全身麻酔
- 2026.04.22
- エッセイ
生暖かい風に吹かれ
白衣をまとった何処ぞの誰かに手をとられ
怪しい風情に染まった
何処とも知れぬ
夕暮れの町を彷徨い歩く
病着はあっという間に浴衣になり
団扇を持って ふわりと宙に浮かぶ
東京の夜景見物としゃれこむ
高層ビルの谷間を乱舞するホタル
鈴なりのイルミネーション
明るいネオンの逆光に
精いっぱい瞬いて
一晩中点滅しつつ 一生を終えた
路上では路地を渡る風に乗って燈籠流し
風鈴の音が糸をひくように路面を滑ってゆく
灯し火のひかれ幻灯会を観る
タイトルは──在りし日の──あわてて顔をあげる
川に落ちた手鞠を追って溺れた友達の顔がもやっと浮かぶ
しばらく遊んで居たいような
そのままそこに居たいような
ずっと甘えて居たいような子供の頃の懐かしい時間があった
菜の花畑で見知らぬ白衣の誰かが呼んでいる
なにやらなんともいい香り
どうやら時節は春らしい
陽炎が見える
おぼろ月夜のハミングが聞こえてくる
全身の細胞がわやわやとさざめきはじめる
雪解け水の音が返ってきた
現実に引き戻されることがうっとおしくなった
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