめた頃、軽井沢を卒業。
本物のキャンプに行きだした。

夏休みいっぱいこの家族は、
働かざるもの食うべからずをモットーに

食べる、寝る、遊ぶ。

二人の子どもは、
良く働き、良く食べ、良く寝た。

母親は、
待つ、見守る、邪魔をしない。

どこまでも互いの三つのリズムを守り通し、
一夏、静かな別荘地帯をかき回し、
夏休みも終わる頃、父親が車でお出迎え。

「皆、ボクをじろじろ見るけど、どうしてだろう?」
これがホントの『父親の顔が見てみたい!』だった。

HINTS!
夏休みの宿題は遊ぶこと!

おしゃぶりをくわえた赤ちゃん
-和歌2歳のころ-


オッパイみたいで安心できるからよ・・・

おしゃぶりをくわえた赤ちゃんを発見
手を振りほどいてすっ飛んで行く
赤ちゃんの口から、おしゃぶりを素早く抜きとる
と、また素早くはめ込む
この繰り返し・・・

赤ちゃんはビックリ
まん丸い目はパチクリ
おしゃぶりを探して、金魚みたいにお口はパクパク

それが面白いったらない
どうにも止まらない

おしゃぶりをくわえた赤ちゃんのそばに駆け寄る和歌
私はやっとの思いで追いついて
抜きとろうとするその寸前
「イケマセン」と手をピシャン
赤ちゃんは驚いて、ウェンウェンと泣き出した

母親の冷たい視線
私はただただ謝るばかり
そんな私を知ってか知らぬか
逆なでするかのように
怒りに震える母親の廻りを
腰に手を当てがい
チンチンゴーゴー、チンチンゴーゴーと
目まぐるしく
ぐるぐると走り廻った

『はじめてのお風呂屋さん』
ママとはじめて お風呂屋さん


おどろくかな?
喜ぶかな?

大人も子供も裸になると
湯気の中へと消えてゆく

クモリガラスの湯気の向こうに何がある?
浴場をのぞき込んでみたけど
霧がかって何にも見えない

ちょっと、とまどったものの、
衣服を脱ぎ捨て浴場へと一目散

鏡に映る、裸の行列
押せば水
押せばお湯
ひねればシャワー
ボコボコ泡を吹くプール

どれから先に遊ぼうか
湯舟に入ると
さっそく クルクル 立ち泳ぎ
和歌ちゃんラッコは
「このプール、アッタカーイ」だった

パパとはじめて お風呂屋さん

「そうか、和歌はそんなに喜んだか」
「よし、今度はパパと行こう!」
はじめて見る男風呂、
辺りをジロジロと見渡し
一点を凝視
何を言い出すかと
パパは、ハラハラ ドキドキ
それもそのはず、
和歌とママは女同士だった。

その上、
パパはホロ酔い加減。
足元を見ては、
ここぞとばかり
遊びだし

そのあげく
辺り一面ひびき渡る
カン高い声

「ねえパパ、あのお花のもようのスタンプきれい!」
-でギクッ!

「パパ、どうして洗っても落ちないの?」
-でガクッ。

それははじめて見るボタンの入れ墨

あまりの邪気のなさに、
遠い日の夕ヤケ小ヤケが重なったのだろうか。
おじさんは目を細め、
「嬢ちゃん、
さいなら、良い子でねぇ-
もう帰ろう…帰ろう…」と

頭をなでなで去ってゆく
その後ろ姿は、
湯舟のように 深く温かい情が、
湯舟から、あふれ流れ出る湯のように
風呂場いっぱい隅から隅まで、
情が伝わってくるようだった。

が、パパは、温まるどころか洗うのも止めにして、
早々にひきあげ、
「もう、和歌とは二度とイカナイ!」だった。

HINTS!

人に可愛がられる子を育てよう
可愛いから、可愛がる
可愛がるから、可愛くなる

Age3

『昔話』 3才
鶴の恩返し


私 「ツルは羽を抜いて、
寝ないで何を織ったんだろうか?」
和歌「ペンギンさんのセーター?」
私 「大きな大きな、ゾウさんのパンツ。
夏はお鼻のホースで水浴び。
でも、冬は寒いでしょう?」
和歌「ゾウさん、大きいから、ツルさん、大変だったね」

桃太郎

私 「昔あるところに、
おじいさんとおばあさんがおりました。
おじいさんは川に洗濯に、
おばあさんは山に芝刈りに-」
和歌「幼稚園と反対ダ!」
私 「洗濯したいおじいさんがいて、
芝刈りしたいおばあさんがいてもいいでしょう?」
和歌「そうだネ!」

HINTS!
男の子、女の子と区別は止そう。

オオカミと七匹の子ヤギ

私 「オオカミさんのお腹を切ると、七匹の子ヤギが…」
和歌「切ったら痛いでしょう。
どうして目が覚めないの?
子ヤギはどうして死んでないの?」
私 「ぬいぐるみだったかも…」
和歌「オオカミさん、可哀想…」
私 「許してあげることも大切よネ」

HINTS!
善悪説でなく感覚的に、
楽しくやりとりしてみては?

花咲かじいさん

私 「ポチがここ掘れワンワン。
掘ると何が出てきたと思う?」
和歌「小判」
私 「骨がでてきたの」
和歌「どうして?」
私 「犬だから」
和歌「小判より骨が好きだよネ!」
HINTS!
母子で、各々の価値観を
めぐって話し合ってみよう。

ベッド・タイム・ストーリー
一日の終わり


寝る前のお楽しみは
ベッド・タイム・ストーリー
風呂上り 柔らかいフトンの上に
みんな並んで寝ころんで
ネコも聞き入る ベッド・タイム・ストーリー

はじまりは いつも
ねえママ、可愛いお話して!

昔あるところに
可愛いキューピーちゃんが いたの

夜 みんなが寝ると
オモチャ箱から ムックリと起き上がり
廊下を ドスンドスンと歩くの

キューピーちゃんが
ドーン
ドーン
ドーン

あんまり ドンドン歩くので
お首が コロッと落ちたの
お首は ボールみたいに
コロコロ 転がって
すると廊下に
ポタ ポタ ポタと…

可愛いどころか 怖い話
ふるえあがって ママの首にしがみつく
それこそとっても可愛い キューピーちゃん
しがみつきたいだけ?

怖がるくせに 何度もせがむ
そのたびに 眠くなるまで
50回も 100回も 抱きしめた

その上ママは 替え歌の名人
ゾウさん ゾウさん
お鼻の下が長いのね
だから母さんは 気が短い
HINTS!

寝る前の時間を楽しく
その日怒ったこともチャラになる


ママなぜ?
ドーシテ?これなあに?
3才ともなると 思い出すのはバンビの物語。


「お母さん、これなあに?」
「それは蝶々 それはタンポポ」

バンビの疑問に丁寧に対応していた。
私もまた 和歌とのやりとりが
一日中、楽しくてならなかった。

お月様と和歌
「ほら!見てごらん、お月様よ!」

歌うようにスキップ
「私が歩くと、お月様も歩く」

足を止め
「私が止まると、お月様も止まる」

ねえママ、ドーシテ?
どうして丸いの?
どうしてあんなに明るいの?

waka50.gif

こんな可愛い疑問に応えるかのように
目を細め一層ニコヤカに
光々した光を投げかけてくれた。

虫のオーケストラ
秋ともなると、都会でも、
わずかばかりの下草をかきわけて
精いっぱい羽と羽をこすりあわせ
ひびいてくる、虫のオーケストラ
ママと並んで、寝んね、

「ほら、耳を澄ましてごらん」
いつか眠りに誘い込む、天然のオルゴール

waka51.gif

ある晩
「羽があるのに、ゴキブリは、ドーシテ鳴かないの?」
「薄くて油っぽくて、ツルツルしているから」

それに音を立てると
ネコに気づかれるでしょう

8匹のネコのオモチャは、ゴキブリ
目をランランとさせ、サッカー試合、
和歌は、可哀想といいながら、
試合見物が大好きだった。

HINTS!

今忙しいの、だから後でネは止そう。
一言でいい、何か答えよう。


『幼稚園選び』

選択するにあたって、

1. 3年保育。
2. お弁当がある。
3. 通園バスでなく、歩いて通えるところ
4. 学習するよりは、たくさん遊ばせてくれるところ
5. 土や泥、緑がたくさんあるところ
M幼稚園は、これまで親子で自然の中で
体を使って遊んできた和歌にとっては、
うってつけの幼稚園だった。

幼稚園年少あか組

はじめてのことばかり。
幼稚園生活もはじめてなら親から離れることも初めて。

どんなに寂しく、つらくとも、
お友達や先生と遊んだりしながら、じっとお迎えを待つ。

安心して遊びだすまでに個々人、格差はあるが、
2、3週間はかかる。

それまでは、毎朝門を境に、
まるで生き別れの映画のシーン。
親のあとを追って、泣きじゃくる子、もらい泣きする子。
門の前で足がすくみ、カチカチに固まる子。
門をよじ登って追いかける子。
安全のために、門の鍵はしっかりと下ろされた。

先生方はてんやわんや。
抱いたり、おんぶしたり。
あか組は、まるで大きな赤ちゃん。

手足をバタつかせ泣き騒ぐ子を、
すみませんと先生に託し、急ぎ足。
逃げるようにその場を去る。
親もまた、辛く悲しい。

これまで、ほとんど親と一緒。
離れる時は、お昼寝中に、そっと抜け出し、お買い物。
慌てて戻れば
目が覚め、泣いている。
寂しいのではなく、不安になるのだろう。
これが1、2才児の平均だった。


和歌とお留守番

自立心が旺盛。待っててネが解かる子。
それだけに、むしろ他の心配。

鍵の開け方。
私の一挙一動を、じっと観察。
トイレに入り、自分勝手に内鍵をかけ、
鍵を壊して出すまでに、時間の長かったこと。

不安にさせまいと、紙に絵を描いて、
ドアの下、1センチほどのスキ間から、次々にメール。
泣くどころか、
「今度はネコちゃん、今度はゴリラ」と次々に催促。
急に静かになったので
どうしたんだろう?
突然、トイレットペーパーをひき出しガラガラと回る音。
ジャージャーと水を流す音。
けたたましく、ゲラゲラと。

トイレという密室は、貸切の個室だった。

2歳頃のお留守番。
買い物からあわてて戻れば鍵がかかって入れない。
「和歌、開けて!」
「開かないの、ママ開けて!」
やっとの思いで部屋に入ると
「お母さん、お帰りなさい」くるりと振り向いた顔には、
真赤な口紅がくっきりと。

親と離れることに不安はなし。
不安だったのは、私のほうだった。

『あか組園児脱走事件』

あか組さんもすっかり慣れ、親も先生もホッと安心した頃。
そのスキをつくかのように、
「エッ!まさかっ!」
幼稚園史上、記録に残る画期的な事件が発生した!

「お母さんと一緒に帰りたいよ!」
大泣きが始まった。

先生方が、チームワークよろしく、抱き込み、
押さえ込んで教室の中へ入れるやいなや、
廊下に飛び出す。
門をよじ登ろうとしたところを
とり押さえられ、引き下ろされ悲しげなオリのサル。

門にしがみつき、
「開けてヨー、開けてヨー」と両手で門をガタガタと。
とその時、不思議なことに、
「開けゴマ」
重い鉄の門の扉が、大きくゆっくりと開いた。

突然開いた扉に驚いた男の子。
一瞬泣きやんだかと思うと、
今までになく大声で泣き、
いきなり門から飛び出し大通りに向かって走り出た。
その子を先頭に、あか組園児全員脱走。

たった一人、門の中にとり残され、気まずそうに下を向いていた子がいた。
それが、門の鍵を開けた和歌だった。

この降ってわいた騒動に、近隣の人たちは驚いた。
通行人の協力もあって、幸い事故もなし。
園児全員無事保護。
先生方もホッと胸をなで下ろした。

あか組保護者会
開園史上初めての出来事に、
さっそく、あか組保護者会が開かれた。
父兄の間で浮かび上がったのは、江崎和歌とその母親だった。
「江崎和歌は悪い子か?」

「今度はお騒がせしてすみませんでした」
と言う挨拶に始まって、事のいきさつが語られた。
-「はじめて親から離れる心の動き」-をテーマに、
今後も引き続く、良い参考例になると-。

◎幼稚園の保育方針
*1人1人の個を尊重
*自発性を大切にする
*思いやりのある子を育てる

3つをモットーに親と教師の話し合い。
「本当に人の事を思いやるやさしい子」とは?
親にとっても、教師にとっても大きな課題。

「江崎和歌ちゃんは、日頃静かで大人しいというイメージだったが
思い切った事をする子、
正義感と情に厚い子、
自分が決めた事は、自発的にやる子、
そして、本当はとっても思いやりのあるやさしい子だった」と園長の弁。

「おうちに帰りたいよー」と泣く子を、
ずっと可哀想にと思いつづけていた和歌ちゃんが、
ある日、意を決して、門の鍵を内側から開けてあげた、
ただ、それだけのことでした-。

そして、そこに至るまでのいきさつと、
心の動きと言動を観察していてくださった一人の若い女の先生が、
「私にも責任がある。教師冥利に尽きる出来事だった」と。
「和歌ちゃんは、泣いているその子のワキにしゃがみ込んでは、
いつも何か問いかけるかのように、言いきかせているかのようでした-。
きっと
『お母さんは、ちゃんとお迎えにくるよ-』と言っていたのでしょう」
今一つ、私に、
「先生、この子お家に帰りたいんだって」と、
「お母さんの方がいいって言ってるよ!」と、
何度も何度も、その子と先生の間を行ったり来たりして、
知らせに来ていたという。

涙ぐんでいるお母さん、
親も先生も、各々に思い当たることがあるのだろう。
かつて例を見ない保護者会だった。

私は最後に一言、
「本当の思いやりとは、随分責任が伴うもんなんですね。
お騒がせしてすみませんでした」
と、つけ加えた。

HINTS!

子供の主体性を大切にしよう。

Age4

ママが死んだらドーナルの?

和歌にとって1番身近である「私」の死について、
いつか聞いてくるだろう、いつ聞いてくるだろうか?
その時はこう答えようと、その日を心待ちにしていた。

死をハッキリと意識しだしたのは、
幼稚園年中にさしかかった4歳の時。
幼稚園の帰り道でお葬式に出会った日だった。
その日習った歌を歌いながら、元気にスキップして通る道。

遺影を横目でチラッ!と見ると
口を閉ざして、うつむきかげんに早足私の手をひっぱり、
先へ先へと走るように通り過ぎようとした。

いつも
「いってらっしゃい」
「お帰りなさい」
声をかけてくれたおばさんの遺影。

寝る前のお話をしたりする楽しい時間。
その日は口を閉ざしたまま、天井をみつめていた。

私にはすぐわかった。
昼間見た光景が頭に焼きついていたのだろう。
幼心なりに考えに考えた上で、決心したかのように口を開いた。

「ねえ、お母さんが死んだらどうなるの?」

waka46.gif

「あなたの目には見えないの。
でもね。いつもちゃーんと、あなたのそばに居るのよ。
縁日のお祭りの時、浴衣着るでしょう。
帯が結べなくて困っていると、後からそっと手伝うの。
アララララ、不思議、スルスルとひとりでに結べるのよ。
縁日で金魚すくいをすると、不思議なほど金魚がいっぱい。
あなたの脇にしゃがんでママも金魚すくい。
ユウレイって手も足も動くのがとっても速いの。
風よりも速いのよ。」

「フーン。じゃあ、軍太にはどんなユウレイ?」
「『また冷蔵庫を開けたままそんなところでつまみ食いして』
手をピシャン!
冷蔵庫がひとりでに閉まる。
あけるとまた閉まる。
軍太が夜中にトイレに行くでしょ。
ママが先に入って
『軍太見たなー』
軍太がギャー」

ここで和歌はゲラゲラと笑い出す。
「悪い子には本当に見えるユウレイ」

「パパには?」
「パパは毎晩ビール飲むでしょ。
パパには見えないけど、ワキに坐ってるの。
あれっ?
コップについだはずのビールがないの。
つぐと、またなくなるの。
ママが飲んじゃうから。
パパは変だなあと、コップの底を下からのぞき込む。
すると、パパの目にビールがジャー!
ママがこぼれそうなほどなみなみとついであげたの」

「ユウレイって、酔っぱらうの?」
「もちろん。
とってもいい気持になるの。
ママは、昔好きだった音楽が聞きたくなって、
パパが見ているテレビがひとりでに消えて、
スイッチを入れたはずもないのに音楽が流れはじめるの。
酔っ払いのパパは、急にママを思い出して、
『ママ、ここにおいで!』って呼ぶの。
ホー助(大型犬オス2才)は自分が呼ばれたと勘違いして、
喜んでとんで来るの。
パパはママと間違って抱っこするから、
ホー助はもう嬉しくてパパの顔をペロペロペロペロ。
パパはもう喜んで、
『ママヤメテ!ヤメテ!』」

「犬やネコには?」
「ママがいるのがハッキリ見えるの。
ママと一晩中ボールなげて、家中走り回ってママと遊ぶの。
パパはあんまり騒々しくて眠れない。
朝目を真赤にして会社に
『行ってきます』だって」

「ユウレイって何時ねるの?」
「和歌ちゃんがねるとき。
和歌ちゃんといっしょにねんね」

「そう、じゃあ、ママが死んでも寂しくないね」
「そうよ」
「よかった」

HINTS!

子供の疑問には、精いっぱいゆとりと
ユーモアで答えてあげよう。
死はいずれ向こうから歩みよってくる。

共通テーマ: 「和歌と金魚」「人は死んでも生き返らない」

アッ!江崎和歌は女だった
年中もも組


遊びこんで日焼けした、引き締まった体。
冬でも短パン、ソデなしのTシャツ。

木から木へ、子ザルのように登ったり下りたり、
泥ダンゴ作りはドロドロの泥だらけ。
汚れるのも気にせず、夢中になって遊んでいた。

誰の目から見ても男の子。
そんな逞しい男の子がうらやましいと、
じっと眺めている男の子がたくさんいた。

女の子は、お人形さん遊びが大好き。
和歌は、リカちゃん人形で一人遊びをするような子ではなかった。

でも、女の子は女の子。
一度はリカちゃん人形を!と
買ってあげてはみたものの、
興味がなかったのだろう。

髪をみつあみ、1つにまとめ、おリボンをつけて遊ぶ。
遊び方がわからなかったのだろう。
ロングヘアのリカちゃんは、ブラシでグチャグチャ。
前髪をかき分けると、ブルーの瞳はあやしい光を放ち、
洋服は後前。
遊び相手にしては、少しも可愛くない、
ユウレイのリカちゃんだった。

キューピーさんを買ってあげた時。
ゲラゲラと。
何がそんなにおかしいんだろう?と覗くと、
首はくるりと半回転、背中に顔。
手には足、足には手をはめ、後向きにハイハイさせて、
兄軍太とゲラゲラ笑い転げて遊んでいた。

もも組さんの女の子達は、
お人形さんや、おままごとで、ごっこ遊び。
男の子と思ったのだろう。
遊びの仲間として、誘われることはなかった。

誘われようと誘われまいと、そんな事はどうでも良く、
仲間はずれにされても気づかず、いじわるしても感じない。
いじめる側にとっては、いじめがいのない、
マイペースの和歌だった。

年少あか組さんは、性別の意識はまだ薄く、
先生以外は、誰もが男の子だと思っていた。

江崎和歌はやっぱり男の子!
それを決定的にした事実。
男の子と並んで園庭の片隅で立ってオシッコだった。

2才違いの兄が師で友だった。
共に行動、見よう見まね、やることなすこと兄と一緒。
それに拍車をかけたのは、戸外での生活体験だった。

幼少期から四季折々、山、川、海へと。
長くのびた草陰、葉のおいしげった木陰。
岩陰に身を伏せれば、波の音。
岩陰は格好のトイレ。
広大な大地は、どこもかしこも、
自然が作ったトイレだらけ。
トイレ探しも1つの遊びだった。

人影らしきものは、タンボのカカシ。
とがめるものは、誰もなし。
2人してのびやかーに、用を足す。

こうした自然体験をしてきただけに、むしろ当然の成行きだった。
「女の子が男の子と並んで用を足す」
この現象は開園以来はじめて。

先生がたは、
注意してしまうのは、勿体ない場面。
一生に一回あるかない貴重な体験。
いつ、どこで、誰が気づくか?
子供の関係を楽しみに、見守っていきたいと思うと。

江崎和歌は、やっぱり男の子!
これを決定的にした、今一つの事実。
トカゲ、ガマ、イモリ、ヤモリも、へのカッパ。

waka47.gif

木造の園舎はヤモリが出没する。
炎天下、つまみあげては手の平にのせ、
ヤモリと鼻と鼻をつきあわせ、チュッ!チュックのチュッ!
「まあ、なんて可愛いヤモリちゃん」
なでてなでて、なで廻す。
小1時間もなでヤモリは、ぐったりと。
真夏はヤモリにとっては受難続きだった。

「まあ、なんて、可哀想なヤモリちゃん」
仲間に向かってポイッ!

さわれない仲間は、
「オイ!和歌、いたぞ、いたぞ!」
見つけるとすぐに知らせに!
ヤモリにとっては受難続き。

子供たちが苦手とするのは、見るからに不気味なガマ。
ヤモリの時は「いたぞ、いたぞ」だったが、
ガマの時は「オイ!和歌、でたぞ、でたぞ」だった。

和歌にとっては、ヤモリもガマも同じこと。
重量感のあるガマは、抱きしめがいがあり………
人なつっこそうな目。
なんとかわゆいガマちゃんでしょう-だった。

こうしたことから、
仲間から尊敬の念を抱かれた男の子?だった。

もも組さんのある日。
安全確保のために、トイレのドアの下にはスキ間があった。
いつも下から覗くいたずら好きの男の子。
和歌がトイレに入ると、覗き見に!
男の子だと思っていたからこそできたこと。

保護者会で先生は、苦笑。
その時の、A君のけげんな顔付きととその驚きようったら!
「ハアー? エーッ!」だった。

それからしばらくして、その子の口から口へ、
それをまた伝え聞く、男の子の口から口へと。
男の子たちの間にうわさ話として広まった。
実は、江崎和歌は女だった-と。

その日を境に、
タンスの中に花ガラのスカートを。
-がしかし、
ヤッパリ短パンとTシャツだった。

HINTS!

クツ下をはじめ、衣類の洗濯は
本人に任せよう


『和歌とプレゼント』

お誕生日プレゼント、クリスマスプレゼント
プレゼントは、子供の成長過程の1つの節目、節目の祝い事。
成長するにつれ、プレゼントの品は形を変え、
親もまた、子供の目の高さになって、
本当に欲しい物は何だろう?
喜ぶ顔見たさに、目の奥をのぞき込んで、遊びをじっと観察。

和歌2歳の誕生日プレゼント

動物好きの和歌。
動物のぬいぐるみならば、当たりハズレがなかった。

その日のプレゼントは、今までになく、大きな箱。
お誕生日とは何か?はまだ解からなかった。

でも、リボンのついた四角い大きな箱は、
自分のものだと、すぐに解かった。
ニッコリすると、箱のフタを下から持ちあげ、パッとはらいのけた。

でてきたのは、等身大のクマさん。

やっとの思いで抱きあげ、
パパに手伝ってもらって寝床まで。
クマさんと抱っこでネンネ。

誕生日のごちそうの満腹感も手伝って、
フワフワとした暖かいぬくもりは、ドッと深い眠りに。

大きなクマさんに、鼻を押し当て、
まるでママのオッパイに顔を埋めて寝ている赤ちゃん。
クマさんはまるで和歌のママだった。

和歌3才のクリスマスプレゼント
これまでぬいぐるみが多かった。
少し違ったものをと思い、おもちゃの国キィディーランド。

館内は、暖房が効き過ぎ。
プレゼントを探す親子で身動きできないほど。
目をひくめずらしいものばかり。
時間のたつのも忘れ、ふと気づくと、6時。

早く決めなくてはと、
暑さと疲労感、焦りで、ボーッとした時、
涼しげな彩りのランプに照らされ、
ゆっくりと廻りながら、童謡を奏でる
ガラス細工のクリスマスツリー。
それはオルゴールだった。

なんて素敵なんだろう。
ガラス細工の小さな可愛いオモチャがたくさん吊るしてあった。

-がしかし、これはオモチャではなく、
アクセサリーであるということに、気づかなかった。

家に戻ると、待ちくたびれたのか、
「オカエリナサイ!」と無愛想。

プレゼントの箱を見ると、
遅くなった理由が解かりかけたとばかりに、ニッコリ。
さっそくヒモ解き、箱から出して、床の上に。

予想とは違ったのだろう。
ガラス細工を凝視する冷たい表情は、
ガラス細工の雪の女王そのもの。


あわてた私は、ごちそうやケーキで穴埋めしようと、台所へ。
「さあ、もう、お食事にしましょうね」
と言いかけ、ドアを開け驚いた。

まるで地震にあったように崩れ去り、
唯のガラスの粒の山。
落としたか?たたいたか?
それとも、持ちあげ、あやまって落としたか?

そんな事は、もうどうでも良いことだった。
それよりも、崩れ去ったツリーを前に、
ペッタリと座り込んでいる、
和歌の気持をどうするか?
そのほうが先決だった。

どんなにプレゼントを楽しみにしていたか?
その思いだけがひしひしと胸に伝わってきた。

もし、わざとしたならば、
いけないと知っていてやった和歌こそ、
どんなにか胸の痛む思いだろう、

あえて何一つ聞くことはしなかった。

子供によく自分勝手とはいってきたが、
自分勝手は、私のほうだった。

ガラス細工のクリスマスツリーは、大人のエゴ、虚構の城。

waka48.gif

一瞬にして、崩れ去ったガラス細工は、
傷つきやすい、幼心そのもの、

して良いこと、悪いこと。
理屈では解かってはいるものの、理論と行動が伴わない、
まだ動物の面影を残した、衝動的な行動でもあり、
たとえ親でも、手加減しない。
素直に、正直に、自由に自分を表現できた。
まさに、反抗期、3才児。

人の子として、
順調に育った証拠ではないかと思える出来事だった。
起こした行動は大人へ短い言葉、サインだった。

この出来事を、4才のクリスマスプレゼントにどう活かすか?
これが、私の1年間の長い長い課題だった。

和歌もも組さんのクリスマス

幼稚園年中もも組さんは、
幼稚園でもお家でも
2つのクリスマス会を祝うことができた。

これまで、家では家族だけのクリスマス。
はじめて、幼稚園のお友達を呼び、
お家でクリスマス会

飾りつけは、家にあるもの利用した。

今までと違うのはテーブルの上の料理。
自分たちで作る。
大人はお客さま。
一人一人が小さなコックさん。

手巻ずし、ホットケーキ、たこ焼き、ヤキソバ……。
縁日の屋台のようだった。

一番最後はプレゼント交換。
自分で心をこめて作った手作りのプレゼントを交換。
最後は、
その日のために一年間待ちに待った
私の一大イベント。

去年のクリスマスプレゼントのやり直し

「今日は皆さん、どうもありがとう。
ハイ!
これから、和歌だけでなくみなさんに、
私から素敵なプレゼント!」

テーブルの上には、心なしか、時折ゆれる
おリボンのついた四角い箱。

子供たちの目は、いっせいに箱に集中。
カンの良い和歌は、ニコッ
急いで一気に箱のヒモをほどき、フタをとった。

出てきたのは、
身を縮めて
いち早く箱のフタを開けてもらうのを待っていた、
赤いリボンをつけた、
手のひらサイズの黒い子ネコちゃん。

waka49.gif

「なんて可愛いの」
急いで抱きあげ、
「お母さんどうもありがとう」―と。

こんなに喜んだ顔は一度も見たことがなかった。

子供たちは、次々に抱かせて、抱かせてと。
その日の子供たちのキラキラした瞳は、
クリスマスのどんなシャンデリアよりも、輝いて見えた。

3才、反抗期最盛期。
とかく反語でしか表現しない和歌から出て来た、素直な一言。

「お母さんどうもありがとう」は、
私の胸にきざまれ、一生忘れることはないだろう。

あの日の雪の女王は、今、目の前で溶け去った。
許された私がいた。

このことは、反抗期、思春期、
嵐のような時期を迎えるであろう私を
きっと支えてくれ、乗り越えさせてくれるであろう。

「お母さんどうもありがとう」は、
このことを確信できる一言だった。

プレゼントは本物にまさるものはない。

いつの日か、ボーイフレンドができるであろう。
きっと、どんなダイヤモンドよりも、
「I LOVE YOU」の一言と、
本物の1匹のトカゲのほうが
よほど喜ぶかもしれませんことを-
王子さま方にお伝えしたい。

山での生活

山での生活 -序章-

幼少期の子供の三原則
ただひたすら食べて、寝て、遊ぶこと

小学校低学年の頃
都会を離れ、自然を舞台に
一度は親子で生活体験をしてみたい
と、そう思っていた折

相模湖の小高い山の斜面に
格好の住まいを見つけた

6、4.5、6畳の3DK
風呂、駐車場、畑つきで
家賃は月三万二千円だった

目前は湖、どこまでも果てしなく続く空
さえぎるものがなく澄み渡った空、
透明な空気、きれいな水・・・

仕事の都合上、夫を都会に残し
母、子3人の単身赴任だった

母、子3人丘に立ち、バンザイと叫んだ
澄み渡った空、透明な空気、きれいな水
欲しかったすべてを手に入れた

が、しかし

まさか、欲しくなかったものまで
手に入れることになろうとは・・・

いじめ

転校先で間もなく
和歌の様子に変化があった

うつむきかげんに「ただいま・・・」と
「何かあるのでは?」と気になり始めた

しかし、自分なりに感情を処理して帰宅
プライドの高い子だったので
あえて「どうしたの?」と
尋ねることはしなかった

目の奥をのぞき込み
キラキラしていれば大丈夫
それがバロメーターだった

ある日、なかなか帰ってこなかった
私は学校へ

誰もいない校庭に
指をくわえしゃがみ込んでいた

私に気づくと
「お母さん、わたし今朝、爪切ったよね!」

見れば肉が見えるほど短く切られた爪
指をくわえている理由(わけ)ダ

「みんなでわたしを押さえて爪を切ったの」

「強かったね」
私を見上げ「ウン」とうなづいた
尋ねることは何もなかった

「きれいねえ・・・」
並んで空を見上げた

waka42.gif

涙が青い空にすっかり吸い込まれるのを見届け
「空がこんなにきれいなのに
人をいじめたりする子がいるんだねぇ」

和歌、この先、つらいことや苦しいことがあるかも知れない
そんな時、今日お母さんと見たあのきれいな空を
思い出してください(その日の一行日記より)
その場の、和歌の気持ちを救うことが先決だった

HINTS!

いじめは問題にすれば問題となり
問題にしなければ問題とならない


共感してあげるだけで楽になる

不登校

翌朝、「もう学校に行かない」と和歌
「まあ、うれしい。じゃあ、お母さんと一緒に遊びましょ!
和歌はなんと良い子でしょう」

おにぎりを持ってセリ摘みに
春の日差しは暖かく
春の田んぼは贅沢三昧
メダカにタニシにタンポポに・・・

waka43.gif

教室で勉強してる場合じゃない

バケツいっぱいのセリ
きれいに洗って、根っこを取って
食べるための作業もまた楽し!

朝から晩まで
おいしく楽しい不登校日だった

2日目もまた
「今日もお母さんと一緒に遊びましょ!」

カラスに餌やり、蟹取り、お花摘み・・・
春の山は遊びに事欠かず

3日目の朝
「和歌、お母さん学校に
今日も休むと連絡したよ!」

熱を測ると
遊び疲れたのだろう
本当に37度あった

「まあ、大変!肺炎になっちゃうわ」
さも、もっともらしく布団を敷き
「さあ、一緒に休みましょ!」

布団の上で並んでゴロ寝
折り紙、お絵かき、本を読んであげたり・・・

その時ちょうど
新聞に大きな見出し
"中学生いじめを苦に自殺"

解りやすく噛んで砕いて読み上げた
3日間の不登校の集大成!

自殺――
和歌にとって大変な出来事だった
しばらくの間、黙って記事を見つめていた

翌朝
「毎日お母さんと遊んであげるわけにはいかないの
私、もう学校に行くね」と
あっけなく登校した

不登校は、困るどころか
私たち親子にとっては
おいしく楽しいことだらけ

休まれて困るのは
先生といじめる子供たち
いじめたくとも本人不在

おまけに先生や親に知れたらどうしよう・・・

和歌はいじめられるほどに
ますます強くなった

いじめにあった時
何やらブツブツつぶやきながら
メチャクチャにピアノを弾きまくった

いじめられるほどに
創作意欲はふるい立つ

歌うこと、弾くこと
すべてストレス発散
何をされても、何をしても
楽しめる和歌だった

自然が奏でるオーケストラをバックに
山びこはアンコール

嵐の晩、バラバラと落ちる栗の音
ひよどりはフルートさながら笛を吹く

丘の斜面を渡る風は
オーボエのなる丘

小さなシンガーソングライター
江崎和歌の弾き語りは
辺りの山々に木霊した


いじめっ子は
その日、その場で音楽葬

鍵盤をたたく腕力
ペダルを踏んづける鍛え上げた足腰
いじめっ子は、もうとっくにネコと一緒に
踏んじゃったぁ~、死んじゃったぁ~、だった

学校という教育現場で
タダで人生勉強
おまけにピアノも上達し
いじめてくれてありがとう、だった

いじめる方は
ますます人相は悪相に?

極めつけは、腕っぷしの強い2歳上の兄
登下校のたびに待ち伏せ
「よくも俺の妹に!」

不登校になりそうなのは
いじめっ子たちだった

先生や親に言いつければ足がつく
いつの間にやらいじめは下火に
これには先生も助かった

HINTS!

いじめはしっかりと受け止めれば
むしろ肥やしになる


モチーフ豊かな生活

得意科目は国語、音楽、図工
無口な和歌は
詩や文章、絵にして表現することが得意だった

生活様式はシンプル
芸術的環境はゴージャス
辺り一面モチーフだらけ

図工の時間

waka44.gif

取りつかれたように描きつづけ
画用紙いっぱい真っ黒
山ほどのオタマジャクシ発見
沼のスケッチだった
こんがらがったひとかたまりの毛糸玉
クモの巣発見
足長蜘蛛の軍団のスケッチだった

画用紙いっぱいブルー
切れ切れの黒いシルエット
上空を目指し飛んでゆく
スピード感あるカラスのスケッチ
「上空をスケッチする子は初めてだ」と先生

国語の時間

たった5行の詩が
地元新聞に掲載される

お父さんとお母さんは
本当は仲良しなんだ
兄弟でもないのに
親子でもないのに
どうして?


和歌は嘘つき?
願望なのか、期待なのか

山に越すことをはじめ
価値観の相違をめぐって
まるで部屋に放し飼いの
2羽のニワトリ

寄れば触れば
ヤンヤと喧嘩

が、しかし
夜になればつがいのニワトリ
1つの布団に仲良く並んで・・・

仲良く見えただけ?

そう感じさせたのは
部屋に流れている音楽だった

流れている曲は
ブラームスの子守歌
喧嘩の時はボリュームアップ

本当は仲が良いやら悪いやら
何が何だか解らない

HINTS!

子育てに音楽を取り入れよう
子供にとっては楽しい一時
喧嘩をしても大丈夫


山での生活 -終章-

「山での生活は2年間だよ」
お父さんとの約束の期間は
またたく間に過ぎた

いじめもあるにはあったが
ようやく解決を見る頃
元の学校に戻ることになった

山の子供たちと
もう2度と会えなくなると思うと
急に悲しくなったのだろうか

木のてっぺんに登り
いつまでも学校のほうを見ていた

waka45.gif

辺りはもうすっかり夕暮れ
それでも下りてこようとはしなかった

小学校生活

東京の学校
転校、また転校

3年の新学期、4月
「江崎和歌が戻ってくる」と
クラスは沸き立った

山の子供に鍛え上げられた
精神力と自然体験

ひと回り太くなって戻ってきた
山の木の幹は

都会のアスファルトの校庭に
土中深く根を張った

クラスの仲間へのおみやげは
和歌の存在感そのものだった

山から戻ってすぐ
国語の時間に
こんな詩を書いた

「こんなケシゴムがあったらいいなぁ」

waka38.gif

ビルを消して、山にする
町を消して、公園にする
山から木や花を取ってきて、植える
電柱を消して、木にする
灰色を消して、緑にする
ついでに、いやな奴も消す


もし、音のしないピストルがあったら・・・
と続く詩に、先生は
日頃、無口・おとなしい、は
まさに音無しのピストルで
生来の気性の激しさを感じ、
ドキッとしたという

「この詩を読んで、山でのいじめは
思いのほか過酷だったということが分かりました」と

この詩は、職員室では噂となった

こうした子がいったん怒ると手がつけられない
宅急便の壊れ物同様
取り扱いには要注意だった

それにしても、発想法のユニークさもさることながら
詩のうまさは大人顔負け

どうしてこういう詩を思いつくのかと
不思議がられた女の子だった

この詩は、これから自分たちが住む地球について
人も、動物も、自然も、
どうしたら住みやすい環境にすることができるか?
子供にも希望する権利があるという
都市計画そのものだった

行政サイドに立つ大人・政治家に
目を通す、申しおくるだけでなく、実行・実現させ、
未来を頼む子供から信頼される大人であってもらいたい、
そんな大人へのメッセージではなかろうか?

HINTS!

無口な子が、詩や作文でベラベラしゃべる
おしゃべりだったりする


あるアンケートより

3学年のクラス担任は
自由奔放な和歌にピッタリ

モットーは1人ひとりの個性を尊重
目標は明るく楽しくいじめのないクラス

教育熱心な先生は
子供自ら考えさせようと
アンケートを作成

自分が今、やりたいことを
思い切りやる!
人をいじめる暇はない

・今、あなたが思い切りしてみたいことは?

この質問に
「思い切り人をいじめてみたい」と
クラスでたった1人
本末転倒の回答
それが和歌だった

一度してみたいことは
してみたことがないことだった


・いじめについてどう思うか?

これについても、ほとんどの生徒は
良い悪いで答えたが
「いつか役に立つこともある」
この回答も和歌だけだった
和歌の転校は
「いじめは役に立つこと」と
発想の転換となった

先生は一言
「これが本当の体験学習です」

子供の心はどこまでも澄みわたり
空はひとつどこまでもつながっていた


東京の教室から山の教室へ
ありがとう!

山の子供たちは教室にはいなかったが
山と東京、実りある合同授業の場となった

HINTS!

いじめ? ワンモアチャンス
思いがけないプラス1がきっとある
負けてしまえばノーモアチャンス


授業参観 パート I

授業参観は
知ってる子供の発表会
いつの間にやら親が主催者に

算数の時間
自信のある子は我先に
いきおい「ハイ!」と
手を上げる

算数は苦手な和歌
解らなくても手を上げよう
参加することに意義がある

自信がなかったのだろう
ゆっくりと上げた手は半円弧を描き
盆踊りの佐渡おけさ

「ハイ!江崎さん」に
くねるように立ち上がると
月も出なけりゃ答えも出ず
「解りません」が答えだった

参加者はもとより
クラス一同、爆笑の渦

「何がそんなにおかしいの?」
受け狙いはナシ、思いがけずお笑いのネタ提供
緊張感の欠如した和歌だった

授業参観 パート II

対応上手、引き出し上手の先生は
「いじめられるのはイヤだよねぇ、カッコ悪いよねぇ」
「経験のある人は? 誰か話してくれないかな?」

この問いかけに、和歌は
待ってましたとばかりに
率先して手を上げた

それを見て先生は思わずニッコリ
「ハイ!江崎さん」だった

和歌は山でのいじめの経験を切々と語り始めた

「『こんなにきれいな青い空の下でも
人をいじめるかわいそうな子が・・・』
と、お母さんが・・」
ここまで話して声を詰まらせた

先生は涙、授業参観に来ている親も涙
それを見てもらい泣きする女の子もいた

教室は舞台となって
和歌は悲劇のヒロインに
シンデレラもかなわない

クラスの子供たちにとって
この日の和歌は
“なんてかわいそうな、かわいそうな和歌ちゃん”

泣いていないのは当事者の和歌だけ
辺りを見回し、何か気恥かしげ
「えっ、もしかして私ってかわいそうな子?」

かわいそうどころか
幸せいっぱいのヒロイン

思いがけず同情票をかき集め
この日をきっかけに
お誕生日、クリスマス、etc・・・
プレゼントがどんどん増え出し
まるで貢ぎものの山

そのほとんどが男の子からだった

「オイ、和歌!和歌!」と
ご機嫌取りまで始まった

月に昇天しそうなかぐや姫
昇天も昇天、有頂天

waka39.gif

が、しかし、男の子たちは
よりお気に入りの品を、と競い始め
プレゼントごっこは日に日にエスカレート

子供同士のプレゼントのやり取りと
おこづかいの使い道


次の保護者会のテーマを提供する結果となった

銀ヤンマピアノ教室
初めてピアノを習う

お友達がピアノを習い始めると
私も習いたい!となった

習いたい、「アラ!ソー」
止めたい、「アラ!ソー」
の主義だった

お友達と一緒がいい!と
遠かったが早速見学に

「はじめまして、お和歌ちゃま」
現れたのは、銀ラメセーターに
鎖つきの大きな銀ブチメガネの
おばちゃま先生

「お宅のお和歌ちゃまのおレッスンはお毎週お2回、
お毎日お2時間、お家でおレッスン、でないと困るザマス」

上から下まで品定め
「宅は年お2回お発表会があるんザマス
おドレスでなければイケナイザマス!」

「おレッスンは、おズボンはダメ!
おスカートでなければイケナイザマス
おピアノを弾く前は、お手々を洗って!」

色々に規制がうるさく
ダメダメオンパレード

自由奔放な和歌、どうも場違いな教室へ来たようだ

バカ丁寧な、耳なれない言葉、
これでは英語教室!

帰り道、トンボのメガネは銀色メガネ、と歌いながら
「お和歌ちゃまだって!あの先生、銀ヤンマみたい」
なるほど、そっくりだった

waka40.gif

ピアノを習うこと自体には
あれほど乗り気だったのに
「お休みしたい」と

「アラ!ソー」だった

厳しいおレッスン、生徒のわきに仁王立ち
その迫力に、音符はかすんで、弾く手は止まる
すると即座にその手をピシャン!

ひとたび怒ると鬼ヤンマ
泣き出す子も、止めてしまう子も多かった

ところが和歌は
時々休み、ロクロク練習もせずに
「ピアノに行ってきまーす」と平気だった

和歌が良ければそれで良い
いずれ本人が決めること

ピアノの発表会もせまり
お月謝は前払い
その手前
銀ヤンマは練習不足にキリキリ

ある日電話が入った
「お宅のご家庭のお教育方針は?」

「食べて、寝て、遊ぶことです」
「ンマッ!それじゃあ、動物ザマス」

「お宅のお和歌ちゃまは、イケナイ子ザマス
お手手でなく、おアンヨを洗うんザマス
おピアノの発表会のおレッスンは
何もしてないザマス!

怒ったら、私を蹴るように
おアンヨでペダルを蹴ってにらむんザマス!

発表会のおアルバムを見せ
おドレスを!と言ったら
『へえ~、こんなの着るんだ、私イヤ!』
おアルバムをパタリと閉じ
私お家に帰る!って帰ってしまったんザマス

お宅のお和歌ちゃまはワガママザマス
しつけがなってないザマス
きつくしかってやってください」

おピアノの発表会当日

会場○○○スタジオ
○○○子教室 ジュニアピアノコンサート

この日の晴れ舞台のために
趣向を凝らした衣装
ピアノの発表会というよりも
ドレスの発表会

本末転倒、誰が何のためにする発表会?
「ドレスはイヤ!」
和歌の気持ちが解りかけた
和歌はシンプルなデザインの白いドレス
ドレスは白いがちょっと太めの黒雪姫

白雪姫の姫ならば
柩の中で死んだふり

ロクロク暗譜もしないで
寝たまんまマンガを読んでたお姫様

さて、いよいよ和歌の出番!
一体どうする気だろう?
ドタン場に強い和歌のこと
きっと何とかくぐり抜けるだろう

白いおドレスのお姫様は
スソを引きずり堂々の登場

舞台の中央でスソをつまんで持ち上げると
丁寧すぎるほどに深々とおじぎ
この自信とゆとりは一体どこから?

一方、銀ヤンマは不安でいっぱい
楽屋裏を行ったり来たり

和歌は落ち着き払ってピアノに向かうと
さあ、始めます。とばかり、
会場に向けてニッコリ会釈
両手を鍵盤の上に置くと
力強くリズミカルに弾きだした

なんと、弾けるところだけどんどん弾いて
弾けないところはどんどん飛ばし
聞く者にとっては
まるで超特急の窓から見る景色
何が何だか解らないうちに終わった

まるで、でたらめ
銀ヤンマはア然、しばしボー然

上手に飛ばして続けざまに弾いたので
そんなものだと気づかない人も多かった

拍手

最後に先生と並んで深々とおじぎ
その最中、会場の私に気づき
ペロッと舌を出し、ニタッ!

会場の誰からも見えたこの仕草
知らぬは先生ばかり
「なんてかわいいの!」と
場内は笑い声でざわめいた

さらに過酷な運命共同体
レッスン仲間はこの時とばかりに
「和歌ちゃーん!」だった

ふってわいたこのハプニング
銀ヤンマは訳が分からず
晴れ舞台はお和歌ちゃまのおかげで泥だらけ

赤面のいたり
秋の夕日に染まった
羽がボロボロ、宙をクルクル廻る赤トンボ
とまどいうろたえヨロヨロと
挨拶も早々にステージから楽屋へと
ガクガクしながら引き上げた

運動会のハードル競争を思い出す

ハードルを前に
跳び越すと思いきや
サッとくぐり抜け、ゴールイン!
またぐも方法、くぐるも方法


ピアノの発表会もまたしかり
人生の数々のハードルを
きっと上手にくぐり抜けて行ってくれるであろうことを
予感できるできごとだった

ヒヤシンスピアノ教室

銀ヤンマピアノ教室は、二月足らずで
「あんな先生、もうヤーメタ!」だった

今度はクッキーが食べられる
おいしいピアノ教室があると聞き
「また習いたい」

「アラ!ソー」だった

猛暑つづきの7月、夏の真っ盛り、うわさの教室へ

古びた木造の建物、門には十字架、玄関にはイエス様
草ぼうぼう、至るところにガマ蛙が出没、
捨て猫がみんなでお出迎え

和歌にピッタリ!

若く、色白、長身
細身の水色のワンピースをまとい
花ならヒヤシンス、それも水中花のヒヤシンス
いかにも涼しげ、優しげ

「はじめまして、少し待っててね!」と奥へ
和歌は「きっとお菓子を取りに・・・」とヒソヒソ

waka41.gif

透明なグラス、透き通った氷
冷茶やクッキー、涼しさを盆にのせ
ヒヤシンスは行ったり来たり
ひんやりした風が行ったり来たり
声楽をご専門とされ
この世のものとは思えないほど
透き通ったきれいな声

「さあ、召し上がれ」の一言は
風に揺れる風鈴の音

和歌は思わずすいこまれ
1つ取って口に入れようと
とその時

「まだイケマセン!」
ハッと手を引く和歌の手に優しく手を添え
「お祈りしてからです」と

銀ヤンマなら、ここぞとばかりに
手をピシャン!

色んな先生がいるもんだなあ~

見よう見まねで手を合わせ
目を閉じはしたものの
うっすら目を開け、先生の顔とクッキーを
かわりばんこに見ては
長い長いお祈りが
早く終わりますように、アーメン、だった

ごちそうさまは神様に
またおいしいクッキーを!アーメン、だった

1回目は食べてお祈りして終わった

ヒヤシンス先生はクリスチャン
方針はたったひとつ
ピアノが嫌いにならないこと

叱ることも怒ることもなく
初めて叱ったとき?
それもたった一度だけ?

自責の念にかられた先生は
寝る前に懺悔

「ああ、神よ!こんなにかわいい姉妹に
弱い私をお許しくださいますよう!アーメン」

もし仮に銀ヤンマがクリスチャンならば
寛大な神は、罪深き弱者に、幾度も幾度も免罪符を
許されるだから、また叱る、の繰り返し

ピアノが嫌いになって
先生が嫌いになって
無理強いすれば親まで嫌いになって
モーヤメタ!

家でのレッスン
「どうやって弾くの?」と尋ねられれば
もう喜んで、教えてあげるとばかりに弾きだした

「きれいねぇ、上手ねぇ」などと言おうものなら
もう嬉しくなって
さらに「疲れが取れて元気になるわ!」とで言えば
お母さんのためならばお安いごようだ!とばかりに
いつまでもいつまでも弾き続け
ついにお父さんの堪忍袋の緒が切れた

「うるさい、もうヤメロ!」に
和歌もまた
「うるさい、ダマレ!」

上手いとか下手ではなく
和歌のやる気こそ
私の明日の活力を約束してくれた


そればかりか
いじめがあった時
腹立ち紛れで相手を責め立てれば

「どうして人を許すことができない?」
頭が下がる思い

宗教心も芽生え
ピアノが好きになって
先生が好きになって
お友達が好きになって
おまけに、お母さんが大好きになって
お父さんが少し嫌いになった

習い始めて一年目
またまた7月、夏の真っ盛り
ヒヤシンスピアノ教室
初めての発表会
色黒、ボーイッシュ、Tシャツ、短パンの普段着

水を得た和歌は
水中花のヒヤシンス

先生が手塩にかけて育てはじめて丸1年

力強く、リズミカルに弾きだして
舞台の上で小さな花をパッと咲かせた

HINTS!

ヤレ!と命令されればイヤになる
お願いしてみてはどうでしょう

和歌とキャンプ

小学校5・6年生

1つ、2つ、3つ・・・9つ、10
小学校5・6年は自立の年齢
”つ”が取れる頃

夏休みはロングキャンプ
ほどよい親子の距離間
親子で離れる練習

学校集団から離れ
自然の中で本当の自分を振り返るチャンス

学校では人と競争
キャンプでは自分に挑戦
机上の知識を体験学習する場

キャンプ場は家庭での生活習慣の総ざらい
自分のことは自分でする

キャンプ場の一日は
朝日とともに始まり
夕日とともに終わる
作業や仕事が遊びだった

自分のやるべきことをやったら
思いきり遊ぶ
誰だい、宿題と一緒だなんて言ってる子は?

洗濯機もなければ炊飯器もない
掃除機もなく、あったとしても
電気がないから使えない

3時間歩かなければ
自動販売機もない
お金があっても使えない
お金は何の価値もない

何が一番大切で
何が必要で何が必要でないかがよく解かる

waka30.gif

一番大切なものは
火と月明かりと星明り
懐中電灯
そして健康

流した汗の分だけ喜びがあり
踏みしめた足跡の分だけ自信になる

10泊11日徒歩旅行 小5 上級キャンプ
「和歌とリヤカー」


元気と勇気をリュックに詰め
レッツゴー
2本の足でしっかり立って歩くんだ

炎天下、猛暑の中、どしゃぶりの雨の日も、風の日も
歩く、歩く、ただひたすら歩く
行けども、行けども、同じ景色
いつになったら景色が変わるのだろう

目に入るのは前方を歩く子の
リュックと帽子
なぜ歩くのか、足を止め考える暇もない

聞こえてくるあの歌
―――君の行く道は 果てしなく遠い
だのに なぜ 歯を喰いしばり
君は行くのか そんなにしてまで

運搬の手段は、2本の足と1台のリヤカー
寝るときは、テントか寝袋
野宿だった

荷物を山積みにしたリヤカーを
和歌は先頭を切って
全力でグングン引いた

waka31.gif

全身汗だく 拭いても 拭いても
したたり落ちる汗
首に巻いたタオルはぐっしょり
絞れば、ジャー!
暑さで汗がかわけば塩になる
顔がザラザラ
なめればしょっぱい

鉄工夫は
塩をなめなめ鉄を打つ
和歌は顔の塩をなめなめ
リヤカーを引く

オッ! 2本足の見かけぬ馬
すれ違った荷を引く馬車馬が
振り返ったほど
人であることを忘れさせるほど
4本足の馬車馬並みだった

引くほどに加速度は増し
大地をけって突き進む
2本足の競走馬

土ぼこりが舞い上がる
「和歌! 待ってー」に
どうにも止まらない、だった

上り坂はさすがにきつく
苦しければ苦しいほど
満面に笑みすら浮かべ
疲れた仲間を
グイグイと引っ張った

仲間にとっては
心に咲いた
デッカイひまわり

waka32.gif

道中の楽しみは2つ
ひんやりとした沢の水と
休憩地点の川遊び

素手で魚をつかむ
水は光り 魚はすべる
青空を枕にごろりと昼寝
充電は、短時間でOK

waka33.gif

次の地点を目指し
レッツGO!
回復力抜群
「快食、快眠、快便」だった

日を重ねるほどに
疲労をみせる仲間とは
対照的

和歌は
日を重ねるほどに
元気になった

――快食――
食料隊長 江崎和歌
献立は闇ナベ
薄暗がりで何でもかんでも
ぶち込んでグツグツと
しゃもじですくいあげお椀にもれば
何と、でっかいタワシが1つ

――快眠――
どしゃぶりの日は
テントの中の寝袋で
テントは雨がたまって垂れ下がる
下から持ち上げ水はけ作業
それをしないと
雨の重みでテントは崩れる

和歌は3人並んだ真ん中で
垂れ下がったテントのすき間
2cmの空間でスヤスヤと
両脇の仲間は
「アッ! 和歌が窒息する」と
寝るに寝られず
変わりばんこに水はけ作業を!


ア!和歌が消えた
目的地点に到達しないときは
ヘッドランプの灯りを頼りに
一列に並んで
夜間歩行

闇の中を歩くのは
危険と隣り合わせ
林道の脇はがけっぷち
自分の命は自分が守る
闇の中を 物も言わずに
ただただ ひたすらに歩き通す

突然 睡魔におそわれた
山中八甲田山
「ア! 和歌が寝ながら歩いてる」
ヘッドランプは
歩くたびにゆらゆらと揺れ
まるで催眠術

と、今度は
「ア! 和歌が消えた」
突然のことだった

全員で「エ! まさか!」
まるで神隠し

リーダーは号令をかけ点呼
確かにひとり足りない
江崎和歌がいなかった

全員で もと来た道を引き返そうと
「遠くで誰かの声がする…」
「もしかして和歌じゃない?」
耳を澄ませば
紛れもなく和歌の声

接近するほどに鮮明に
「和歌ちゃんはここよー、ここよー」と聞こえてきた
「良かった、生きていた。しかも元気だ」とリーダー

全員 いっせいに駆け出した
「和歌ちゃんはここだよ!」と
今度は足元でハッキリと聞こえてきた

懐中電灯で照らせば
なんと、マンホールの穴
寝ながら歩いたので
マンホールに落ちちゃった

仲間を見上げニッコリ
深さ2m近くの穴だった

運良くリュックから先に落ち
リュックがクッションとなり
その上に落ちた

リーダーは手を貸し
穴から引き上げた
不思議なことに
ケガひとつしていなかった

普通なら
泣くどころか声も出ず

和歌は
きっと迎えに来てくれるはずだと冷静に対処
「和歌ちゃんはここよー」と
大声を出し続けた

勇気と元気をリュックにつめ
今再びレッツGOだった

私はなぜ穴に落ちたか
キャンプに来たから
家で勉強だけをしていれば
穴には落ちなかった
でも、きっともっと深い落とし穴が…


小6 上級ファンタジー
キャンプ


山中たったひとりで
24時間過ごす
力だめしのキャンプ

持ち物は
寝袋、食料、懐中電灯

闇が迫ってくるほどに
大人ですら泣きたくなる

怖くなって
キャンプ場に戻ってくる子
大声で泣き出す子
人知れずそっと涙を流す子…

たいていは
怖くて不気味で
寝ずに朝を迎えるが

和歌は大の字になってぐうぐうと
暗くなるほど元気になって
24時間、丸一日を
思いっきり楽しんだ

昼は木の実を拾ってブローチ作り
ツタを切ってカゴ作り

ごろりと横になり
空を見れば
青空が広がって
山なのに海みたい

夕日に映し出され
浮かび上がるシルエットは影絵
揺れる樹木は歩く人影

waka34.gif

移りゆく空の色
青空は朱に染まり
さあ、幻燈会のはじまりだ

夢のファンタジー
眠くなるまで眺めよう

夕闇が迫ってくるにつれ
目と耳を澄ませば
見えないものが見え
聞こえないものが聞こえてくる

自然の命、心の声に耳を澄まそう
静まり返るほどに
山ほどの命の声が
見え、聞こえてくる

まずは懐中電灯の灯りに誘われ
たくさんの小さな虫が
遊びに来た

枯葉をガサゴソかきわける
けものの足音
タヌキかな? キツネかな? イタチかな?

こうなったら
オバケだって幽霊だって
わたしにとってはお客様

waka35.gif

バサバサと闇夜に羽ばたく鳥の音
寂しくなったらオカリナを吹き
さあ、山の仲間たち
わたしの歌をお聞き!

すると エ! まさか!
続いて虫がいっせいに鳴きだした
コロコロ リーリー
ギー チョンチョン

おまけに山のけものが
ケンケン コンコン
木の葉がワサワサ揺れだして
川が流れ歌いだし

山ほどのけものが
飛び出し、踊りだし
草、花、木が大揺れに揺れだして
さあ合唱祭だ!
山のお祭りだ!

山ウサギがピョンピョン
ア!蛇が立って踊ってる
今度は何が出てくるかな?

和歌は自然と仲良し
何も怖くもないし
寂しくもない

さあ、安心してお眠りなさい――と
こうこうと照らす月と星の心
母さんの子守唄が聞こえてきた

山に抱かれ
ゆったりと
夜空を見上げ

たったひとりで寝る
バラバラと星の降る音を聞きながら

一生のうちのたった一晩で
二周りも三周りも大きくなって
一生の勇気を保障

山あいから朝日が昇りはじめ
ヤッター!と叫ぶと

最後のファンタジー
一粒の朝つゆが
涙のようにキラリと光って落ちた

waka36.gif
するとファンタジーは
一瞬でかき消えた

人に言っても
誰も信じてはくれないだろう
おとぎ話の世界のようなことが
本当にあったんだよ

だからこそ、わたしは
自然の心 生命の歌を歌って
きっといつの日か
わたしの心の中に
あの日の仲間を呼び出そう、思い出そう

そしてみんなにも
見せてあげよう、聞かせてあげよう

シンガーソングライター 江崎和歌
HINTS!

シンガーソングライター江崎和歌を
育てたのは私ではない
自然と動物と時の流れと音楽だった


こんなテストがあったらいいなあ
6年 江崎和歌


何分で木に登れ
深い穴が掘れるか
何kgの荷物をかついで
何m走ることができるか

何分以内に火がおこせて テントが張れ
川でどれだけの魚を素手でつかめるか

山の中で何日くらい
自給自足できるか

これができる人は
一流大学に合格する


和歌とキャンプファイヤー

幼少期から何度キャンプファイヤーを体験したことだろう

火はただひたすら熱く
近よることもままならず

赤い光を放ち
不思議な音を立てて

すべてを焼き焦がし
すべてを灰にしてしまう

waka37.gif

昔話や神話のなかでは
火を味方につける者は
強い力の持ち主

和歌は炎に照らされた分だけ強くなった


思春期・反抗期

バレンタイン・チョコ

誰にあげようかな?
どの子にしようかな?
2/14 心ウキウキ バレンタインデー

バレンタインチョコ
もらって嬉しいのは
もらった子のお母さん

和歌はチョコレートを2つ買って
1つはその場で開けて食べ
もう1つはそっと我が家のポストに!

「ホレ! これ見てごらん」と兄、軍太
「アラ! 良かったわね」と
私にこっそりウインク

本当にあげたい子には
絶対あげない――だった

5/5 子供の日は
家の仕事を何でもやらせた
子供の日は、大人の日だった

母の日、学校帰りに
野原の花を摘んで
ハイ! お母さん
カーネーションなんか
欲しくもないし、嬉しくもなかった

性教育 小学校5・6年生

小学校高学年
フキノトウがふくらむ頃
男の子も、女の子も
各々に場所は異なるが
ふくらみを見せはじめ
保健体育の時間は
性教育がスタート

氾濫する性情報
頭でっかち
心と体のアンバランス

お月様はドーシテ丸いの?
お月様はドーシテ黄色いの?
突然 ドーシテ セックスしちゃいけないの?

HINTS!

金八先生ならきっと
スマン、ワカラン、教えてネ!君たち


思春期 小学校5・6年生

この頃何かが変なんだ
やることなすこと変なんだ
和歌 一体全体ドーシタノ?

我が家はワクワク動物ランド
犬が2匹、猫が10匹
とても優れた動物である夫を先頭に
それに続くは長男・軍太
計12匹

そこに不思議な生物がもう1匹登場
計13匹
人と動物の中間体
人でもなければ動物でもない
その生物は思春期の和歌だった

2匹の犬と10匹の猫は
ニャン 友 ワンダフル
和歌の恋の練習相手

ボーイッシュな和歌
犬を相手に
服従する練習
来い! 伏せ! 待て!
犬に教わることは多かった

大型犬相手に
見つめ合う練習
大きな図体に
落ち窪んだ小さな目

「ねぇ 私を見つめて」
感極まった大型犬
突然のしかかり 押し倒し
ぺロリと顔をなめチュッ!

waka27.gif

猫を相手に
共感、可愛くなる練習
「ねぇ 和歌!」に
「まぁ~ にゃ~にぃ~」

一日が動物に始まって動物で終わる
各々が、てんでバラバラ
とにかく騒々しい

そんな雑然とした部屋の片隅に
わずかばかりのきれいな場所を見つけ
不思議な植物が1本咲いていた
それが和歌

探ろうとすれば
脇を通りかかっただけで
パタリとフタを閉じる
食虫植物でもある

いったん閉じたフタは
気が向くまでは閉じきったまま
1日口を開かないこともザラ
口を開けば
「おこづかい下さい!」だった

学校から戻れば個室にたてこもり
個室は避難所、秘密基地

家族が寝静まった頃
リビングに現れ
テーブルの上をガサゴソと
真夜中の生態はヤドカリ

触れないでくれ
1人にしてくれ
でも1人は寂しい
聞こえてくる思春期のつぶやき
殻の中に閉じこもり 引きこもり

HINTS!

そんな時
ママは心のドアを全開放
「さあ、出てらっしゃい、いいものが
あるわよ!」

狭い三畳間はゴミだらけ
泥沼に生息するビーバー
歌手になる日を、将来のスターを
夢見るバク
ボーっと1人で考えごと

HINTS!

時間の無駄使いは
一服の精神安定剤

長電話、メール、お金の無駄使い
人は死ぬのになぜ勉強を?
悩みは尽きない

個室はカウンセリングルーム
一台の電話が何よりのカウンセラー

HINTS!

電話代の無駄使い
責める前に冷蔵庫でも開けてみよう
案外、無駄使いはどっちかな?

ダイエット、ダイエット
肥るも痩せるもさじ加減
自由自在のゴム風船

鏡の前に立つこと日に数十回
その度に「鏡よ鏡よ鏡さん
世界中で一番美しい人は誰?
それは江崎の和歌さんです!」と
お経のように唱えること日に数十回

ヘルスメーターに乗ること日に数十回
ヘルスメーターは消耗品
片足を乗せれば
まあ大変と風呂場へ

風呂場は個室
貸し切りサウナ
家族が風呂に入れない

そっとのぞけば
春の生ぬるい田んぼに
目と鼻だけ出して
カエルのように浮かんでる

waka28.gif

しんなりするほど写真に見入り
しっとりとした吐息が
湯気の中に立ちこめる

どうやら好きな子がいるらしい

好きな子1人いれば
ルンルン気分で登校
彼の胸めざし
ふくらむ思いの気球船
あいにく欠席
教室の前でしぼんじゃった

出しっぱなしのラブレターは
もらって驚くラブレター
誤字、脱字、金クギ流
これではまるで果たし状

気分の移り変わりは
朝と晩では大違い
グルグル廻るメリーゴーランド
浮き沈みはジェットコースター

HINTS!

巻き込まれず、さりげなく放っておく

ご機嫌よければクッキー作り
花形、星型、動物型

「失敗品は食べてよし」
ダイエット、作って眺めるだけのクッキーを
成功品まで次々に食べるのは兄・軍太

さあ、好きなだけお食べ
そしてどんどん豚におなり

「ねぇちょっとどいて
そこの豚
あんたがいると通れない 」

豚は到って
気立て良く
飼い慣らされた豚だった

毒づく時はドクダミかセンブリの花
静かで辛らつで激しい

それだけにダイナミックな自立を
予期してはいたものの…

反抗期 小学校5・6年生

親から離れ
自立しようとする和歌と
どう向き合おうか?

嵐の真っただ中
荒れ狂う高波に
のまれそうになりながら
一艘の舟に
母・子向かい合わせ

どうせ揺れ動くなら
デッカク揺れ動け!

嵐の後の静けさ
静かな凪の訪れ
過ぎてみれば
淋しすぎるほど

HINTS!

この先が親の自立です
イヤッ!というほど
子供の存在感を味わおう!

自立のための儀式
さあ! 反抗期の幕開けだ!

不思議な愛すべき生き物
人と動物の中間体
男の子と女の子の中間体
ムカツイテ、イカツイテ
やっぱり私は男の子でいたかった

ある日突然ふってわいた罵声
「うるせぇ、テメェー、クソ! 豚! 死んじまえ!」

目を閉じれば
あの可愛い日々が
走馬灯のようによみがえる

お花畑でかくれんぼ
お母さーん、どーこ?
突然泣き出し
あわてて草陰から飛び出し
抱きしめた――あの日のことを

ボーイッシュを卒業
マシュマロのようにふくらみ
主人も可愛くなったと
言いはじめた矢先
なんとひどいことを…

それから数日間
お母さん、あれやって、これやって
ねえったら、ねぇ

何を話しかけられても知らんぷり
豚はもう、死んでしまいました
何1つとして応じなかった

私は寝ころんで死んだふり
ねえったら、ねぇ、ごめんなさい
もう言わない――と
強引に体をぶつけ甘えてきた
まだまだ甘えたい和歌だった

勝手に部屋に入れば
デテイケ! にはじまって
弾丸、雨アラレの銃撃戦
ムカツイテ、イカツイテ
マジで切れて
クソババーで締める

日記の1ページ目は
へのへのもへじに赤い舌
人の物、見るヤツはバカ
アッカンベーだった

見るも探るも知られるのもイヤ!
「今日は何時に帰るの?」と尋ねれば
「じゃあ今日は帰らない」と家出の練習

親を責めたて批判する
あげくは比較
「あそこのお母さん美人ねえ」に
「だからあの子も可愛いのねえ」と

小言を言えば
「また言ってらぁー、テープレコーダー」
これをヒントに
小言をテープに吹き込んで
枕元でスイッチオン
これがほんとのテープレコーダーだった

口答えは矢のごとし
手出ししようなら針千本
怒ればちょうちんフグ

さあ怒れ怒れ
怒って怒ってふくらんで
破裂すれば自分が困るだけ

HINTS!
脇から眺めてみれば
なんともおもしろく退屈しない
愛くるしい生物
距離を置いて楽しもう

子供にとって
生きとし生けるものすべての
関わりあい、ふれあいを大切に
生活の中で
喜怒哀楽を思う存分
分かち合うことが
親から子への遺言である

HINTS!

反抗期の効用
逆手逆手と裏をかく

体を壊すから、そんなに勉強するんじゃない!
塾代がもったいないから、行くんじゃない!
遅刻してもいいから朝食はゆっくりととるのよ!


手術

好きな子1人いれば
休まないで学校へ
そんなことでもなければ
勉強なんてつまんない

一度でいい
好きな子に微笑みかけ
目と目で挨拶してみたい

が、あいにく
軽い斜視だった

なんともなまめかしい
小さなマリリンモンロー
どこを見てるかわからない

番茶も出花、お年頃
このままいけば
居並ぶ王子のハートを
いっせいにとまどわせ

私が本当に好きな王子は
誰でしょう?ウフフフフ…

人目が気になりだす思春期
自分が人にどう見えるか?
人が自分をどう見るか?

気になりだしたら
手術するしかない
手術も入院も初めて
不安どころか楽しみだった

お花を持ってお見舞いに
小児病棟から聞こえてくる
和歌の歌

病室をのぞけば
和歌を囲んで
コーラスの輪が
小さなナース
小さな天使
今、私にできることは
病んでいる子供たちに
歌を歌ってなぐさめること

――― 私たちは、この世で
大きいことはできません
「小さなことを、大きな愛でするだけです」―――
マザーテレサ

医師も看護婦さんも
小さなマザーテレサ・和歌ちゃんに
ありがとうだった

脊椎分離

キャンプで穴に落ちた
念のためレントゲンを
私は驚いた
医師はもっと驚いた

脊椎の一部が分離している
先天的なものか、後天的なものか
わからない、と
医師は私にだけそっと伝えた

「え! 徒歩キャンプ?
歩けることが奇跡に近い、不思議です」と医師
「手術をするか、スポーツで鍛えるか
手段は2つしかありません」と

この言葉に
落胆するどころか
思わずニッコリ

なにせ、夏は海や川で泳ぎまくり
イルカか魚同然

冬はマイナス25度の雪の上
テントを張って
スキー、スケートと
すべりまくったホッキョクグマ

年間スポーツの連続
原野の野生動物さながら
四季折々、遊びまくった

全身筋肉
筋肉の束は
分離した脊椎を
カッチリと固めコルセット

これまで通り
四季折々
遊んでいればそれで良い
持続と継続は
力なりだった

人生、何が良くて
何が悪いかわからない

太い声
スポーツで鍛え上げた
体は楽器

将来のスター
歌手になる日を
夢見るバクにとって

HINTS!

つまずきは心と体の栄養

スタンバイ!
斜視も脊椎分離も
ハンディは不可欠だった

ピアノ発表会
学芸発表会
キャンプ
斜視の回復――と

1つ1つが自信となって
中学校の校門
めざしてまっしぐら

思春期和歌は
サナギから見事なアゲハに
――でも、ちょっとまだら…

waka29.gif

中学生

和歌、中学生
はじめ子供それから大人


女の子から女の人へ
心と体が同時に目覚め
心と体のアンバランス

生まれたときの身長が50cm
それが今158cm
お母さんより8cmも大きくなった

体重3000gが
?kgになって

泳ぐ、滑る、走る、跳ぶ
お母さんにできないことが
山ほどできて…

それだけでお母さんはもう十分
成績なんてどうでもいい

合唱際でピアノ演奏
水泳大会で代表選手
運動会、文化祭と
行事のたびに
心も体もひと際グンと大きくなって

たずさわる親も教師も
やりがいがありすぎるほど
中学3年間の成長は
めざましかった

人生の春
とっても良いことが起こりそうな
そこに受験が入り込み
とっても悪いことも起こりそう…
成績、異性、将来と
何かと気になる3つ

成績なんて気にならない
出しっぱなしの答案用紙
10点にもう1つ○をつけ
ホレ! これ見ろと言わんばかり

動物なら発情期
植物なら開花期
気になるのは
やっぱり異性

waka24.gif

触れてみたい
さわってみたい
動物園のオリの中
発情期のメスゴリラ

HINTS!

接近しすぎず
離れすぎず
ほどよい距離感
じっくり観察楽しもう

部屋を閉めきって長電話
目と目があって
キャー ワイワイ

恋愛ゲームはテストと反対
答がわかったらつまんない

三畳間の壁に張りめぐらした
アイドルのポスターを相手に
恋愛ごっこ
恋人は堂本光一

ベッドの両脇に堂本光一
寝れば天井に堂本光一
布団を干そうと布団を剥げば
布団の重さと
愛の重圧に耐えかね
堂本光一がペッチャンコ

愛の営みの場は
たった一畳のベッドの上

熱い視線を全身に浴び
羞恥心で布団の上で身悶え

日ごと夜ごと
熱い愛の語らいが…
和「ただいま!」
堂「君の帰りを待ってたよ!」
和「どうしてそんなに見つめるの?」
堂「初めて見たときから、君が好き!」
和「ねえお願い、私を抱いて!」

と、ポスターに寄りかかれば
画びょうがとれ
突然、堂本光一が
おっかぶさってきた

そんなに強く抱かないで
ねえ、どいてったら、どいて

練習の甲斐あって
恋愛ごっこを卒業
ある日、どうもこうもない
電信柱のようなボーイフレンドを引き連れ
いよいよ生身の人間を…

相手にされなくなった
アイドルのポスターは
メガネをかけ
口ひげを生やし
落書きされ

おまけに
鼻の穴には
画びょうが2つ

waka25.gif

元通りのただの紙
女子高生にからかわれ
まあ なんて可哀想、で終わった

お母さんだって
やってるクセに
親の失敗が
何よりのご馳走

保護者会のプリント提出
期日も過ぎて
出し忘れ

プリントがない、ごめんなさい
鼻かんで捨てちゃった
紙飛行機にして飛ばしちゃった

洗濯のし忘れ
靴下をドライヤーで乾かせば
鯉のぼりの吹き流し
焼け焦げ、穴があき
焼き魚の出来上がり

私が悪うございました
下を向いてアッカンべー

HINTS!

あやまりさえすれば上機嫌

何を頼んでも
和「今、勉強中」
母「まあ、期末は楽しみね」

母「ねえ、ちょっと」と声をかければ
和「うるさい! あっちへ行け!」
母「あら、そー」と
ケーキを見せつけ、さっと消える

HINTS!

何かと先回り
言葉巧みに
投げ返す
楽しいったらありゃしない

反抗期の総仕上げ
だめと言われるほどに
やりたくなる

時にペットに八つ当たり
ペットは部屋の隅に
ひとかたまり

HINTS!

あら、そんなに寂しいの
反抗するほどに、されるほどに
嬉しくなる親

親の一言で浮き沈み
いたって単純 気立てよく

ほめる材料は
部屋中に散らばって
ゴミと一緒
ほめさえすれば上機嫌

朝から晩まで
斜にかまえた
自立と依存の反省ザル

クソババーと怒鳴ってはみたが
ババーのケツは
でっかいクッション
何を言っても響かなかった

―部活― 茶道部

古式ゆかしく
茶をたしなむ

琴の音が響く
石庭をしずしずと

締めつける帯と規則は大嫌い
着物は盆踊りのとき
ゆかたを着るくらい

上は和風、下は洋風 サンダル履き
犬の散歩でもすれば
うろつく西郷さんの銅像

スポーツで鍛え上げたいかり肩
和歌には着物は似合わない

「あなたには茶道は不向きネ!」と言えば
「サー、ドウでしょう?」の茶道部だった

おまけにプールのカルキで脱色
こげ茶の髪はちょっとクルクル
長い髪は2つに結ばなくてはダメ!
規則とルールの中学生

「パーマをかけたのでは」と尋ねられ
母「あの先生、私の髪は天然で
主人もまた天然で
息子もまた天然で
主人の母も天然で
主人の父も天然で
ヒイお婆さんも天然で
そのまたヒイお婆さんも…
ヒヒヒヒヒヒィ…」だった

どうして茶道部を?
と尋ねれば
「お菓子が食べられるから」と

「お菓子なら家にもあるでしょう」
と言えば
「タダで食べられるから…」と

そういえば…
和歌は和菓子のダンゴが好きだ

2歳のころ
和歌の手を引き
お地蔵参り

お地蔵様の前には
長いおはしとダンゴが3つ

どうか和歌が
良い子でありますように
和歌と並んで
手を合わせ、目を閉じた

目を開けてふと見れば
ダンゴが3つ消えていた

お地蔵様は
「私が食べました」と
ニコニコとウィンク

あの日の光景を
思い出す

そして それから10年
お地蔵様も
まばゆさに目を細めるほど

あの日の少女は
中学生

中学生
理想の異性は?
男子は行動力
女子は温かさと思いやり

行動派
おダンゴ泥棒だった和歌
女らしさの演出には
茶道部はピッタリだった

もう2度とダンゴが消えることはない
ダンゴを前にスタスタと立ち去る少女

waka26.gif

見送るお地蔵様も
ススキの陰で淋しそうだった。

中学校とは?

女の子は憧れのセーラー服
男の子は詰め襟の学生服

教科は担任制
複数の小学校の集合体
色んな先生と生徒の博物館

良い先生と悪い先生が
ごちゃまぜだから
退屈しない
おもしろい

人間関係は
深まって 広がって
人間関係を学習する場

身体も大きくなって
大人と一緒 一人前
いじめも複雑 多様化
いよいよ社会勉強の
たたき台となる

HINTS!

いじめ
親は無言の行
不安との戦い
親は子供の応援団
不安でなく ファンになろう


HINTS!

先生も親も生徒も
「大変だねえ」と
声をかけるだけで楽になる

終わりの会は始まりの会
帰れば塾が待っている

学校に行けば
うるさい先生
家に帰れば
うるさいお母さん

いったいどこに行きゃいいの?
中学生

学校も塾も
ガンバレ ガンバレ
毎日毎日が運動会

HINTS!

塾が奪うもの
家族の対話、規則正しい食生活
行き帰り 電車、コンビニ
要らざる性情報

起立、規律、礼!
中学校は好きだけど
規則とルールがうるさいのがイヤ

授業中は静かに
寝るな、歩くな、しゃべるな
それさえしなければ
勉強しなくても大丈夫

授業中は
校舎全体
静まりかえった
規則が詰まったただの箱

音楽の時間に楽しめない
オタマジャクシも中学生
カエルになって
音楽室の窓から跳んでった

和歌と教科

中学校の勉強は大変だと
2才年上の兄から
先がけ耳情報
入ってみれば
兄は下の下

成績
上を見ればきりがない
下を見てもきりがない
私は真ん中、ただの人

図工は美術となって
先生が見本に自画像を描けば
まるで自画象だった

数学の時間に
突然、服装の注意
脱線授業
道徳の時間

私と彼は
相思相愛の相似形
だからいつまでたっても平行線

ルックスの計算
(身長-100)×0.9=不満だらけ

新しい科目に英語
一番身近な英会話が
I love you

英単語
目と耳と手と口を使って
ひたすら覚える訓練訓練

理科
ニュートンの法則
熟した柿は木から落ちる

行き帰りの塾友達
塾した仲間もまた落ちる

保健体育
性教育はいっそう高度に

命の尊さ、重さ
体重の重い人は
命が尊く重い人

男はみんなオオカミよ
聞いたオオカミが
気を悪くする

クラスの半分のオオカミは
子供っぽくてオッチョコチョイ
中学生は女性上位だった

受験

――三者面談――

「三者面談したからって
合格するわけじゃなし
面倒くさいわネ!」とお母さん

教師、親、子
志望校を絞る
最後の面談

教室の行き帰り
行きはルンルン
帰りは険悪

教師の机の上には
合計内申点の資料
見ることができるのは
教師だけ

「私、いくつありますか?」
和歌の問いかけに
教師はノートを見せないように
資料をさっとめくって調べようと…

その瞬間
チラ!とのぞき見

教師「29ポイントです」
和歌「アラ!そうでしたか」とニタリ
すかさず
「29ポイントの都立はどこかありますか?」

教師は尋ねられるままに
可能の高校を
指で追って探しはじめ…
それを横目で確認した和歌
驚いたことに
教師の脇にあったノートを
堂々とめくった!

そして
「うん、なるほど」と腕組みすると
ドッシリと椅子におさまった

自分のことは
自分で調べ
自分で決める

学校の教育目標そのもの
――が、しかし
まるでカンニング

親からはすべて見て取れたこの光景
教師はまったくお気づきにならず
前代未聞の三者面談だった

受験期の教師は、
受けたい所を受けさせたい--が
どこかに入ってもらいたい
生徒のために
1度は矛盾したはざまに。。。

教師「もし一般受験で落ちたら?」
和歌「2次募集を受ければいい」
教「それで落ちたら?」
和「3次募集を受ければいい」

教師「私立がダメだったら?」
和歌「都立を受ければいい」
教「それで落ちたら?」
和「都立2次を受ければいい」

教「それにしても受験料がモッタイナイワネ!」
和「すべて私のお小遣いです!」

親からもらったお小遣いは
合格のための軍資金

教「そこが落ちたら?」
和「中卒でも受けられる音楽の専門学校を
受けます!」

教「それはどこに?」
和「渋谷にあるバンタンです
高校を卒業したら、受けて見たいと思います 」

教「高校生活の3年間がモッタイナイヨ!」
和「好きなことが早くやれて3年トクします」

教「そこが落ちたら?」
和「そこを何回も受けてみます」

三者面談ならぬ
先生と生徒の
二者面談だった

帰り道
「ちゃんと31ポイントあるさネ! 」
都立換算内申点 だった

――志望校の選択――

男女共学、水泳部が盛ん、制服がカワイイ
この3つが決め手
絶対ココにしたよ!
K学園


桜吹雪く新しい季節の向こう側
ホラ!
水泳部のたくましくカッコイイ先輩が
カワイイ制服をまとったあなたを見つめ
鏡の奥からやってくる

――和歌の勉強法――

この平和な時代に
人を蹴落としてまで
戦中さながら
受験戦争
塾戦争

和歌は
自宅学習
自主学習

自発的、合理的
独自のスタイルを持つ
一風変わった勉強法

どこでも寝られて
どこでも勉強

タダイマ!と帰れば
仮眠すること1~2時間
睡眠時間は3~4時間
ナポレオン並み

夜型学習
1人じゃ寂しい
ネコを閉じ込め
明け方2時3時まで

ネコもお受験
学習院初等部くらいに

犬も犬小屋の前に机を出し
レッスン ワン!

waka21.gif

冬場のネコはホットカーペット
一匹で足りなきゃ二匹
二匹で足りなきゃ三匹

目覚まし時計は
1つでダメなら2つ
2つでダメなら3つ

それでも起きないときは
相性の悪いネコを
二、三匹投げ込んだ

スカートのしわを手で伸ばし
朝食もそっちのけ

念を押すこと
日に数十回
行ってまいります K学園
ただ今帰りました K学園

「もしも…」と言いかけたら
「落ちるわけないでしょ!!」と
炊飯器をポーンと蹴り上げた

言い出したら聞かず
戻ることを知らない
機関車ワカエモン

どんどん怒らせるも
逆なでするも方法
怒るだけ怒れば
引くに引けず
あとは合格するしかない

トイレは個室
暗記するまで出てこない
風呂場も個室
桶に腰かけ
曇りガラスに
指でなぞった英単語

ステレオは子守唄
睡眠学習
夢の中でも勉強

人にどう思われようと
どう見られようと

目的達成のためには
なりふり構わず
手段も選ばず

塾代がモッタイナイ
通う時間がモッタイナイ

暗記済みのプリントは
あっちにポイ! こっちにポイ!

部屋中ゴミ箱
紙くずに埋もれ
ゴミ姫様は
合格の日を夢に見て
オホホホホ!
幸せいっぱい ゴミいっぱい

勉強中
脇を通りかかった父親が何気なく
「勉強してるか?」と

そのとたん
「これ見れば分かるでしょ?」
やにわにゴミ箱をさかさまに
出てきたのは
暗記済みの紙くずの山

「元気があって良い!」だった

――ああ、受験生――

隣の芝生は緑
人のうわさが何よりのご馳走

ストレスだらけの受験生
うわさもいじめも
ストレス発散
手段のひとつ

対象とされた人は
誰かの役には立っている

――が、しかし
同じ受験生
さぞかし辛く悲しかろう

人の悪口を聞くのは好きだけど
悪口を言うのはイヤ
よくよく耳を澄ませば
私の悪口

好きな男の子に
初めて肩を抱かれ
なぐさめられて
ラブラブ気分…

いじめてくれてありがとう、だった

1人じゃできない
みんなでやれば
おもしろい

いじめの集団
大部屋グループ

私の部屋は三畳間
心のスペースも三畳間

親よりも
何でも話せる
心の仲間が
1人いればよい

受験勉強中は
成績の良い子とカワイイ子は
シャットアウト エアカーテン
見て見ないフリ

模擬テスト、失敗もバネ
良かったり悪かったり
らせん階段を小走りに駆け上がる

ライバル登場
越されてなるものか

それをバネに
好きな子追いかけ
ハイジャンプ

3つ向こうの山さえ飛び越え
東大だって合格圏

受験期の不安解消法は
長電話
聞かれて困る電話は
風呂場、トイレと持ち歩く

受験期は
人生の句読点
人生の途中下車

気分転換に
漫画を読むのも勉強
テレビを見るのも勉強
音楽を聞くのも勉強
ピアノを弾くのも勉強

人は勉強するために
勉強をする

自然の中で
体を使って
遊ぶだけ遊んだ

受験勉強は
頭を使って遊ぶ
中学時代の最後の遊び

点取りゲーム=集中力と体力勝負
「ハイ! 待ってました、私の出番」だった

なぜ受験勉強をするか?
教師はアンケート

和歌の答えは
将来のためにではなく
今をイキイキと生きる
今の自分のために

「するっきゃない、やるっきゃない!」
だった

――受験生と家族――

A子の家族は
全員協力体制
見たいテレビも見ず
腫れ物に触るよう

冷暖房完備、冷蔵庫つき
まるでホテルか病院の個室

ドアには
合格祈願の御札が一枚

家庭教師とマンツーマン
そして塾
何1つとして不満がなく
不満のないのが不満で
イライラ ピリピリ

100点でないと
気が済まず
-1点のために
消しゴム1個使う潔癖症

家から一歩も出ず
外へ出れば対人恐怖症

夜も眠れず
不眠症

冷蔵庫と机を
行ったりきたり
拒食症と過食症が
変わりばんこ

色んな症状が出そろった

生まれた時
未熟児だったA子は
今、過塾児

月曜 ピアノ
火曜 塾
水曜 バレエ
木曜 塾
金曜 英会話
土曜 ――病院!

夜9時も回れば
お母さんは召使い
お盆の上に
紅茶とケーキを載せ
しずしずと

午前1時も回れば
夜食の牛丼

一方、和歌のお母さんは
子猫がミャーと鳴いただけで
ミルクを出すのに

呼べど叫べど
紅茶どころか
水1杯出てきやしない…

マジで切れて
「牛丼!」と叫んだら

お盆の上に吉野家の牛丼が!
レシートにメモ
――不合格の場合はお代をいただきます

A子にとっては
気づかわれ
尽くされるほどに
プレッシャー

その事に
家族の誰もが気付かない

和歌の家族は
受験生を気づかい
リラックスさせようと

親みずから
率先してリラックス

勉強している脇で
父はテレビを見ながら
ビール飲んで
目がドロン

母は音楽聴きながら
スコッチ飲んで
目がトロン

言うこと やること なすこと
すべてデタラメ

酔いが過ぎれば
夫婦喧嘩

挙げ句は
もし私立が落ちたら
盛大に不合格パーティーを!

人が受けようとしている
その脇でする話は
落ちた時の話だけ

受験期の我が家は
本当は優しい
シャイな
てんでバラバラ
ほったらかしの
核家族

受かろうが落ちようが関係ない

気楽なもんだよ
受験生!

―――受験期突入――

受験生にとって
厳しく、辛い季節の到来

入学式
桜吹雪を前にして
過酷なまでに
雪が降る

白い雪は合格
黒い雪は不合格

でもなぜか
我が家の屋根に降る雪は
黒い雪
降りしきり 降り積もる

ア! 和歌!
屋根から雪が落ちた!

縁起が悪い!
言うなと言ったでしょう!

滑ってもいけない
転んでもいけない
何を言っても怒られる

滑って転んで不合格
骨折したら
死んでお詫びするしかない

いけないのは私じゃない
いけないのは氷だよ!

とはいっても
受験期の和歌は
手がかからず
何かと親孝行者

受験が目前に迫った
この大切な時期に
親がする子不幸

「受験生って見てるだけで疲れたわ」
Do your best!
と、一言残し
さっさと入院
そして手術

「やあ、お母さん元気かい?」
「合格したよ」
その日を夢に見て…

――1次試験――

-第1次試験当日-
「お母さん、東大に合格したよ!」
「そんなバカな!」で
目が覚めた

前日まで降り続いた
黒い雪も止み
雲一つない晴天
きっとお母さんの
頑晴れ!だ

燃料にオニギリ二つ
積み込んで
犬やネコに見送られ
機関車ワカエモンは
「お母さん合格したよ!」を
届けたくて
受験戦争
戦地に向かってシュッポッポ

合格するために
必要な分だけ
点を取り
解からない所は
小さな親切
不合格も
人助け!

テスト開始のチャイムが鳴り
一斉静かに
耳を澄ませば
ハラハラドキドキ
心臓の鼓動が
教室中に木霊する

ここ1、2年間の膨大な時間が
数時間、たった数枚の
ペーパーテストで
運命左右の分岐点に
トライするチャンス!

宇宙の法則からすれば
まばたきの瞬間
点にもならない

受験科目は
英語と国語と
面接試験

隣は何をする人ぞ
チラチラカンニング
同じするなら
反対隣にした方がいい

テストプリント一目見て簡単そう
良く良く読んだら難しそう
やるだけやって
残りの時間は
何して過ごそう

-国語-
漢文は、カンで
埋めるだけ埋めた

古文は自信があった
私の名前は
江崎和歌!なんだ

現代文-出題は狭き門
作者も解からず
読んだこともなく
まさに「狭き門」

-英語-
単語は得意
丸暗記、丸かじりの英ダンゴ

英作文は苦手
日本語なのに
問題の意味が解からない

長文読解
単語一つ一つは読めるが
途中からは
単語の行列、英ダンゴ!

コンマコンマの連続で
どこで切っても、金太郎アメ
これだけは絶対
食べてはイケナイ!

You must not eat!!
不合格まんじゅう

-面接-
本校志望の動機は?
と聞かれ、水泳部が盛んだから・・・
将来の夢は?
と聞かれ、歌手と答えた
実技があったらいいなあ

1次試験終了
人生、山あり谷あり
一抹の不安をかかえ
自宅へと

家にもどり答え合わせ
合格点スレスレ!
後は採点ミスを
待つばかり

-不吉な夢-
合格発表前夜
不思議な夢を見た

病院にいるはずの母が
なんと寝間着のまま
頭には白い三角巾

おまけに手には懐中電燈
暗闇の中
掲示板を隅から隅まで
照らして廻り

アレ!どこにも番号がない
なんと、母は
ガビョウをはずし、紙をめくり

ハテナ?
もしや掲示板の裏にでも
裏にも廻って
ウラメシヤー
何ともうらみがましい表情で
ボー然と立ち尽くす
そんな不吉な夢を見た

waka22.gif

-1次合格発表-
ヤッター、3mも飛び上がる
体育系

つま先立って
必死で名前を探す
検索系親子

母子で抱きつく
メロドラマ系

名前があれば
泣き叫ぶ
激情系

なければないでくるりと背を向け
立ち去る、プライド系

掲示板の前に立ち
写真を撮る
デジカメ・プリクラ系親子

合格発表
どうして、親と一緒に
見るのだろう

合格発表は
当たるも当たらぬも
私にとっては
宝クジと一緒

受験は自分の仕事
合否の責任は、自分に有り

掲示板の前は
人生ドラマ
不合格
1次試験のドラマの
幕は下りた

母は誰よりも先に
合格発表を見に
以心伝心の
正夢だった
2次試験で
ヤッター!とは反対
ヨシ!ヤルゾ

A子の学校の名前が
新聞に載った
嬉しくなって私も
新聞に乗った

タイマーつき
調整ランプ
回転イス
そして
冷蔵庫つき

やっとデラックスな
机と個室から解放

でもまだ大学受験
家庭教師と
予備校が待っている

体の弱いA子が
マラソンランナー
またふたたび長期マラソンの
スタートに立った

-1次試験結果報告-
父に落ちたよ!と云えば
「北海道トンネルの落盤事故の
振動で落ちたんだろう…」と

1次合格発表当日
よりにもよって
トンネル落盤事故
テレビで報道

受かろうが落ちようが
関係ない
命が大切
命があればそれでいい

帰りの電車賃だけ残し
阪神大震災に
街頭募金
全部寄付
これでもうサッパリ

自分の事情+親の事情=惨状
にならなくて良かった

「母に落ちたよ!」と言えば
「アラ!良かったわねぇ
2次も落ちたら
好きな音楽をやれる
バンタンを受ければ
いくつもいくつも楽しみがあって
いいわねぇ~」

母の枕元の花ビンにバラの花
私の心もいっぺんにバラ色!

waka23.gif

なんてやさしくいいかげんな
お母さん!

-合格発表当日の夜-
不合格祝いの膳を
たっぷり食べ
寝る前に天井を見つめ
瞑想にふけり独り言

試験当日は
なんとかならーねと悠然
試験が終ってガク然
だから落ちて当然
不合格と知ってから人の手前平然
キャンプで穴に落ちた
試験では穴場をねらって
やっぱり落ちた
ハスにかまえた反省ザルは
ここに在っても自然体

受験は勝ち負け、運動会じゃない
人生に負けたのでもない

ただ落ちただけのこと
問題は解かったけど
答えが解からなかっただけのこと

合格発表があるなら
不合格発表だってある

人生は長距離マラソン
マラソンランナー
2次試験
自分で自分にもう一度
タスキを渡すだけ!

-2次試験-
1次試験がたたき台
2次試験はのびのびと
鼻歌混じりでスラスラと-

-2次合格発表-
掲示板の真中に
194番 -うまく194(いくよ)-
受験番号が良かった

喜びの裏に辛さあり
辛さの裏に喜びあり

合格と不合格
二つの体験ができ
人の心に共感
心の栄養になった

お父さんに「合格したよ!」
と言えば
「江崎和歌が他にも居なかったか?」

「まぐれ、桜の狂い咲き
しかも満開
散らないうちに
早くお母さんに報告しなさい!」
相変わらずビールを飲んで
目がドロン!

ああ!
我子の合格を
誇らしげに語る
教育ママがうらやましい

「お母さん合格したよ!」
と言えば
点滴でまどろんだ
トロンとした目を
うっすら開け

「またそんなウソを!」と
何てはりあいのないお母さん!

高校生

――高校生とは?――

まるでサナギから蝶に
高校生(15~18歳)人となる
人生はじめての
脱皮の時がきた

waka15.gif

規則とルール
学校を変えるより
自分を変えよう

自己変革のラストチャンス
自分らしさ探しの
旅がはじまった

鏡の前に立つと
いろんな素顔の
自分が見えてきた

これを可能性と
いうのかな?

自分らしさを探す旅
ボーイフレンド探しで
ちょっと寄り道

赤信号、みんなで渡れば恐くない
私はひとりでも
気をつけて渡るから大丈夫!

ドーシテ、みんな一緒じゃないと
イケナイの?

他の誰でもない
江崎和歌は
私なんだ!

――入学式――

合格祝いと
退院祝いと
母の手術のおかげで
めでたいことが
2つもあって

江崎和歌!
名前を呼ばれ
合格を実感!

桜吹雪の中
校門をくぐる

waka16.gif

校門は合格のシンボル
門の高さはいろいろあって
狭き門、広き門

表の門は、とっても明るく
裏の門は、ちょっと暗い

三通りの制服をまとった
あこがれの
女子高生

部屋中ゴミだらけの
黒雪姫は
敷居をまたぐと
白雪姫に変身

いってらっしゃいませ、
お姫さま
あなたの選択は
正しかった

おかえりなさいませ、
お姫さま
私が悪うございました
下を向いて
アッカンベー

―― 1年生 ――

この1年生初日
ワンポイント自己紹介
素敵な出会いをつくろう!と

女子生徒と先生が恋をして
先生は男子生徒の恋敵

1年生はみんな良い子
せめてものオシャレに
キーホルダー
カバンにスヌーピー
走るとジャラジャラ

思春期、反抗期
台風一過も無事通過

ルーズソックスにピアス
次のモンスーンがやってきた

友達や恋人に会うために
お弁当と山ほどの教科書を詰め
カバンは重たいが
私は力持ち
頭に詰めるよりは楽

――授 業――

始業と終業と休憩
この3つが主流となって
始業と同時に
製造ラインが廻りはじめ

大学受験生の
大量生産マニュアルを前に
行く手、管理化社会
訓練の場
忍耐力を培った

授業はマンネリズムで退屈で
睡眠学習
海底で居眠りする
深海魚

休み時間に
生き返り
ベルが鳴れば
一斉静かに

学校生活
最後の時間
部活で
一斉に息吹き返す

好きな子が
いればいたで気になり
勉強の邪魔
いなけりゃいないで
勉強どころじゃなくなった

6時限目
「問題が解けた人から帰ってよし!」

校庭の真ん中で
2人仲良く並んで
星を見ながら問題を解く
先生は徹夜で見張り
こんな授業があったらいいなあ~

――ホームルーム――

子供の頃見た空は
限りなく透明に近いブルー

High School
通学途上に見た空は
限りなく不透明に近いグレー
“灰スクール”

どこの高校もタバコの問題
職員室から灰皿が消え
生徒のおかげで
先生が健康になって

タバコの問題が
なくなると
ガムの問題になって

健康ポスターは
鼻の穴にガムが詰めてあって
ガビョウでなく
ガムで張ってあった

遅刻0(ゼロ)をめざして
頑張ろう!
その日に限って、先生が遅刻!

それどころか
クラスの1/3が遅刻
罰として
校庭のゴミ掃除

あっという間に
校庭がきれいになって
ゴミが足りなくなった

遅刻、早退、欠席は
体の具合よりも
成績大丈夫!

私は赤点だらけでも
遅刻、早退、欠席0(ゼロ)

教師はホームルームで
勇気ある江崎和歌さんを
見習いなさい!と
ほめて良いやらやら、悪いやら

おまけに誰もが
できることではない

欲しかった
ギターを手に入れるために
雨の日も風の日も
定期代を浮かせての
こづかい稼ぎ

やりたいことがあれば
やるべきことだってある

往復1時間かけて
徒歩通学

部活は水泳部
先輩の心の海に飛び込もう
体力作りに役立った

waka17.gif

――1年生、はじめてのテスト――

親には見せたくない
?はメールと成績表

親展と書いてあったのに
父は親宛と勘違い

やぶって見れば
全教科の2/3が赤点
父は「ビールがまずくなる!」と目も真っ赤

「今度の期末で頑張ればイイジャン!」
父も母もお人よし
「それもそうね」で終った

期末の目標
英 90、 現国 60、 古文 95
バスト、  ウエスト、  ヒップ

理想的なナイスバディを目指し
バラエティ番組の見過ぎで
目の前が明るく
テストが終ったら
目の前が真っ暗に

テスト前日に
浅漬けのキュウリを
食べてみたが・・・
ダメだった

期末は
ナント、全教科赤点!

追試に追試にまた追試
人の4数倍迷惑をかけ
先生への暑中見舞いに
しょっちゅうお見舞い申し上げますと
赤ペンで書いて出した

「それにしても成績が悪すぎる」
「どうしてだろう?」と
真剣に考えた時
音楽に才能があることに気がついた

HINTS!

赤点はやりたいことへ向かうステップ

私は良い脳ミソがチョッピリ
音楽、本当にやりたいことだけに
使うために脳ミソを守り

卒業するのに
必要な分だけ点をとり
日々、感性と歯を磨く

――三者面談――

「-ご子息さま・・・誠にうれうべく
○月○日に・・・ご来校を-」
赤点の呼び出し状だった

ナントは母は
とりわけ真っ赤なコートをはおって
学校へ出向き

「こう赤点が多くちゃあ~
ですから先生
赤いコートを着てまいりました」-と

waka18.gif

「それともダイエットのしすぎでしょうか?」
「そんな~」
「脳ミソは蛋白質でできてます」

何かと的はずれなことばかりいって
揚句は
「この子は孝行者で
入院中は家事全般・・・
勉強どころじゃございません」

「ハァー和歌さんで
助かりましたねぇー」
孝行者の話で終わった。

帰りの道すがら
「ホラ!和歌、空見てごらん
きれいな赤い夕焼けよ!」

なぜか
「ソラ見たことか、赤点」と聞えた

昔いじめがあった時
こんなきれいな青い空の下にも
人をいじめる可哀想な子が
いるんだねぇ~と

久し振りに母と並んで
空を見上げた

同じ渋谷
遠くバンタン上空に
子供の頃見た限りなく透明に近いブルー
あの日の青い空が広がっていた

流れる雲に乗って
「オーイ、音楽やりたい者
この指とまれ!」

―「赤点なんてもうどうでもいい」―
自然の中で培った
エネルギーと感性を
音楽にして

高校生

今まさに蝶となって
バンタン上空をめざし
はばたけ!和歌だった

waka20.gif

バンタン芸術学院

バンタン芸術学院 ―学校見学―

母と学校見学
体とハートが先歩き
音は後からついてくる

好きになることから
何かが生まれ
何かが始まる

校舎には
音と恋が転がって
休み時間は
女子生徒は
廊下に寝転がって
通せんぼ

ウホ、ウホ、ウホ

お若い講師は
よけてまたいで
通るがやっと

茶髪に金髪
生徒たちは色とりどりのニワトリ
鳥小屋さながら

止まり木にとまって
昼寝を楽しむグループ

砂をけってじゃれあうグループ

陽だまりで
ひとかたまりになって
グループ練習

初対面にもかかわらず
人なつっこそうに
あちらこちらから
首を投げかけ
コンニチハ!コンニチハ!

それもそのはず、
本校の方針は“人間教育”
「まずあいさつです」

一言で表現するなら
いろんな楽器が置いてある
広いスペースに
色とりどりのニワトリを
放し飼い

自由、奔放、いたってのどかでくったくない

母は何かうれしげに
あたりをキョロ、キョロ
「まあ、ステキな先生がいっぱい、
ここにしましょうネ!」

和歌もまた、
「私やっぱりここにした!」

あだ名が天然ボケ
素朴さといい、いたって自然体
和歌にピッタリ

黒髪ではあったが
早くもこの景色に溶け込んだ

生徒がオタマジャクシなら
さしずめ教師は
殿様ガエル

白いオタマジャクシに
黒いオタマジャクシ

さあ、オタマジャクシ達よ!
校舎の隅から隅まで
泳ぎまくれ

やがて足が出、手が出、シッポがとれ
オーディション
数々のハードルを跳び越え

waka7.gif

ホップ、ステップ、ジャンプ
カエルになれる奴もいれば

ホップ、ステップ、ドボン
カエルになれない奴もいる

人生何が幸か不幸か解らない
歌に上手い下手があっても
人生に上手い下手はない

和歌2才の頃
オタマジャクシを
素手でつかまえ遊んでいた

音を捉える
天性の感性と優しさが
そなわっていたのだろうか?

不思議なことに
潰れてはいなかった

なぜたろう・・・どうしてだろう・・・
素朴な疑問を抱きつづけて拾余年

私が探し求めていた
懐かしい景色が
まさかこんな所にあろうとは


今答えが出た

都会のど真ん中
渋谷の繁華街
高層ビルの谷間に
音を夢みる
オタマジャクシ達の棲む
清流があった

waka8.gif

生徒達の個もまた、
何一つとして
潰されてはいなかった

幼少期から
自然の中で培った感性が
力強く、個として
引き出されるであろうことを
実感できる
学校見学だった



カエル交響楽団

幼少期から
自然の中で獲得した
山ほどの忘れられない音がある

忘れもしない
母とキャンプした
あの晩のことを思い出す

うるさくて、眠れないほど
地の底からボウボウとひびき渡る
何とも不気味な音

「あれは何の音?」と尋ねると
「何でしょうねぇ~」
待ってましたとばかりに
「さっそく見に行こう」と

懐中電灯を手に
音のする方へ方へと
山道をどんどん下って
辿りついた所が沼だった

照らし出されたのは
ゆっくりと動く
いろんな絵の具をごちゃまぜにした固まり

目をこらせば
沼一面、ビッシリと敷きつめたカエル
カエルの上にカエル
積み重なったカエルのレンガ

重みで押しつぶされ
グェッ!、ゲェーッ!、グェッ!

何とも不気味

母は目を細め
「何てきれいで可愛いいんでしょう・・・」
懐中電灯に照らし出され、
浮き上った母の顔は
息つぎに顔を出し、
目を細めたガマにそっくりだった

waka9.gif

テントに戻ると
いつものように
さっそく動植物図鑑を取り出し
開いた所は
世界中のめずらしいカエルだった

母は話しはじめた
「生き物には、
必ず1つづつ楽器があるの。
動物にも、植物にも、昆虫にも。」

私が初めて知った
植物の楽器は
タンポポ笛と笹笛だった

母は楽器作りの名人
名演奏者だった

いつもの母の言葉遊びが始まった

犬はワンワン
猫はニャンニャン
鳩はポッポ

ふくろうはホーホー
うぐいすはホーホケキョ

すずむしはリンリン
かねたたきはチンチン
せみはミーンミーン

ところがね
いろんな音色の楽器を持っているのは
カエルだけなの

のどの下の風船を思いっきり
ふくらませて音を出すの

リズミカルないろんな音色が
いつしか
ファンタジックな世界へと
眠りを誘った

いろんなカエルが
手に手に楽器を持って
スタンバイ

 

殿様ガエルの指揮する
カエルシンフォニー

曲 目
♪ 田園
♪ 空がこんなに青いとは
♪ 谷間にカエルは鳴り響く
♪ カエル行進曲


waka10.gif

何でも弾くのが好きなヒキガエル
フルートを吹くのが得意なクチボソガエル
ツメをなめなめギターをかきならすツメガエル

ボーボーとホルンを吹き鳴らすウシガエル
タンバリンを叩きながら踊りまくるスズガエル
ドラムを叩き回るダルマガエル

アカガエルの大太鼓
アオガエルの小太鼓
ひっくり返しに叩くアベコベガエル

懐かしげに三味線や琴をつまびくムカシガエル

ゆったりと水かきを広げ
しなやかな指を伸ばし
ハープを奏でるユビナガカガエル

入場券は金色の葉っぱ
楽屋裏で嬉しげに
指をなめなめ、一枚、二枚・・・と
数えるのはコガネガエル

ピアノの伴奏に合わせ
吸盤を押しつけ
楽譜をめくるイボガエル

waka11.gif

選ばれしオクターブ7匹のアマガエル
今宵は踊り明かそう
鍵盤の隅から隅までジャンプ
忙しそうに自由奔放に跳び回る

夜も更けると
どこからともなくユウレイガエルが現れ
終わりのあいさつ

突然、シンバルがジャーン!

すると
ひとりでにステージの灯りが消え
楽器も消え
客も消え
椅子も消え
音も消え

何もかもが元通り

金色の葉っぱは
ただの木の葉っぱ

コガネガエルは
しばし呆然
カンガエル

ジャジャジャーン!

ショックのあまり
ヒックリカエル

聴こえてくるのは
川のせせらぎばかり

耳を澄ませば
あの懐かしい母の子守唄が聴こえてくる


シンガーソングライター和歌の誕生

はじめオタマジャクシ、
そしてタマゴだった頃
母のせせらぎを子守唄に
泳いでいた

やがてシッポがとれ、丸くなって
心臓ができはじめ
血液が循環しはじめると

母の心臓の鼓動
メトロノームに合わせ
母と私のデュエット
二重奏がはじまった

毎日毎日が楽しくて
いつまでもいつまでも
ずっとずっとこのままでいたかった― それなのに

「ある日突然、金属音がなりひびき
まばゆいばかりの光を浴び
はじめてのステージ
人生という舞台に立って
これまでにためこんだ音を一気に吐き出した!」


オギャー
これがライブのことはじめ

オタマジャクシとカエルは
親子ではあるが
姿・形も違いまるで別

オタマジャクシにも
はじめがあれば終りもある
出会いがあれば別れもある

オタマジャクシにも
音があって
意志があった

あの胎動を呼び起こす
いのちのリズム

あの日の鼓動を
今一度呼びもどそう
とりもどそう


和歌生まれてきたことの理由(わけ)

音楽受験

赤点で鍛え上げた
根性がたたき台
これが本当の0(ゼロ)からのスタート

欠点も弱点も個性のうち
力不足は気力で補おう

1回目がダメなら2回目
2回目がダメなら3回目
3回目がダメなら4回目
4回目がダメなら5回目
熱心な子だと
そのうち何とかなるだろう

7月も真夏の真っ盛り
オーディション
第1回目トライ

全国各地から集った
バケツいっぱいの
オタマジャクシ達

和歌は居並ぶ審査員を前に
泥沼のオタマジャクシ
「誰か、私を発見して下さい!」

水泳の試合の度に
鍛え上げた度胸
筋トレは心トレ

あがることもなく
居並ぶ審査員は
田んぼのカカシか
カラスの行列

あの日のあまたのカエルが応援団
和歌ガンバレよ!

「思いっきり喉の風船をふくらませ
大声で歌うんだ!」

何事もインパクト
「やるなら、ヨシ!今だ!」

ふくらんで、ふくらんで
ハレツ寸前
審査員一同、腰をあげかけ
驚きの余り目が点

“こんな生物見たことない!”
何とも人間ばなれした声と仕草
こんな女の子見たことないし、いたためしがない

本校の方針は
生徒一人一人の個を尊重
ところが
生徒一匹の個もまた
尊重せざるを得なくなった

思いっきり大声を張りあげ歌った
その甲斐あって合格

しかもAランク、ヤッター

母に「Aランク合格したよ!」と
報告すれば
「CDじゃなくて残念ね」
何一つ解ってはない

ルーズソックス脱いでスニーカー
新しい仲間のクツ音が
リズミカルにやってくる

 

入学式

桜吹くキャンパスは
いろんな声を持った
全国各地から集まった
カエル志願者でいっぱい

春のステージは
真夏の田んぼ
何ともにぎわしい

カイル、ゲェール、ギェール、ゲェーロ
ギィル、ギャーロ、ギェロ、ギィル、ギャール

ギャル、ギャル、コギャル
圧倒的に女子生徒が多く
男子生徒はわずか

在校生のライブでスタート
つづいて、ダンス、キップも要らず何か得した気分
ライブ会場でもあり、劇場
こんな入学式はじめてだった

―新入生に向ける言葉―

・まずあいさつ!休まないで!遅刻しないで!
・神様が見ている  1%才能、99%努力
・眠っている何かを引き出す
・真の教育とは、個を引き出す
私達は、そうしたお手伝いをしたいのです
・芸術教育かつ、人間教育

希望に燃えた生徒達に
次々にたたみかけ
根底からゆすぶりをかけた
学ぶことへの期待と欲求を満たした入学式
しんと静まり返った会場が物語る

早くも競争意識が芽生えたのか
あたりにチラッ!と走らせる
殺気立った視線

幾つもの登校日、初日の表情があったが

獲物をねらって
ギターの弦ならず
弓矢を射る瞬間

waka12.gif
よし!ヤルゾ―だった


バンタン合格祝い

シンガーソングライターをめざし
走る姿はダービー馬

草原で足を止め
見渡しながら
草をはむ

人生に無駄があって良い
回り道があって良い
道草をたっぷりと食べ
あなたの歩調で歩きなさい

鍛え上げた馬脚
晴れの舞台は
馬の足でもいける!

2001.4.10母 きくえ


キャンパス風景

これまでとは
うって変わった学習スタイル

100%現役、現今(いま)を生きる
師は生徒の個を尊重

授業中は
“ねるな!しゃべるな!歩くな!”
それさえしなければ
ノートなんかどうでもいい

自分のやりたいことを
思いっきりヤレ!

歌を歌いたい子は
朝から晩まで歌、歌、歌

ギターを弾きたい子は
朝から晩までギター、ギター、ギター

好き放題
楽器や機材を使いこなし

音に群がるオタマジャクシ達の
エネルギーの殿堂
発散の場

和歌は
講師や仲間の合間をぬって
自由奔放・縦横無尽に音を追いかけ
キャンパス中をかけめぐる

キャンパスは私のためにあった―が

家でのギター練習

母は世界中の
どんな男性よりも
音楽とネコが好き

父は世界中の
どんな女性よりも
酒とバイクが好き
何よりも嫌いなのが音楽だった

ピアノにはじまって
木琴、オカリナ、ハーモニカ
犬やネコのはてまで
音が出るものは全てダメ

ダメ ダメ オンパレード

酔えば
「うるさい!寝ろ!」
とどなり散らし

この平和な時代に
空襲警戒警報発令
8時もまわると
“全員消灯!”

ハードルがあるほどに奮起
反対してくれて ありがとう
はんたいされることは起爆剤だった

今度の事件はギターだった

他人ならいざ知らず
実の父親

ある晩、酔った揚句
いきなり、ドアを足で蹴り上げ
「うるさい!静かにしろ!」と

和歌もまた、
「うるさい!だまれ!」と

音楽専攻の和歌にとって
7:00は生活の音

希望に胸膨らませた
18才の乙女に
“音め!うるさい!”だった

waka13.gif

まだクチバシの黄色いヒヨコちゃん
ヒナを守るためには
母はどこまでも
戦いに臨むメン鳥

「ウルサイ!だまれ!」と
大きくはばたき、威嚇した

鳥ならそこで終わるが、人だった

音楽とは、音を楽しむ
音を取ったら何が残る?

表現の自由
基本的人権を奪ってはならない

「この非国民!」にはじまって
矢継ぎ早にまくし立てはじめ

歌えば音痴の感情音痴!
漢字を書けば誤字脱字

音符も読めずに
我が子の心も読めず

レースできたえあげた体は筋肉
心も筋肉
脳ミソも筋肉!

作曲も出来ずに
楽器も弾けず
ひくとしたら自分のフトンくらい

何がレーサーだ!
飲んだら乗るな!
酔ったらしゃべるな!」

「和歌、ジャンジャンお弾き!」

このやりとりに悲しくなったんだろう
「最悪だ、最低だ
人がいっしょうけんめいやろうとしているのに!」
と大声で泣き出した

父「犬はなく、ネコはなく、和歌は泣く!
我家はなんとうるさい家だろう」

和歌の感情処理をめぐって
いきさつの全てを
バンタンスタッフに宛て、お手紙

音楽を志す仲間同士として
丸ごと心を
受け止めて下さったのだろう

素手でつまびく
ギターの音は耳を澄ますほどに

私の傍らを
平行して、たんたんと流れる
和歌の心の歌に
目を閉じ、身を寄せ
眠りに就いた

“子守歌”
いつしか時の流れは
母とこの立場を逆転させた

音を愛する集団は
澁谷の雑踏
生徒の心
どんな音をも優しく包み込む

都心の中央
渋谷の上空に向かって
ありがとうございます―と
手を合わせて祈りたくなった

生徒に携わる師のお人柄こそ
短期間ではあるが
密度の濃い凝縮した2年間を
学びの場として
体験できるであろうことを
早くも実感できる場面だった

悲しみは
アーティストにとって心の栄養
芸術家は薄っすら
不幸でなくては
良い作品は生まれない

今日この日まで
よくぞ、こんな家で育ってくれた
和歌よ!ありがとうだった

ステージパパ

シャイな父親は
けなすことで朝がはじまり
けなすことで夜が終わる

ようやく耳も慣れ
上達しはじめた頃

親バカチャンリン
ステージパパは
和歌に紐を付け
左ウチワを夢に見た

音楽の道は
厳しく険しく果てしなく

日々レッスンレッスン

これで良いということはない
芸術家を前にして

ビールを飲んで
ろれつも廻らず
ウツロな目は真っ赤

何をかいわんや!
父 「それにしても、うまい!」
和歌はなんていい声だろう。」
和歌「エッ!何ていった?
酔っぱらいにほめられても
うれしくも何ともない
もう一度いってごらんよ!」
父 「ああ、何度でも言ってやろう
なん酎梅え~、歌やんか。」
和歌「ウザイ!
このチョードンカン!」

突如ふってわいた罵声
焦りに焦って言葉を探した揚句
父 「いやな声だ、いや変な声だ」
和歌「次から次へと何と失礼な!」
父 「いや変わった声だ」
和歌「何、生まれつきだけのことさ!」と

ようやく納得
怒りが静まりかけたに見えたが
ここで終わらなかった

寝た子を起こす
火に油を注ぐとは
真にこのこと

父 「どうせなら、メジャーにならなくちゃ!」

絶句状態の和歌は
怒りで仁王立ち
目はつり上がり三角眼

それにも気付かず
大風呂敷をあけっぴろげに
大言壮語!

父 「CDを出すなら
200万や300万なら
パパが出してやる」

和歌「そんなお金が
あってから言いなよ!」

発生訓練の甲斐あって
スポーツで鍛え上げた身体は楽器
身体の中に
デッカイシンバルが一台

怒りでふるえ
家中にビリビリと響き渡った
「このチョードンカン!

酔っぱらいの
重ね重ねの何気ない一言が
芸術家のゲキリンに触れ

芸術は大爆発だった

「パパのどこがチョードンカンなの?」と
いたく胸にチョービンカンに響いた
チョードンカンだった

一夜でメジャーデビューを夢に見て
ステージパパが
夜空に放った
でっかい打ち上げ花火

チョードカーン」は「チョードンカン!

酔っぱらいの頭上めがけ
火の粉がバラバラと
降ってきた

バンタン通知表

期末終了ごとに
親宛に一通の封書
成績評価と
出欠状況・一言コメント

成績はAが多く
無遅刻無欠席

講師の一言評価
ヤルコトハヤル!
負けん気の強い根性のある生徒です と

それを物語るエピソードの数々

何事もインパクト
コメントその1

生徒の名前も顔もわからない
入学式を終えたばかりのこと

廊下でいきなり呼び止め
すれ違いざまに
「江崎和歌、幸せの青い鳥です。
聞いて下さい。!」
突然デモテープを突きつけ手渡した

その積極性と迫力たるや
「これを聞け!私の名前と顔を覚えておけ!」
と言わんばかり

驚いたの何のって
ジャングルで
突然ゴリラに出会ったかのよう!
思わずのけぞった

さぞかし驚かれたのでは?
親として察するに余りある

“幸せの青い鳥”テープの評価
音楽的には幾分未熟ではあるが
独特な世界観があり
何か可能性を感じさせてくれました
と嬉しいコメント

入学したばかりの
クチバシの黄色いヒヨコちゃん

waka14.gif

幸せな青い鳥は
「不幸な青い鳥」に終わることなく
1枚のCDをくわえた
幸せを運ぶこうのとり

バンタン校舎上空を
大きく旋回
そして卒業

その日を願って
教師をはじめ
昼夜を徹して一致団結
飛行訓練

試行錯誤の全力投球
真に身を削る実践教育だった

その2 夏休みの課題

冗談まじりで
「夏休みの課題は、生徒全員50曲」

エッ! まさか!
30曲あまり提出
まるで挑戦状! か 果たし状!

飛蚊症さながら
オタマジャクシは自由奔放に飛び回り
誤字脱字も作品のうち
音楽が専科のはずが
国語も兼務せざるを得なくなった

どうかお目通し下さいは
まさに針で目を通す作業
まさか夜を徹して目を通すはめになろうとは

立場が逆転
生徒の課題は教師の課題

教育熱心な教師は
生徒1人の個を尊重
あまりに膨大な個の量に
収拾がつかなくなってしまった

もうありがた過ぎて冗談が
冗談どころじゃなくなった

このことはもっぱら職員室でウワサ
冗談は程々に
先ずは生徒を見てからにしないと

一晩で30曲以上作る早ワザ!といい
作詞作曲の独自の世界観!

「あの発想法は
いったいどこから来るのだろう?」と
不思議がられ
きっと
「宇宙から?
宇宙人は実在!
しかも本校に―」

「我々地球の一般人には
とうてい理解しがたい発想」だと
終始謙遜かつ感心されっぱなし
これまた職員室の話の種(ネタ)となった

しかも、休まないで、遅刻しないで
バンタンの看板を背にしょって
無遅刻・無欠席

雨にも負けず
風にも負けず
貧乏にも負けず
新宿・自宅から澁谷まで
徒歩通学をやり通す

そんな生徒の手前
「師もまた一秒たりとも遅刻はならず!」

教室めがけ走る和歌と
師がすれ違った瞬間
ビシバシと静電気が走ったという

やっぱり宇宙人?

感心される材料はこれだけにあらず
これまでに数多くの生徒の個に
出会ったが

この豊かな時代に
苦学生さながら
壊れたギターケースを背に
新宿―澁谷往復ジョギング通学

何事もインパクトの時代ではあるが

売り込み作戦
目算にしてはあまりに現実的

可哀想にと
いたく目に焼き付き
同情するに余りある

こんな女子生徒、見たこともないし
いたためしがない
職員室の驚きは頂点に達した

ご家庭の事情もあろうかと
講師の一言評価は
“健康和歌さん”

-が、ひとつ腑に落ちないことが・・・

電車代、バス代、定期代
支払い続けた交通費は
いずこへ?

そんなことはどこ吹く風
肩で風切って
ジョギング途上
風と共に去りぬだった

街路樹の並木道
木々の精霊はささやいた

汝、歩き通すのだ
どこまでも
さればいつの日か報われん

ダイエットと節約を兼ね
一石二鳥
ここにあっても、またしても
合理的な和歌だった

初めてのライブに向けて

学内オーディション一次試験通過者

保護者各位

学内オーディション通過、おめでとうございます
応援して頂く為にぜひご一読を!
音楽界デビューについて
自分から事務所に食らい付く
曲を作り続け
デモテープを作り続け
先ず聞いてもらう
体のラインを保つ
絞れ! 絞れ! 絞れ! ―だった


めざせ!世界一ケチダイエット



和歌ダイエット法は
どこにもここにもある方法ではなく
また誰もができることではなかった

体力勝負、スポーツダイエット

―ジョギング編―
目的達成の為には
なりふりかまわず
手段も選ばず

それは或る日
買い物帰り、突然のことだった
「ねぇ、お母さん
米5kgと減肥茶のペットボトル3本買って!」

やにわに買い物袋をひったくると
「あなたは電車で帰りなさい!
私、走って帰るから」と

言うや否や
両の手に袋をかかげ
突然走り出した

「イヨー、姉ちゃん、日本一の力持ち!」
思わず声援を送ってはみたものの

親の手助けにしては、いい子過ぎ
この子ヤッパリ普通じゃない

―それは私が家に着くと同時のことだった―
玄関がガラッ!
突如靴のまま転がり込んだガリバー女
「あー疲れた」と
ドカンと荷物を投げ捨てた

驚いた8匹のネコ達は散った

それにしても、三つ向こうの駅から同時とは?
ホウキに乗ったとしか思えない

力は機関車より強く
ジェット機よりも速いスーパーウーマン

突然変異とは言うけれど
床についた大きな靴跡
主人「責任の半分はボクにある」

やることは不自然で
空とんでもない
何を考えているか解らない

―折も折り―
母3度目の手術入院
ジェームズボンドのボンドがあっても
どうにもままならず
007危機一髪

―猛暑続きの夏だった―

ジョギングするなら
よし!今だ!
母を見舞って小遣い稼ぎ

お金は増える
脂肪は減る


<入院時>
和歌「あなたはタクシーで行きなさい!
荷物は届けてあげるから」と
いかにもやさしげに一言残し
ポーターは
大きなボストンを両手にかかげ
スタスタと走り出し

術前の私は路上に置き去り・・・

<入院中こそ稼ぎ時>
毎日花を1本手にしては
「ヤア君、元気かい?」
頼みもしないのに配膳のお世話
「まあ!おいしそう」と
あらかた食べては
「あら、食べないの?」

お花は食べられません・・・

「何かご用はないかい?」
頼みもしないのに売店へ
日用雑貨をカゴに山積
「これで当分間に合いそう
じゃあ、また明日来るね」と

袋を手にし帰っていく・・・

にわか御用聞きは
猛暑をものともせず
自宅~病院まで往復
ギターをかついで
ワサワサジョギング

死にもせず、倒れもせず
異常事態に強い女の子

ママがねころんでもただ起きなかった

例えママに不幸があったにせよ
柩をかついで、ワサワサジョギング

「ママの柩ったら、チョー軽い!」
ふと足を止め、見上げれば
暮れゆく新宿情景
waka6.jpg


―真夏の音楽の感傷―

ビルの谷間に沈む夕日
太陽の葬式

作詞、作曲
道すがらいろんな材料が転がっていた

いかなる時も
どんな場も
音楽できる和歌だった

<退院時>
ポーターは入院時同様
ボストンを両の手にかかげると
スタスタとジョギング

「あなたは荷物がないんだから
もっとサッサと歩きなさい!」

「すみません、ありがとうございます」と
ヨロヨロと歩く小さな影

こづかんばかりに
仁王様のように迫ってくる大女の影
夏の路面に映し出されたことを思い出す


減額ダイエット
レストランで
メニューをすみからすみまで
眺めるだけのダイエット

何よりの楽しみは
うっかりタバコでも
吸おうものなら
引火して破裂しそうなほど

食べるほどに
ふくらんでいく人を
イメージすること

―香りダイエット―

ダイエットとは
一言で言えば
耐える力

空腹の犬の前に
肉のカタマリを置き
オスワリ!フセ!マテ!
このくり返し

空腹感を刺激
体脂肪が急速に燃焼
サウナ効果しかり
よだれと汗がタラタラと・・・

ただ見た目が良ければいい
飲まず食わずでは
度が過ぎれば
減額死重層

食べたい、でもやせたい
眠れない夜
減量狂騒曲が響いてくる


低カロリー食ダイエット
満腹感をねらって
大皿に山盛りの野菜
バイキングさながら
台所を往ったり来たり

今日はシラタキ
明日はコンニャク
明後日は豆腐

来る日も来る日もこのくり返し
豆腐屋さんが開けるほど

鏡の前に立つこと
日に数十回
モンローよろしく腰に手をあてがい

「鏡よ、鏡よ、鏡さん、
世界中で一番スタイルの良い人は
誰ですか?」

「それは江崎のオバカさん、
でももっとスタイルの良い人がいます
それは、お隣の豆腐屋さんの
糸コンニャクさん」

夏場はキュウリダイエット
朝から晩までキュウリ、キュウリ
山積みのキュウリが
着実に消えてゆく

秋口ともなれば
ギースィッチョンチョン
私「和歌、ドーコ?」
和歌「柱の陰よ!」

虫の音もとだえる頃
和歌の姿も
かき消える

何でも食えるでっかい胃袋
消化力抜群
満腹感をねらった
和歌うってつけの方法だった

歌うダイエット
ただ見た目が良ければ良い
飲まず食わずでは
柳の下のユウレイが
風に吹かれ
鼻歌流すと同じこと
吹き流し
聞く者にインパクトするものがない

大声を出すことは
全身運動
全身トレーニング

エネルギーの発散
エネルギーの消費


音楽専門学校にて
発声レッスン
ボイストレーニング
ダイエットの基礎を学んだ

スポーツで培った筋力
腹筋を使って発声レッスン
良い声を出すことは
全身筋力アップ
歌は上手くなり
体は締まる

小手はじめは
カラオケダイエット

歌に上手い下手はあっても
ダイエットに上手い下手はない

10曲、20曲
大声で歌うほどに
目方は減り
舞台度胸もつく

ライブの舞台は
ダイエットの総仕上げ

人前で歌を歌う
人にみられることは
鏡の前に立つのと同じ

五感を集中させ
表情を引き締め
全身を引き締める

ギターを抱き
つま先立てば
バストアップ
ヒップアップ

正統派!和歌が選んだ
究極のダイエットは
歌うダイエットだった

努力の甲斐あって
日に日にスリムに・・・がしかし

本当のねらいは
ボーイッシュを卒業
もっと美しく
女性らしくなりたいだった

―美の追求に終りはない―


イメージトレーニング
その昔、私は
エジプトの王妃
クレオパトラに愛された猫だった

ブルーの目
赤いマニキュアをした黒いネコ
クレオパトラがねたむほどに
それはそれは美しいネコだった

美しくなりたい
頭の先から尾っぽの先まで
一つの方針と精神で貫かれ

首尾一貫

首尾は上々
首尾バンタン

鏡を前にしんなりと
手足をなめなめ
全身をなめまわす

朝な夕な
ツメをなめ
ツメを研ぎ研ぎ
ギターかきならし

王子様狩り

良い獲物を狩るために
感性磨き込んで
値踏みする

ナルシスト和歌は
日に日に女らしく
鏡を前にうっとり・・・

「鏡よ、鏡、鏡さん、
世界中で一番美しい人は誰?」
「それはあなた???・・・」

「ウフフフフ・・・」
どうにも笑いが止まらない
waka6.jpg



―どうやら好きな人ができたらしい―

いつしか女の子から女の人へ
身なりやしぐさに変化が・・・

主人「ボーイフレンドでもできたかな?」
じゃじゃ馬馴らし
どこぞのどなたか酔狂な方に感謝!

ポケベルが鳴る心も鳴る
嬉しげに鏡に向って投げキッス!
出先の動きも見えてくる

ナルシスト和歌は
見られていることに気がつかず
辺り一面三面鏡

帰宅もめっきり遅くなり
抜き足、差し足、忍び足
まるでドロボー

携帯にTELすれば
他の子かと思うほど

ハチミツにガムシロップを
ぬりたくったかのように、
甘くやさしい口調

どうやらそばに人がいるらしい

「なあにぃ~どうしたの?
何のご用?
もうすぐ帰るわ
心配しないでね!」で切れ

ほどなくして、すさまじい勢いで玄関がガラッ!

和歌「テメェ~いちいち電話なんか
かけてくるんじゃねぇ~
わかったか!この酔っ払い!
外でいい顔してたって、家でこのザマ~じゃ
ドーショウもねぇ~!」
私 「テメェ~と同んなじダ!」

敷居をまたぐと同時に人格が変る
暗闇の中、口は耳までさけ
目はランランと青白い光をおび

オカルトの和歌さん

「こんなでかいネコ見たコトない!」
8匹のネコも驚いた!

どこぞのどなたかタスケテクラサイ!
母は何も悪いことはしてません
waka6.jpg

どうやら好きな人が出来たらしい

帰宅もめっきり遅くなり、
抜き足、差し足、忍び足。
丸で泥棒。

突如向学心に燃え、
ぶ厚い辞書と数冊の本。
ずっしりしたバックとギターをかつき、
足取り軽く
体育系出身ミュージシャン。

ダイエットは更に加熱化。
政治問題にも関心を持ち始め、
何を出しても、イラン!イラン!

どうやらお相手は、
知的な方らしい。

浮き足立つとは、まさにこのこと。
見慣れた部屋のはずなのに、
霧の中を徨う少女。
ゴミ箱につまずく、ゴミ
ゴミをけ散らす。

テーブルの角にぶつかる
スリッパの左右が違う
くつ下の左右が違う

あ!定期。
あ!サイフ。
あ!自転車のキー
忘れ物は、いつものこと。

夢想にふけること、しきり。
ウフフフフ・・・・・薄笑い。

けげんそうな犬や猫を相手に
目をつぶり
両手を広げ
「さあ、ここにおいで・・・
何、はずかしがっているの?」

優しくささやく声は、
猫もたじろぐ猫なで声。
その気になって
そっと寄りそい、ヒザの上に。
と、突如
「おまえを呼んでるんじゃない!
邪魔!アッチへ行け!」
とけ散らす。

朝と晩が大違い
ジェットコースターに乗った気分。

そんなある日、
驚いたのなんのって、
アイシャドーでふちどり
いつになくきれいに。
主人「和歌も化粧をすれば・・・」
和歌「今日は忘年会だからネ!」

12時もまわった頃
けたたましいTELのベル。
「和歌さんがぐったりと虫の息」

白雪姫と7人の小人さながら
四隅をかつがれ
柩はやっと自宅にたどり着き
しめやかにベットに。

アイシャドーはとれ、
たっぷりミルクを飲んだ
泥酔したタヌキの赤ちゃん。

なんとまあ、可愛いこと。
久々に、脇に添い寝。
アーヨシヨシ!
トントン!

と、その時だ。
私の顔面めがけ
プワーと吐物が降って来た。

忘年会はバイキング。
食べ放題、飲み放題。
この際だ
食えるだけ食って
飲めるだけ飲んじまえ!

ここに在っても
またとしも合理的。
ダイエットと節約を兼ねた
和歌だった。

waka2.jpg

下手な作曲・作詞に振り回される

どこにあっても作詞・何作曲。
『都会のいい朝、いいひととき』
自然が呼んでいる

ホーホケキョ・ケキョ・ケキョ
小鳥のさえずり
小川のせせらぎ

隣は何をする人ぞ

雨のトレモロ
オーボエの鳴る丘

カラカラ廻るは風車
と、突然ザーザーと滝の音

はて、どこかしら?意味シン

おまけに誤字・脱字。
ついついチェック
どこまでが作詞で現実か?
区別がつかず
音楽を志す人間に
悪い人はいないはず
はて?意味ナシ
悪い人がいるのだろうか?

売れない作家しかり、
部屋に取り散らかした作詞

見てもイケナイ、さわってもイケナイ。
脇を通りすがっただけで
「見たなぁ~!」

ある日、ただならないメモ

こんな家、出てってヤル!
他人行儀で、イヤラシイ!
家ではない!
箱だ!
中身がカラッポの箱だ!

さあ、こんな所にいるのはよそう。
小屋に行こう!オケに行こう!

何? 箱だって! 小屋だって! 桶だって!
即、携帯にTEL

和歌「なあに?」
私 「今、箱根?」
和歌「小屋だよ!」
私 「どこの山小屋?」
和歌「オケだよ!」
私 「桶? 空桶? 風呂桶? 棺桶?・・・」
和歌「どうしてそうなるの!
ライブのオケだよ。
あと3時位で始まるから来てネ!」
オケ、オケ、オッケー、OK。

即、ライブハウス”マンダラ”に
素っ飛んだ。

歌なんて、もうどうでもええ。
生きていて良かった。
会えて良かった。
顔ばかり見ているうちに、
終わってしまった。

深い安堵感で、我が家へ。
ふと見渡せば
100坪あまりの、ただ広いだけの箱。
中はゴチャゴチャ、グチャグチャ。

ワクワク動物ランドのフランケンシュタイン一族。
8匹のネコと2匹のイヌは、
縦横無尽に跳び廻り、
家族のみんなが小さくなって、
他人行儀で家じゃない。

あ!和歌の作詞の謎が解けた。

食べて寝るだけの唯の箱。
犬や猫の小屋。

家中で
態度は、一番デカイが
部屋は、一番狭い三畳間。

取り散らかした楽器
山積みの衣類は、
楽屋さながら。

たった一畳のスペースが
創作の場。
駄作の連続
クズ籠同然。

割れたガラス窓。
ボロボロのボロ家。
貧乏風の吹きさらし。

家中貧乏神が跳び廻る。
朝から晩まで
ビンボー、ビンボー

振り切っても、振り切っても
しがみつかれ

和歌のハングリー精神は、
ストレスにさらされ
こうして育ったのだった。

どこにあっても作詞・何作曲。
『都会のいい朝、いいひととき』
自然が呼んでいる

ホーホケキョ・ケキョ・ケキョ
小鳥のさえずり
小川のせせらぎ

隣は何をする人ぞ

雨のトレモロ
オーボエの鳴る丘

カラカラ廻るは風車
と、突然ザーザーと滝の音

はて、どこかしら?意味シン

おまけに誤字・脱字。
ついついチェック
どこまでが作詞で現実か?
区別がつかず
音楽を志す人間に
悪い人はいないはず
はて?意味ナシ
悪い人がいるのだろうか?

売れない作家しかり、
部屋に取り散らかした作詞

見てもイケナイ、さわってもイケナイ。
脇を通りすがっただけで
「見たなぁ~!」

ある日、ただならないメモ

こんな家、出てってヤル!
他人行儀で、イヤラシイ!
家ではない!
箱だ!
中身がカラッポの箱だ!

さあ、こんな所にいるのはよそう。
小屋に行こう!オケに行こう!

何? 箱だって! 小屋だって! 桶だって!
即、携帯にTEL

和歌「なあに?」
私 「今、箱根?」
和歌「小屋だよ!」
私 「どこの山小屋?」
和歌「オケだよ!」
私 「桶? 空桶? 風呂桶? 棺桶?・・・」
和歌「どうしてそうなるの!
ライブのオケだよ。
あと3時位で始まるから来てネ!」
オケ、オケ、オッケー、OK。

即、ライブハウス”マンダラ”に
素っ飛んだ。

歌なんて、もうどうでもええ。
生きていて良かった。
会えて良かった。
顔ばかり見ているうちに、
終わってしまった。

深い安堵感で、我が家へ。
ふと見渡せば
100坪あまりの、ただ広いだけの箱。
中はゴチャゴチャ、グチャグチャ。

ワクワク動物ランドのフランケンシュタイン一族。
8匹のネコと2匹のイヌは、
縦横無尽に跳び廻り、
家族のみんなが小さくなって、
他人行儀で家じゃない。

あ!和歌の作詞の謎が解けた。

食べて寝るだけの唯の箱。
犬や猫の小屋。

家中で
態度は、一番デカイが
部屋は、一番狭い三畳間。

取り散らかした楽器
山積みの衣類は、
楽屋さながら。

たった一畳のスペースが
創作の場。
駄作の連続
クズ籠同然。

割れたガラス窓。
ボロボロのボロ家。
貧乏風の吹きさらし。

家中貧乏神が跳び廻る。
朝から晩まで
ビンボー、ビンボー

振り切っても、振り切っても
しがみつかれ

和歌のハングリー精神は、
ストレスにさらされ
こうして育ったのだった。

はじめてのライブ

生徒一人一人の個を尊じるをモットーに
講師方々、試行錯誤の末
まさに身を削る実践教育。

個を引き出そうとすれば
自ずと厳しくなる。

江崎和歌
素材は100%天然素材
いずれ、生徒の個を通して
音が観えてくる

それまでは
待つ、見守る邪魔をしないだった。

飛行訓練が施された、
クチバシの黄色いヒヨコは、
やがて大空に、飛び立つ日が・・・・

基礎科12月
渋谷NESTEにて
はじめてステージに立つ

これがステージ経験の始まりだった。

和歌のライブはお笑いだった

<はじめて招待されたライブ>

はじめて招待されたライブは
1ヶ月の闘病生活
退院直後のことだった。

感無量。

音楽を志す
一人前の人間として
一際グンと大きく見えた。

終始ニコヤカに、
「皆さん、こんなに沢山
こんなに遠くまで・・・
ところで、どこからいらっいました?」に、
思わず客席からヤジ!
「あの世から」と、一言。
低音で呟いた。

一瞬静まり返った場内。
これでは丸でお化け屋敷。

会場の片隅に
突如、青白く浮かび上がった母の壁。

予想だにしない、場違いの
母のヤジに、
とまどいを見せた和歌。
ウフフフフ・・・と笑いだし、
台詞にならず。

おかしさを
こらえにこらえ、咳払い。
ついにこらえ切れずに、
ギターを抱いて、そっくり返って
「アッハッハハー」

それにつられ
観客もまた大笑い。

このままでは
ライブどころか
お笑い劇場。

さて自己紹介。
今度こそはノーマルにと、
呼吸を整え、
静かに語り出した。

「私は自然が好き」
ギターの木目をなでながら
「木が好き。
空が好き。
動物が好き。
それにネコが好き。
だって、家ってネコだらけでしょう・・・」

「それにゴミだらけ!」
間髪入れずに、またしも母のヤジ。

予想だにしないヤジの連続
舞台と客席の掛け合い漫才。

笑いはイントロ、
サービスの内。
ヤジをよそに
ギターをつまびき
静かに歌い出した和歌。

いつしか観客は、
ステージに見入り
笑いの渦は消え去った。

どこに在っても自然体
舞台と家の敷居がない。
舞台から下り
そのまま「ただいま」
と帰ってきても、おかしくない。

と、思っていたら、
けたたましく玄関をガラッ!
開くと同時に
和歌 「なんだい、あんなコト言って!
もっとまじめに聞きなさい!
もう二度とあんたは誘わない!」

どうやら、ブラックジョークが
激鱗に触れたらしい・・・。

会場で手渡されたアンケート用紙

----- 本日の感想をお聞かせください -----


どこにもない、あなたでしか出せない、
甘くハスキーな産声。
今一度、この胸で抱きしめてみたい。
I LOVE YOU.
一度聞くとまた聞きたくなる。

母、きくえ

<ある日のライブコンサート>

また聞きたいと思っていた折、
久々の招待。

和歌 「皆さん、ようこそ
江崎和歌デース。
知ってますか?」に、
我先がちに身を乗り出し、
私 「はい。よ~く知ってま~すデス。ハイ。」
またいつものお母さんがはじまった。
司会者 「和歌さんって、いい名前ですね!
ところで、どうして
和歌と、つけられたのですか?」

小首をかしげると、ハテナ?
会場に視線を投げかけ、
私に助け船。

『”ワカ”ハテナ? ”わ・か”ハテナ?
ワカ?ワカ?エート、私、ワカンナ~イ”!』
会場は爆笑。

「オトボケですか?」
「ボケですか?」
「天然ですか?」
「天然ボケですか?」

しきりにヤジが飛び交う中、
エンディング・・・拍手。拍手。
静かに幕は下り、
舞台から、客席へと。

私はそっと耳打ち
「Aさんから、ご祝儀戴いているのよ・・・」
と、その時だ!
「ところで、ご祝儀ってなんだい?」
大声で会場いっぱいに
響き渡った一言。

消えかかったライトが
突然ライトアップ

誰も頼まないのにカーテンコール。
天は二物を与える。
お笑いの笑点のはじまりだった。

人生前半、ネイチャア
どこに在っても自然体
うけもねらいもなく
そこにいるだけで
周りを楽しくさせる和歌だった。

そんな和歌に、
① 母のヤジ
② 笑いの壁
③ 天然の壁
3つの壁があった。

講師の一言評価しかり。

「人前であることもなく
こだわりもなく
レコーディングはいつも
一発OK」

6才初めての学芸会を思い出す。

畑に立つ野良着を着た少女は
台詞を忘れたのだろう
大声で言った一言の台詞は
「アレ!? 何だっけ!」

居並ぶ観客は
カボチャかカラスの行列

生まれたまんま、そのまんま
緊張感の欠如した和歌だった。

プロって何だ?デビューって何だ?

アーチスト 3つの壁 (音楽の友社より)

① デビューする壁
② ヒットを出す壁
③ ヒットを出しつづける壁

幼少期から
自然の厳しさに中で培った感性
そして、何事にも動じない精神力と体力。

それを支えつづけた母。
立ちはだかる壁を前に、
打たれても、打たれても、
立ち上がった母。

それが
行く手ミュージシャンをめざし、
数々の壁を乗り越える
原動力となった。

初めての海外旅行アメリカ旅行

ダイナミックな企画 .... がしかし
たった一人、気がかりな子が ...。
それは、あだ名が天然ボケの
江崎和歌だった。

海外旅行が初めてならば、
飛行機に乗るのも初めて。
しかも見知らぬ地、アメリカへ。

仲間は、気が気でならず、
天然ボケが時差ボケになると
どうなるか?
迷子札でもつけておこうか?

うわさをすれば
早くも症状をみせはじめ、
ボケーと登場。

その身なりに、
辺りの乗客を始め、
一同注目!

でっかいギターを肩に、
誰よりも小さな荷物。
これでは熱海か湯河原の
温泉街のギター弾き。
誰もが見ても、見ない振り

おまけに、つま先立ってぎこちない。
「ところで誰か、コンタクト1つ
貸してくれないかい?」
よりにもよって、コンタクト片目紛失。

足がすくわれるとは、
まさにこの子のこと。
「何かあったら、あったまでだ!」
と無責任。
その上ケチ。
たった一人旅行保険に入らず。

夢に見た、空飛ぶ大きな鳥。
生まれて初めて乗る飛行機。

着席するなり
「ベルト、どうやってはめるの?_
どうやってはずすの?」

乗るのが初めてなら
窓から見る景色も初めて
フワフワとした白い雲。
「私、あの上、歩きたい」
窓に張り付き、身を乗り出した。

年齢は20才ではあるが、
はしゃぎようは小学生。
何かと気が気でならない子!

こんな子ではあったが、
ケチと節約を押し通し
アメリカ旅行にかけた
1つの大きな夢!

それは
ギター1本
サンタモニカの路上で
自分の歌を歌うこと。

空飛ぶ大きな鳥は、
でっかい夢と希望を乗せ、
海を渡り、
念願が叶いますようにと、
アメリカの地へ
静かに翼を下ろした。

plane.gif

ホテルに無事到着。

ホッと胸をなで下ろすも束の間、
またしても迷子。

山中、月明かりで歩ける子が、
ホテルは明るく広すぎた。
揚句は、ルームは
どこもかしこも押しボタン。

突然音楽が鳴り出し
明かりが点いたり、消えたり。

第1回目は、一晩中、
全りと全ゆるボタンを
押して終わった。

おまけに不慣れなルームキー、
自ら自室をロック。
入るに入れず、
出るにでれず。

ようやくホテル生活にも慣れた頃、
ギターを担いで、
サンタモニカの路上へと。

1回目 ストリートミュージシャンを
遠巻きに眺めて終わった

2回目 勇気を出して
ミュージシャンの脇に並んでみた。
ニッコリとほほ笑みかけられ、
笑われた気がして、
そそくさと去った。

3回目 今度こそはと
まん前に立ってみたが、
歌うどころか声も出ず、
やっと言えた一言は、
「CD One Please!」
8ドルのCDを買って終わった。

アメリカ音楽の
スケールの大きさ偉大さに
圧倒されっぱなし。

焦りと不安をかき消すかのように、
連日、一人ギター練習。

象の前に立ったアリ、
ちっぽけな自分を発見。
日頃、図太く態度がデカイが、
人生20年。
一番謙虚に、そして素直になれた日。
めずらしくナイーブになった和歌だった。

一人の人間も、
変われば買われるもんだなんだなぁ~と。
仲間も感心していた折りも折。

あっという間に
元通りの和歌に戻った事件が起きた。

希有なる子が、希有な体験を!

それは
全世界を衝撃の渦中に!
「アメリカ貿易センタービル炎上」だった。

全米、テレビニュースに釘づけ。l
仲間はあわてて揺すり起こし、
「和歌、大変!ねぇテロだよ!テロ!」
と言えば
「ネテロって、私、寝テンジャン!」

事件の全容を伝えると、
「よっしゃあ、ワカッタヨ!」
ムックリと起き上がったかと思うと、
何と、二度寝に入った。

仲間はあきれ果て、
テロはテロでも
「もうネテロ!」だった。

上空はヘリコプターの爆音。
それを子守歌に
一人スヤスヤと寝ていた。

--- 何と おおらかな図太い神経 ---

事件発生から、2日もたっぷりと寝ると、
ようやく日本の家族に安否の知らせを!

がしかし、節約?ケチ?
丸で電報。

1度目は「カブトムシ、元気?」でガチャン
2度目は「私は元気」でガチャン。

ボクだって・・・・私だって・・・・と
日本の家族に思いを馳せる
そんな仲間の心をまぎらわせたのは、
犬や猫ならまだしも
たった1匹のカブトムシだった。

さあ、日本に帰ろうと・・・
とその日、
この図太さを決定的とした

最悪な事件!

空港に着いてみれば、
チケットは全て無効。

全員がガク然とする中、
耳を疑いたくなる
江崎の次々の驚いた発言。

「よっしゃあ、私しゃあもうふっ切れたよ!
こうなったら、もう
使うだけ使って、遊んじまえ!」

ケチだとばかり思っていた
江崎の思いがけない発言に、
久し振りに
全員声をたてて笑った。

今にも戦争が!
日1日と切りつめ、
安ホテルへと移動。
しかも軟禁状態。

男女7人が、積み重なるように、
一室に共同生活。
日々、焦燥感と、不安感が漂う中、
テントと比べりゃ天と地の差
いかにもキャンプ体験が豊富な
江崎の発言
「屋根があるだけ、まだマシじゃん!」

ドタン場に立たされると
開き直る和歌だった。

全員意気消沈。
そんな仲間を励ますかのように
逆境に立たされるほどに奮いたち、
誰よりも嬉々としはじめ、

ほほ笑みすら浮かべ、
戦地の負傷兵を見舞う
ナイチンゲールさながら。

おまけに、かいがいしく働き出したから
大変だ!

胃袋から、たっぷりと慰めてあげるとばかりに、
誰も頼まないのに
これでもか、これでもかと、
馬が喰らうほどの焼きそば作り。

おまけにきっぷが良くなり、
「よっしゃ、まとめて面倒見よう」と、
色柄物もいっしょくた
洗濯機にぶん投げぶん廻せば、
あっと驚くまだらの仕上がり。
「結構きれいじゃん。」
で終わった。

そんな江崎に、
誰もがなぜか笑えるのだった。

人生の悲哀をユーモアに変えた
チャップリン。

人生と言うほど長くはなく
若干20年
アメリカのドタンバの舞台を
ユーモアに変えた
チャップリンかけ出しの
江崎和歌だった。

やっと日本に帰れる日が・・・!
エ!まさか、
またチケットトラブル発生。

今、再び仲間に不安感が・・・

そんな中、
ギターをしっかり胸に抱き、
「ギターよ、もう少し長く
アメリカにいられるかもしれないよ!」

Time is more than maby.

惜しむかのように
得したかのように
一人ギターレッスン。

その姿を見て、
日本を出発、アメリカを去るその日まで、
一人の人間の大きな変化に、
仲間は驚いた。

がしかし
本人は全くそれに気がついてはいない。

そこが

Going my way.

江崎和歌らしいところだった。

バンタン合同修了発表会

卒業を控え
2年間の総仕上げ

本格的な舞台美術
2日間に渡った
ぜいたくな晴れ舞台

その日まで育まれた個が
舞台ではじけ
競い合う

師と生徒が
「現在」を生き生きと
いま
生きている現場の記録

教育の均等化
どの子にもどの子にも
均等に与えられた表現の場
発散の場をもてた幸せ者

とにかく今の若者は
生気や覇気に乏しいと言われるが
まんざらじゃない!
捨てたもんじゃないな! ----- を実感

湧き上がる若者達のエネルギー

現代の若者を指導
個を引き出すとは?

嵐の中
まさに昼夜を徹して
濁流に飲み込まれ
押し戻されそうになりながらも
いったんせき止め
今再び押し戻す作業

試行錯誤の中
全力を出し切って
不断の努力で支え続ける
厳しく苦しい作業

身を削る実践
まさに命がけ!

内外共に
色んなことがあった2年間

株価暴落
母の血しょう板も減少

母はいかなる時もどんな場も
going my way

景気が回復すれば
血しょう板も上がる
人生何事もゆとり

貴女は貴女
Do you best!

バンタンの門は
雨の日も、風の日も、嵐の日も
悲しい時も開いた
苦しい時も開いた

その向こうでは
どんな時も、どんな場も
いつも温かく
生徒の心と体を
全身で受け止めて下さった

師と師が手を取り合う
音の調和と
心のハーモニー

人の子への熱い関わり
その思いに胸が詰まる

生徒1人1人の個を育む

講師陣は
生徒誰にも平等
民主主義者だった

誰もが何かを持っている
誰にも個性色合いがあり
キラキラ光るシャボン玉

==個が光る==
3.gif
個と個が出会う
自分と他人の違いを知る
ひと
互いに認め合い
励まし合う
志を同じくする
数々の出会いがあった

2年間の有形無形の収穫は
数え上げたらきりがない

出会いがあれば別れもある

校門を一歩出れば
生徒全員 渋谷上空に
一斉に浮ぶシャボン玉

消えるシャボン玉もあれば(者もいれば)
消えないシャボン玉もある(者もいる)

2年間に渡って
師の後姿から学んだことは
音楽で生きるって半端じゃない
人生成功するよりも
もっと大事な何かがあるよ

芸術教育以前に人間教育

入学式
学院サイドの挨拶
教育するとは、もはや死語になりつつ・・・
本当に教育するとは
個を引き出す作業と言うのではなかろうか?と。
都心の中央渋谷
誰からも見え聞こえる所に
実践校が
1つの答えを出した。

waka1.jpg

ふりふりふるる  アレンジ 茂村 泰彦

♪ 季節の変わり目私の心寂しくさせるのは何故だろう
何度ともなく季節を超えてそれに見合った私になれてる

それなりに苦労とか重ねてきたけれど
それなりに痛みとか覚えてみたけれど
自分だけ掲げる事まだ言い訳がましい

ふりふりふるる桜の中本当の私に
なりたくて最後の決意固める
この夢を現実に引き戻す為に
日々努力は欠かせないけれど
この姿をずっと見ていてくれる?くれない?

♪♪ほんの少しの楽しみの為に全てを貴方のせいにした事
本当はもっと自分を促せる

満開にならなくともいずれ枯れてしまっても
この花一枚に私は託してみるよ
焼き付いて離れないならそれでそれでいいから

私の周り回りに回る桜の花
この地面に落ちたなら始める
誰も背中は押さないよだったらなおさら
今の自分信じてれば行ける
同じようなときの流れ毎日だけど
ちょっとずつ確実に動いてる
きっかけさえ見つければそれから先は
寄り添っては見方になってくれる
この姿をずっと見つづけていてくれるよ

大空に一斉に舞い上がる
無数のシャボン玉

点となって
雲の波間に消え入るまで
たった1つを追いつづけ
どこまでも見届けようと
いつまでも立ち尽くす

ずっとずっと見つづけたい

いつまでもいつまでも
上空を仰ぐ

手を合わせ祈りたくなる
♪仰げば尊し 我師の恩・・・
師に感謝!

2003.3 江崎和歌 母

バンタン芸術学院卒業式の巻

学校という名のつく
和歌人生最後の卒業式

これまでとはうって変わって
評価は実技

赤点もなければ留年もない

自分のやりたいことを思いっきりヤレ!
歌を歌いたい子は
朝から晩まで歌を歌い
ギターを弾きたい子は
朝から晩までギター、ギター
好きなことやれた2年間

師に感謝
音楽は恩学だった

式場はなかの ZEROホール
これからは学費もかからず
自分の足で稼ぎ出す
まさに0(ゼロ)からのスタート

ケチの権化の母は
なんともめでたいことだと
めずらしく
「晴れ着を用意しましょうね!
着物とドレス、どっちがいい?」

嬉しげに目を細め
「あなたの人生最後の卒業式ですもの」
まことしやかに反物を差し出すと
「これどう?
きれいな花柄でしょう・・・」
「エッ!まさか!」
半信半疑で広げてみれば
大きな大きなただの風呂敷
「どうやって着るんだよ!」
と言えば
浴衣一枚縫ったことないくせに
「私が仕立ててやるよ!」と
大言壮語の大風呂敷

待てど暮らせど
風呂敷は風呂敷のまま

卒業式も間近にせまり
「着物はどうなったの?」と聞けば

待ってましたとばかりに
パッと広げ
ヒラヒラとなびかせると
フワリと体に巻きつけ
「インドのフォーマル サリー!」

「これでどう?」
やっぱりドレスにしよう」と
「バッカみたい!」丸ででたらめ

それにひきかえ母は
卒業式1ヶ月も前から
入学式、あの日の感動を今一度
素敵な師の見納め、目の保養
タンスの肥やしを引張り出し
鏡を前に
「ねえ あなた、これどうかしら?
これではどう?」
主人「首から上がなきゃあ素敵だよ!」

〔卒業式当日〕
式は10 : 00
和歌は9 : 30になっても起きず
私 「卒業式ではないの?」
和歌「オットー、ヤバイ!」

やおら起き上がると
なんと
寝巻の上から赤いコートを羽織ると
和歌「全くめんどうくせえなあ~!
「電車賃頂戴!」
私 「中野までいくら?」
和歌「160円」
きっちり160円渡すと
和歌「このケチ!」
160円にぎりしめると
ドアをけって飛び出した

卒業式は、晴れ着どころか
起き抜けの赤いコートの赤ぞう巾

2年間、無遅刻、無欠席
赤ぞう巾は
遅刻してはならずと
駅に向って大道りぞいをまっしぐら

それを追ってタクシーに乗り込んだ母
赤ぞう巾 尻目に
窓ガラス越しに
「乗せてやるもんかね、
バイバイ!」
キッとにらみ返した赤ぞう巾

危うくセーフ!
0 ( ゼロ ) ホールに滑り込んだ

 

会場はこの日ばかりはと
思い思いに趣向を凝らし
着物やドレス
湖面に映し出された
白鳥さながら
鏡の前に立ち
身づくろい

そんな光景を
群れからはずれ、じっと見つめる
たった一羽のみにくいアヒルの子
赤ぞう巾は
「色の白いのは七難かくすとは
よくもまあ 言ったもんだ」

おまけに場内は薄暗がり
この晴れの日に
寝巻きとは・・・
ましては寝起きのままとは・・・
誰もが予想だにしないだろう

おもむろに
辺りを一通り見廻すと
私は私

いかにも自信ありげに
腕組みすると
堂々と着席

がしかし
知る人ぞのみ知る

会場は暖房がきき過ぎるほど
赤いコートの下は、しかも寝巻き
さぞかし暑かろうに
赤ぞう巾は
絶対コートを脱ごうとしなかった

晴れ着姿の女子生徒の感謝の辞

涙、涙で声にならず
振り袖をひきちぎって
涙をふかんばかり

思い出が涙となって
こぼれ落ちるばかり
胸がいっぱいで何にも言えない

シンと静まり返った場内

薄暗がりの会場の片隅で
チンチン鼻をかんでる変なオバサン
目を凝らせば
なんと正装した我母

ウザイ!ダサイ!とばかりに
時折振返ってはチラリチラリと
殺意に満ちた視線を投げつけ

終始冷めた表情

“卒業”
このウララかな日に
何で泣かなきゃならないの!

良くもまあ あんなにパラパラと
涙が出てくることよ!

今日こそ
競争社会 旅立ちの日
泣いてる場合じゃない!

ましては晴れ着なんか
着てる場合じゃない!

ライブ活動はこれからだ!
会場は涙・涙・涙・・・
もう胸がいっぱいでなんにも言えない
女子生徒がやっと言えた最後の一言
「先生方、お世話になりました」と

もしこれが和歌ならば
「先生方、お世話をおかけしました」

水泳部活で鍛えたイカリ肩
不慣れな和服
「江崎和歌でーす
がんばりまーす」
裾をけりけり
堂々退場

生徒が生徒なら
師もまたしかり
突如壇上に踊り出て
何をかいわんや
祝辞とはほどとおく
「これ、君達の入学式の時に着たスーツと
同じスーツだよ!」
一張羅のスーツと言わんばかり

2年間育んだ個
生徒旅立ち
別れの日
スーツなんか新調してる場合じゃなし
祝ってる場合じゃない!

日頃、ラフスタイル

思いがけずフィットした師のスーツ姿に
女子生徒達はヒャ― ヒャ―

 

善良にして正直
生徒達にとっては友であり仲間であり
きさくな師方々だった

男子生徒の辞が物語る
「俺らと薄紙一枚の
距離だった」

学院長が生徒に手向ける
最後の辞は
「また遊びに来て下さい・・・・」の
優しい一言

個を引き出そうとすれば
自ずと厳しくなる

この一言で
学院側の姿勢が代表された

卒業式も終了・・・
なんと若く・・・
なんとハンサム・・・
なんて素敵な師方々

母はまるで女子生徒さながら
青春時代へタイムスリップ
なんと若く・・・・・
なんとハンサム・・・・・
なんて素敵な師方々・・・・・

余韻も冷めやらぬ内
「只今」と帰り、着替えはじめれば
やにわに部屋から身を乗り出し
夫「おい!お前!卒業式はどうだったい?」
私「今朝、あなたは
『首から上がなけりゃ
晴れ着は素敵だよ!』
と言ったけど
あなたこそ!
いきなり首から上を
出さないで!」

バンタン卒業式祝いの膳の巻

卒業式も終了・・・・・

和歌、卒業式の晴れ着は
前代未聞、寝巻き。
ちょっとシャレた言い方をしても
パジャマだった。

在学中はインパクト。
卒業するときはもっとインパクト。
和歌インパクトには、
終わりがなかった ----- が。

子が子なら
親も親。
負けず劣らず、もっとインパクトだった。

帰宅してみれば
母手作りの卒業祝いの膳。

卒業式の
手書きのシンプルなプログラムの中に
生徒を送り出すに当たって
沢山の心と言葉があったが、-----


豪華なお品書きにしては
シンプルすぎる程の膳

祝いの膳

<お品書き>
テーブルの上には・・・
・ワイン ・水
・前菜 ・白菜の漬け物
・フカヒレスープ ・コンソメスープ
・サーロインステーキ ・チキンソテー
・にぎり寿司 ・おにぎり
・ハーブティー ・緑茶
・プリンアラモード ・「あらどーもねぇ」とデザートはナシ

音楽で生きるって
ハンパじゃない!

母の心粋がに伝わってきた。

これまでに
筋目筋目ごとの祝いごと
その度ごとに
これでもかこれでもかと
母はケチを押し通した。

 

ハッピー・バースデー

忘れもしない
3才の誕生日プレゼント

箱の中から出てきたのは、
赤いリボンを付けた
黒い子ネコちゃん!
ただの捨て猫だった。

メリークリスマス

部屋に流れる聖夜

テーブルの上に並んだごちそう
ローソクの灯に照らし出された
ローストチキン。

目を凝らせば
切り絵のチキン、ただの紙。

母は一言呟いた「きよしこの夜。
クリスマス位は
殺生するもんじゃありません!」

お金をかけない
一品料理。
音楽こそグルメだった。


お正月

新年明けましておめでとう。

待ちに待ったお年玉。
開けてみれば
木の葉、葉っぱが一枚。

兄が「ホレ、ごらん!」
とばかりに開けてみれば
木の葉っぱが2枚。

新春を祝う  

開けまして お芽出とう

--- 卒業祝いの膳 ---
学校と名がつく
和歌人生の
最後の晩餐

これまでの中では、
一番豪華なメニュー
全て本物。


しかもテーブルの脇には
”気持ちです”と白い封筒。
開けてみれば、
「気持ち」と書かれた
ただの紙

母は一言呟いた。
「人生の祝いごとは、
結婚式でも卒業式でもありません。
人生最大のお祭り
自立のための儀式
それは葬式! 」

母の願いは”音楽葬”
それが和歌ライブ。

日毎夜毎
母の傍らを
淡々と流れる
和歌練習曲こそ

別れの瞬間
別れのミサ曲

起きて半畳
寝て一畳。
場所もとらず
チケットもいらず。

こうして
母は子を卒業
子は母を卒業
これが本当の卒業式。

和歌練習中は
三歩退がって師の影を踏まず

歌ってもいけない
口ずさんでもいけない
脇を通りかかってもいけない
ましては、のぞくなんて、とんでもない。

いつしか
母はうたを忘れたカナリヤ
翼を切られた鳥。


遠い昔の子守歌は
母と子の立場を逆転。

ミサ曲に身をゆだね、
いつしか深い眠りへと・・・・・

和歌オリジナル
母の好きな”ふりふりふるる”

眠ったはずなのに、
なぜか決まって母の拍手が
鮮明に聞こえてくる。

--- 以心伝心、別れの歓喜 ---

なかなか鳴りやまない
響き渡って止まない

歌うほどに、上手くなり
上手くなるほどに眠くなる
「もっともっと歌ってどんどん歌って」
歌えば歌うほど、
どんどん眠くなる。


やがて、母はうっとりと、
そして、ぐったりと・・・・・。
これじゃあ、生きているのか?
死んでいるのか?解らない。

良いことをしているのか、
悪いことをしているのか、解らない。

母がたった1つ望んだ
贅沢が音楽葬。

ケチな母は、
祭壇も要らず
花も要らず
墓も要らず。

せっかく命かけた葬式ですもの、
お金をかけるだなんて
とんでもない!

葬式にかけるものは、気持ちだけ。
あとは棺桶1つあればよい。


その上、誰も頼まないのに
どなたかの役に立ちたい・・・・・と
節約とボランティアを兼ねた
ケチの集大成

母の最後の願いには
献体 ・・・・?

がしかし
憎まれっ子世にはばかる
たび重なる手術
大病しては無事生還
使えるところはごくわずか。

極めつきのケチ!

親が親なら
子も子。

音楽するなら今がチャンス。
お金はあるよりない方が良い。

ギター1本、体1つ
後は水があればよい。

音楽こそグルメ。
ぜい沢な貧乏生活。


シンガー・ソング・ライター貧乏
江崎和歌の1人旅
貧乏暮しがはじまった。

朝から晩まで貧乏貧乏
貧乏神が吹き荒れる
貧乏神が吹きすさぶ

触らぬ神に祟りなし
波風立ててはならずと

遠く静かに見守る師方々・・・・・
それをまた見守るあまたの貧乏神・・・・・・

ある夏の日の出来事その1

ああ、ウゼェーナ~!
ああ、1人暮しがしたい・・・

そのためには、
まず、お金を貯めること。

そして家を出ること。
そのためには、
家出をせねば!

よし、家出をしよう!

床の上のメモ。
作詞かな?
意味不明。

そんな或る日

○○○海岸
持ち物:水着・オニギリ
マンネリズムとさよなら
よし!決行!

走り書きのメモ一行残し、
水着と共に去りぬ。

突然姿を消し、
部屋からいなくなる。

私 「ねぇ、和歌が家出したよ!」
夫 「どうせ、遊んでんだろう!
夏休みだもの、静かでイイジャン!」

さっそく携帯にTEL。
「和歌、今ドーコ?」
「海だよ!」

やっと出たかと思うと、
「うるせぇーなー。
今、忙しいんだよ」で切れた。

以後、いっさい出ず。

一体どこの海に?
何にしに行ったんだろう?

それにしても
突然いなくなるとは?

日を追って苛立ちはつのるばかり。

ヨシ!こうなったら、
残された手段は、
“イヤガラセ・・・”

 

“全国ネットTV捜索願い”

[ 尋ね人 ] 江崎和歌

海にいるらしいんです。
シマシマ模様の水着
立てば アザラシ
座れば トド
泳ぐ姿は カバ

[ 特徴 ]  髪をかき分けると、
みけんにハゲがある。
笑うとデッパ。
25センチの大足

[ 服装 ]  まだらのTシャツ
穴のあいたGパン
ボロボロのスニーカー

[ 癖 ]  猫を見かけるとすぐに抱き上げ
「ニャーニィー」と話しかける。
情報提供して下さった方に、

賞金10万円也

TV画面に大写しになったところで
「ワカちゃ~ん、帰って来てクンサーイ」
鼻水たらして、
ビィービィー泣いてみようか・・・。

手がかりは、 “ 海 ”
気がかりは、○○○海岸・・・
一体どこの海で、何してるんだろう・・・

心中?がしかし、
泳げばイルカ
潜ればダイバー
水泳選手並

プールと海は大違い。
さすが、潮の流れには勝てず流されて、サメのエサ?

丁度その頃、
台風接近、高波注意報。
波に飲まれ、行方不明・・・?

頭をよぎるのは、
悪いことばかり。


たった1つの手がかり、
砂の上に残された
アクアラングさながら
25cm大女の足跡。

足跡は
高波にさらわれ
一瞬にして
消え失せた。

広大な海を舞台に
沈む夕陽

シンガーソングライター
江崎和歌
渚のシンフォニー
さよならコンサート

ワカ、今ドーコ?
ワカ、今ドーコ?

呼べど叫べど
ザンブ、ザンブと
波打ち際にくり返される
母と子の狂騒曲?

サブン、ザブン、ドドーン
ザンブ、ザンブ、ザザーン

寄 せては返す大波小波。
聞えてくるのは
波の音ばかり。

むなしさだけが
響き渡って止まない。

一体どこで何をしているんだろう!?

・・・つづく・・・

ある夏の日の出来事その2

むなしさだけが、響き渡る。

丁度その頃、

早朝の海いっぱいに響き渡った
海岸線沿いを裸足で走る
女達の黄色い掛け声
「ハイ! ハイ! ハーイ!」。

焼けつく砂浜
照りつける太陽
昼日中、炎天下。

しかも
素足で走り続ける
日焼けしきった
黒の軍団。

ザブン ザザーン
高波にさらわれては
かき消され、
波打ち際に残された
無数の足跡。

「和歌、今ドーコ?」
「和歌は、ここだよ!」
ザブン  ドドドドド ーン!

波打ち際に
くっきりと残された
25 cm 、ひときわ大きな足跡。

探し求めていた足取り。
江崎和歌は、こんな所にいた。

 

こんな所で、何をしているんだろう?
一体、何故に?

昼日中、
来る日も来る日も
海いっぱいに響き渡った
「ハイ! ハイ! ハーイ!」。

真昼の熱気は、どこへやら・・・・・
一気に静まり返った夜の海。
うって変った乙女達。

 

砂浜に、
静かにひざまづき、
ゆっくりと重なり合う乙女の影

月明かりに 照らされ、
闇に浮び上る
仏像さながら。

波のリズムに合せるかのように、
高く 低く、
強く 弱く、
波間に優しく揺れる
観音像。

tsuki.gif

日中は体力づくり、
トレーニング。

疲れ切った体。

互いに癒し、癒し合う。
夜は癒しのひと時。

ツボ押しマッサージ。

波をバックコーラスに、
響き渡る命の讃歌

指圧の心 母心
押せば命の 泉わく

乙女のソプラノが響き渡る。
ソプラノの合い間をぬって、
和歌のアルトが・・・・・

うつむき加減に、
和歌はつぶやく。

私はアルト
お金が アルト ないとは大違い
癒しの心 母心
押せば命の  泉 と 金 がわく

ここ押せ ニャンニャン
招き猫

ここ掘れ ワンワン
ツボ探し

探し当て、
押しつづければ、
ゆくゆくは、大判小判が
ザーク ザーク ザックザク

こりをほぐせば
血行も良くなり
金回りも良くなる

どうやら
ツボ押しマッサージ
資格取得の家出だった。

元水泳部、江崎和歌。
猛暑をものともせず、
正に水を得た魚。

走る・泳ぐ・潜る
海辺のデラックスな企画
ビッグ・サマープレゼント。

金のかからない
またとないチャンス!

ここに在っても、またしも
合理的な和歌だった。


― 研修第一期終了 ―

「ただいま―、ネコちゃん。
まあ、お久し振り。」

そっと寄り添うネコを
やにわに抱き上げ
「まあ、この子ったら、こってるワ!」
ぐちゃぐちゃに
もみほぐしては
「はい、次の方。」

「まあ、この子 ネコ背だワ!」
あおむけに、
両手足を引っぱっては、
ギュ―ッ!

次々に抱き上げては、
なでて、
さすって、
押して、
引っぱって、
ぐちゃぐちゃにもみほぐす。

逃げまどうネコ達は
ひとかたまりに
こんがらかった
毛糸玉。

こりがほぐれるどころか、
こりにこった8匹のネコは、
「もう、こりごりだ ニャア~!」

― つづく ―

ある夏の日の出来事その3

(一人暮しをはじめる、はじめの一歩)

 

3ヶ月もたったある日、
ホレッ! これ良く見てみろ
と、言わんばかり。

部屋の真ん中に貼り出された
1枚の修了証書と募集広告のチラシ。

<アルバイト募集>

ツボ押しマッサージ(研修あり)

時間帯:深夜1: 00 ~明け方

時 給:0000円

「六本木△△△ハウス」

“ツボ押し”
エッ!どこ押すの?

“ツボ押し”
耳慣れないことば。

まさか風俗では・・・???

「お願い! やめて!」と
すがってみた。

泣いてもみた。

「ヤメロ!」と
怒ってもみた。

「知りもしないくせに、
ツボ押しが、なぜ悪い!!」

一言叫ぶや否や、
やにわに物が飛んできた。

「ひとが必死な思いで
せっかくとった資格なのに!!」

ついに、怒り心頭に達したか・・・。

矢継ぎ早にわめき散らし、
手当たり次第に手にとっては、
ありとあらゆる物を
投げつけて来た。

除けようとしたその拍子、
横倒し。

よし!こうなったら
残された手段は、
死んだふり。

冷ややかにのぞき込み、
あざ笑うかのように
鼻先で
「フン!」

度重なる手術。
その度に全身麻酔を目の当りにしただけに、
こけおどしと、言わんばかり。

和歌 「また死んでらあ~」
私 「・・・・・・」
和歌 「なぁ~んだ。本当は死んでいたんジャン!」
私 「・・・・・・」
和歌 「今も、死んでるジャン!」
私 「・・・・・・」
和歌 「いつだって、死んでるジャン!」

ジャ ジャ ジャーン!
・ ・ ・ ・ ・

手術の度毎に、
ジャンジャン耐性は、つく一方。

全く効き目無し。

それもそのはず、

早産、出血多量と
様々なうき目に会いながらも、
数々の難関を突破。

大地に産れ落ちた
ゴジラの玉子。

カラが裂けた!
飛び出して来たのは、
分別の無い
ゴジラの赤ちゃん。

怒ると恐い。
ハンパじゃない!

おまけに幼少期から、
待つ・見守る・邪魔をしない
をモットーに、
個を尊重。

自然の中で、自由奔放。
ただひたすら遊び込んで
培った筋力。

ある日突然、
その筋力を武器に
適正発見!
『ツボ押しマッサージ』
資格取得に
チャレンジ!

炎天下、猛暑の中、
走る・泳ぐ・潜る
海辺の猛特訓。

死にもせず、倒れもせず
”見事”
資格取得。

私には、何一つ出来ないこと。
反対できる理由(わけ)がない。

さて、
“六本木△△△ハウス”
どんな所かな・・・?
まずはこの目で見てみよう―。

それからだ・・・・・・

即電話でコンタクト。
一枚のチラシを手に、
一本木の私は
早速六本木。
現地に直行。

店いっぱいに漂う
漢方薬の香り。
静かに流れるB G M。
早くもリラックス。

店長 「江崎さんですね。」
私 「安心して、仕事をさせるために来ました。」
店長 「こちらこそ、かえって安心しました。」

安堵感も束の間、
ハタと気付くと
サイフが無い!

サイフを落として良かった。
早速最寄りの交番へ。
ついでに店の風紀を尋ね、
更に安心。

サイフもあって良かった。
何か得した気分。

 

和歌は、
とっても良い子で悪い子だ!!

一件落着。

こうして、
昼は音楽、感性をみがき、
夜はツボ押しの腕をみがく。

二足のワラジを
器用にはきこなし、
寝る間も惜しんで稼ぎはじめた。

主人 「こんなこと出来るのは、
和歌しかないよ!」と、
あきらめるどころか、
あきれかえった頃。

しかも人が寝に就く頃、
「ヤア!みなさん、
おはよう!」

鼻歌まじりに
♪ おてんとさんが のぼれば
社長さんは かえる
あら! ルンルン! あら! ルンルン

いい香りをのせ、
いい汗かいて、
いい汗流し、
ルンルン気分でご帰宅。

それもそのはず、
バイトが終れば、
狸御殿のお姫さま。

帰宅前のフルコース。
最後の総仕上げ。

まずは、サウナ室の掃除。
白衣を脱いで、
ついにシッポを出したお姫さま。

備え付けの高級な化粧品。
カラビンを手にとると、
一滴たりともムダにすまいと、
頭の先からシッポの先まで
全身ぬりたくって、
狸の泥化粧。

ゆったりと湯に浸り、
狸の泥風呂。

静まり返ったサウナ室。
一人ひそかにほくそえんでは、
ウフフフフ・・・
とらぬ狸の皮算用。

稼げて、
美しくなれて、
おまけにシェイプアップ。
ウフフフフ・・・。

シャワーを浴び、
泥を落とせば、

ハイ!
もと通りの
シンガーソングライター
江崎和歌。

帰宅を前に、
音楽やるためにスタンバイ。

仮設ベッドで仮眠をとって、
しばし狸寝入り。

願ったり叶ったり。
その名も節約日和。

ここにあっても、またしも
合理的な和歌だった。

(ある夏の日の出来事 完)

その名も 節約日和 その1

――1人暮しをはじめる――
バイトに音楽
生き方・喰い方・稼ぎ方
3足のワラジを器用にはきこなし、
寝る間も惜しんで
お金、金を貯めはじめる。

<1人暮しの鉄則>
1.寂しがらない
2.無駄は省く
3.依って、ボーイフレンドはつくらない

3、4ヶ月もしたある日、
和歌 「お母さん、私、1人暮しをするの!」
    保証人になってくれない?!」
言うが早いか、契約書を手に
ハンコを押せ押せと
詰め寄って来た。

2、3日もすると、
荷物をさっさと運び出し、
部屋には本人がおらず、
あるのはゴミばかり。

まさかこのゴミが、TV主演のきっかけになるとは・・?

ゴミの山から出てきた走り書きのメモ。
今の私に
あなた勿体なさすぎる
手の平にのせれば
純粋な恋が・・・

もしや2人暮しでは?

住所を頼りに尋ねてみれば、
同棲相手にしては
なんとも人間離れした
不思議な生き物。

私 「これ、なぁ~に?」 
和歌 「チンチラ
    一匹2万円もするんだよ。」

月14万円の稼ぎで、
家賃4万円也。調度品もままならない。
“今の私には 勿体なさすぎる”
なるほど、
走り書きのメモのナゾが解けた。

和歌 「可愛いいでしょう・・・?」
なるほど、
立って食べる仕草はリス。
殺風景な部屋で、和歌と食事中。
主食はヒマワリの種。

両手を使っては、ワシづかみ。
口いっぱいにほおばっては、
所かまわず ペッ!
殻を吐き出し、
品格の欠如、マナーゼロ。

満腹になれば、
四っんばになって
ゆっくりとはいずり回る仕草は、
ナマケモノ。

ゴロリと横になれば、
髪結いの亭主さながら
只今失業中。

終日暇を持て余し、
ゲージにチョイト足をひっかけ、
長い手足をダラリとさせ、
ユーラリ ユラ ユラ
お昼寝中のコウモリ。

がしかし、
ひとたび脱走すれば、
部屋中 隅から隅まで走り回る
素早い奴。
油断もスキもない。

1日の殆んどが、
捕われの身、囲われ者。
檻の前を和歌が通りかかれば、
裾をつかみ
チョット姉さん、寄ってシー。

たまさか男関係が来れば、
うす目を開け、品定め。

ヤキモチ焼きの
知りたがり屋のジョージ。

寝ているのか起きているのかわからない。
あてにならない用心棒。

和歌の1日の始まりは、
早朝のジョギング。
培った筋力をベースに、
粗大ゴミの日は、稼ぎ時。

稼ぐ手段は、バイトばかりじゃない。

お金が無くとも、体力さえあれば、
拾うも筋肉、担ぐも筋肉。

筋肉はつき
脂肪は減る。
節約筋を鍛え上げ、
ダイエットの総仕上げ。

その頃より、
大通り沿いにウワサ話が・・・。

「お宅のお嬢さん、
 電子レンジを担いで、大通りを走って行った。」
「お宅のお嬢さん、
 冷蔵庫を運んでたけど、どちらへ・・・?」

主人 「おい!
    和歌が金庫を担いで、走って行ったぞ!
    金も無いのに、どうする気だ!」
家主 「金庫を肩に、4階まで一気にかけ上り、
    つくや否や床に、
    ドカン!」
    階下の住人は驚いた。
   
4階建ての最上階に、
大金持ち(?)の
スーパーウーマンが住みついた。

なんと、金庫はペットの餌入れ・・・。

またある日のこと、
家主 「実は、ベランダで
    ハトのヒナが生れて・・・」

そんなある日、いかにも嬉しそうに
和歌 「ねぇ、ヒナが大空へ・・・」

ヒナの巣立ちと同時、
思いがけない
もっと嬉しい話が。

深夜番組「銭形金太郎」
ビンボーさん主演依頼。
優勝すれば、なんと
賞金20万円也。

エレベーター無しの4階。
1LDK。
風呂無し。
エアコン無し。

殺風景な部屋を
TV局が取材。
レポーターは上田氏。

部屋に入るや否や、
目に入った冷蔵庫。

上田 「さて、何が入っているかな?」
開けたとたん、思わず
「グウェ~、くせぇ~!」
絶句状態。

流石紳士、上田氏。
気を取り直し
「コレ!いったい何ですか?」
和歌 「フレンチドレッシング。」

貧乏くさいとは言うけれど、
これまでにあまたの貧乏さん取材。
がしかし、貧乏が
これ程までにくさいとは・・・。

見事、群を抜いて、
なんと賞金20万円獲得。

即興「オレの相方」が、
番組で流れた。

シンガーソングライター和歌。
TV主演のきっかけとなる。

廃品業者さながら、持ち帰った品々。
気がつけばゴミの山。

チリも積もれば金となる。
ゴミの山から発掘したスター
シンガーソングライター貧乏。

今、再びTV主演依頼。
片付けられない症候群。

男の子ならイザ知らず。
うら若き乙女!
オーメズラシ!メズラシ!

散乱し切った部屋。
TV局が取材。

踏み込んではみたものの、
足の踏み場すらない。

こんがらがったコードを
よけて、またいで取材。

知らぬは親ばかり。
いつの間にやら、ウワサ話に花が・・・。

「お宅のお嬢さんが、
 あんなテレビに出て・・・
 あなた知っているの?」

母は即座に、一言で言い放した。
「なぁ~に、裸になった訳じゃなし、
 心を裸にするとは、
 何んと勇気があることよ!」

和歌よ、
あんたはえらい!

ここにあってもまたしも
合理的な和歌だった。

(つづく)

江崎喜久枝Webサイト
Copyright(C)江崎喜久枝Webサイト All Rights Reserved.